タスティエーラ
たすてぃえーら
概要
生い立ち
ノーザンファーム生産。サトノクラウン初年度産駒の1頭。母は3勝で本馬が初仔となる。
母と同じキャロットファーム所有となり、父サトノクラウンも手掛けた堀宣行厩舎への所属が決まった。
キャロットファームにおいては一口7万円、募集総口400口募集総額2000万円と比較的リーズナブルな価格で募集され、その後、母のパルティトゥーラがイタリア語で楽譜を意味していることからの連想(パルティトゥーラの名前も元々はその母・フォルテピアノからの連想である)で、同じくイタリア語の単語から『鍵盤』を意味する「タスティエーラ(tastiera)」の名前が与えられることとなった。
2歳(2022年)
2022年11月27日の東京競馬場の2歳新馬戦(芝1800m)でJRAの短期騎手免許制度で来日していたライアン・ムーア騎乗でデビューし、新馬勝ちを記録。その後、2歳でも参戦できるレースには向かわず、放牧して成長させる。
3歳(2023年)
3歳の初戦は初の重賞挑戦にもなる共同通信杯を選択。鞍上は福永祐一に乗り替わり、最終的に2番人気で挑むも4着で終わる。これによって、陣営としては誤算が生じることとなった。元々、陣営は同馬をクラシック戦線で戦うための有力候補として扱っているのではないかと噂されていた。だが、収得賞金の得られる額が大きい2着以内に入れなかったため、皐月賞へ参戦する場合、重賞の出走登録における収得賞金での判定順の内容によっては、除外ないし抽選対象になってしまうかもしれない金額であったため、陣営は中2週となるものの弥生賞ディープインパクト記念への参戦を選択。鞍上は福永祐一の引退により、松山弘平へ乗り替わった。当日3番人気ではあったが重賞初制覇。また、この勝利でサトノクラウン産駒としての重賞初制覇だけでなく、弥生賞親子制覇の快挙も達成。皐月賞の優先出走権も得たうえ、収得賞金も大幅な加算となったため、無事オープン馬に昇格を果たした。その後、皐月賞への参戦を正式に表明。これによりクラシック戦線の有力馬として認知されるようになった。
4月16日、皐月賞では共同通信杯の勝ち馬ファントムシーフを筆頭に他の有力馬の存在や過密気味なローテーションの影響で(弥生賞からの参戦は珍しくないが、共同通信杯→弥生賞→皐月賞というスケジュールで出走した馬はいるものの少数派で直近だとアドマイヤムーンが最後となっており、同馬は皐月賞4着であったため、疲労により苦戦するのではと見られていた)、5番人気となる。レースでは先行集団でレースを進めつつも、好位に付け、最後の直線では一時は完全に抜け出し二馬身程リードを取ったものの、外から差し込んできたソールオリエンスの末脚に敗れ、2着となった。
次の出走は日本ダービー(東京優駿)。鞍上はJRAの短期騎手免許制度で来日していたダミアン・レーンに乗り替わり、当日は4番人気であった。この背景はテン乗りでの勝利がないに等しいという不安、重馬場の皐月賞のレースでの疲労は同レースに参戦していた馬に共通することであったが、有力馬のなかではタスティエーラが過密気味なローテーションになっていることは事実であり、皐月賞の時より疲労の影響が増すのではという懸念をされていた。レースではスタートから好位で運び、直線では早めに抜け出し、ソールオリエンスの追撃を凌ぎ切り、クビ差で1着。GI初制覇となった。これにより、父サトノクラウンは初年度産駒からダービー馬を輩出。同時にレーン騎手は4度目の挑戦で日