「俺は生まれて初めて人類に興味を持った。もっと知りたいと願った」
「これは好意だ。俺は人類のことが好きになった」
「殺し合え。生き残ったほうを見逃してやる」
概要
断頭台のアウラが所属していた魔王軍の最高幹部である七崩賢の最後の一人にして、最強の七崩賢。
現在は城塞都市ヴァイゼの結界に封印されている。
魔族の中ではかなりの異端者で、人類との共存を本気で望んでいる。
そのために必要なプロセスの一環としてヴァイゼの領主グリュックに仕えていた過去があり、デンケンのかつての師でもあった。
人物像
「悪意という感情がないんだよ。存在しない感情は抱けない。」
元々戦いが好きではなかったが、魔王が討伐されて以後、魔王軍の残党狩りを行う人間たちと戦ううちに、とある神父の言葉から人間に興味を抱くようになる。悪意や罪悪感が分からないことが可哀想だと遺した神父の言葉からマハトは悪意や罪悪感とは何か?という疑問に取りつかれ、やがて人間の感性や感情を知るための探究を続けていた。
魔族の中では描写されている限りにおいて、社交性のあるタイプであった様で、無名の大魔族であるソリテールとは「人間に興味を持っている」という共通点から交友があるが、彼女の方は人間との共存は夢物語と割り切っているため、思想の面で相容れない部分がある。
生前のクヴァールとは友人だったらしい。また、全知のシュラハトが南の勇者に挑む際には、彼に良いように扱われることに不快感を示しながらも、彼が相討ち狙いの最期の戦いに行くことに最初で最後の気遣いを見せている。
自他ともに認める七崩賢最強のマハトといえども、同じ七崩賢で精神魔法を得意とする奇跡のグラオザームとの相性は最悪らしく、全知のシュラハトは奇跡のグラオザームを帯同して脅迫する事により、戦闘を渋るマハトを強制的に南の勇者戦に参加させていた(グラオザームはこの戦闘に関する記憶の消去も担当)。
魔族は元々社会性が無く、マハト自身も穏健派にして忠誠心など持ち合わせていないため、魔王が討たれたことに対しては「特に何も」「純粋にどうでも良い」という感想しか抱いていない。
経歴
人物像の項目にある通り、戦いを嫌いながらも人間に対する虐殺を行う中で人間に興味を持ち始め、人間を理解して「悪意」を知りたいと思うようになる。
そんな中、黄金郷編本編の時点から80年前頃、偶然と利害の一致からヴァイゼ領主に仕えることになり、彼の親類であるデンケンに魔法を教える師となる。この当時のマハトはグリュック家お抱えの魔法指南役という表の立場も手に入れ、領民から慕われており、唯一の「共生に成功した魔族」だった。
グリュックの命の下、ヴァイゼを襲撃した魔族の将軍「電閃のシュレーク」を敵として討伐するなど、ヴァイゼのため尽力しているが、裏ではグリュックの政敵である有力貴族を暗殺する「悪事」も実行してきている。
人間に似た姿や言葉をただ人を騙すための手段としてしか用いない大多数の魔族と異なり、マハトの「人間を理解して共存したい」という言葉は本心である。更にヴァイゼ領主グリュックとは互いに「楽しかった」と認め合う友情関係を構築していた。しかし、それらの気持ちに嘘がないからこそ、悪意を知ることができると思い、ヴァイゼの町を丸ごと黄金に変えるという凶行に及んだ。
本作で度々表現される「魔族は根本的に共存不可能な生き物」であることを色濃く表している人物でもある。
支配の石環
神話の時代に賢者エーヴィヒが作り上げた、この世界で唯一の魔族の心を操る魔道具。
グリュックがマハトを側使えとして登用してから約20年後、当時一人の魔族が北部高原最北端の城塞都市を全滅させ、その事を問題視した貴族連中の圧力により制御装置としてマハトに使用された。
この件は根回しで大衆を味方につけた貴族達による政治的な問題であるため、マハト自身に非はない。
領主グリュックにより支配の石環で命じられたのは二点。「ヴァイゼの民とその子々孫々に仕える」という命令によりマハトを制御下に置き、「ヴァイゼの民に悪意を持った行いをしてはならない」という安全装置で管理する。追加の命令は使用者にしか権限がない。
ヴァイゼの民に少しでも悪意を抱いた瞬間、マハトは即座に自ら命を絶つ事となるのだが…。
本編時点のマハトはいまだ支配の石環を付けており、術式が正常に作動しているかどうか、一級魔法使いレルネンと二級魔法使いエーデルが調査に赴く事となる。
能力
- 万物を黄金に変える魔法《ディーアゴルゼ》
対象を黄金に変える呪い(原理が解明されていない魔法)。
この呪いはマハトの意志次第で「全て」を黄金に変えることができ、防御も解除も不可能という恐るべきもので、その気になれば北部高原全域を黄金に変えられるだけの力を持っている。そうなっていないのは、単にマハトに「その気がない」からであり、初めから全力の彼を相手に生き残れる相手など一部の例外を除けば存在しないため、戦闘そのものを退屈に感じている。
同じ七崩賢であるアウラの《服従させる魔法》と違い、その発動に一切の条件などは不要で、これが彼が最強の七崩賢たる所以である。
万物を黄金に変える魔法で生成された黄金は、見た目が黄金のようなだけで絶対に破壊できず、熱や力などによる加工も不可能であるため、希少金属としての貨幣的な価値は持ちえない。
エーデル曰く、マハトの黄金は「塩の見た目をした砂のようなもの」で金としての価値はない。
マハトはこの魔法により衣服(外套)を絶対に破壊不能な刀剣や槍に変化させたり、外套を翻らせた形で黄金化して破壊不能な盾とするほか、引き抜いた髪の毛を黄金化してナイフのように投擲するなど、直接戦闘でも遠近問わず攻防一体の応用力を見せている。
黄金化の解除はマハトの意志次第。
自分自身の肉体の黄金化は自在に解除できるが、魔法はイメージの世界であるため、「人を金に変える」事と「金から人を作り出す」事は等価ではなく、黄金化した人間を元に戻す事だけは「人類を理解できない」魔族のマハトには不可能な模様。
フランメの残した結界魔法と同じく、《万物を黄金に変える魔法》は術者の死後も残り続けるタイプの魔法であるため、マハトが死ねば失伝してしまい黄金化は永遠に解除不能となってしまう。この特性によりマハトは黄金と化したヴァイゼを人質のように扱っている。
- 無数の金片による大質量攻撃
「魔王軍、七崩賢黄金郷のマハト。参る。」
本気を出したマハトの攻撃方法。
黄金化した地面を砕いて大量の金片を巻き上げ、奔流のような欠片を自在に操作し、破壊不能な大質量の攻撃を仕掛ける。かすっただけでデンケンの防御魔法を粉砕するほどの威力を誇る。
質量攻撃で防御魔法を潰してしまうというのは、いわば人類の魔法がゾルトラーク→ゾルトラークに対応した防御魔法→魔力消費の激しい防御魔法をさらに潰すための物質操作による大質量攻撃、と変遷を遂げていったのと同じ発想である。
対峙したデンケンによれば「何と戦うためにこれほどの研鑽を積んだのか」「現代の魔法戦を想定したものではない」と評されており、大魔法使いゼーリエと交戦して封印された時は見せていないため、《呪い返しの魔法》で黄金化を反射してしまう彼女への対抗策として編み出した技と思われる。
(マハトがデンケンに教えた戦闘方針は「本当の切り札は勝てると確信した時に使う」というものであり、ヴァイゼに封印されたのは一級魔法使い達の横槍に妨害された形なので、ゼーリエ戦時すでに使えた可能性もあるが、その場合は何と戦う事を想定した技であるかが不明になる)
- 人類の使う魔法
ソリテールから人類の使う魔法も多く教わっており、ゾルトラークと防御魔法も器用に使いこなす。
ほとんどの魔族は人類の扱う魔法は使わず、ゾルトラークなど人類の魔法攻撃は自前の魔法で防ぐか、回避するなどで対処しているため、防御魔法も使用するマハト(とソリテール)の異質さが際立っている。
余談ながら、魔法指南役を買って出た際、当時戦場を席巻し始めたゾルトラークを使えるかと質問されたマハトは「人類よりも遥かに上手く扱える」と豪語しており(当時の時点では事実)、ゼーリエに《万物を黄金に変える魔法》の人間を元に戻せない欠点を指摘されると珍しく感情を露にするなど、マハトにも魔族に共通した魔法へのプライドの高さがうかがえる(あるいは「人間を理解出来ない」事を他者から指摘されたことで激昂したのかもしれない)。
その実力は七崩賢最強として知られており、600年前にフリーレンと戦った際も、あのフリーレンが全く歯が立たず逃げ延びることしかできなかったほどである(ちなみにマハトには戦った記憶さえ残っていなかった)。フリーレンは片腕を黄金化されたが100年かけて元に戻したらしく、さらにその後の時代で「500年以上魔族との実戦はしていない」との発言があったため、マハトに敗れたことで長く戦闘から遠ざかっていた可能性が示唆されている。
関連タグ
同作品関連人物
ソリテール:旧知の仲
断頭台のアウラ:同じ七崩賢
奇跡のグラオザーム:同じ七崩賢。マハトにとって相性最悪
デンケン:魔法の弟子
クヴァール:友人
フリーレン:マハトは彼女のことを記憶していなかったが、彼女と戦ったことがある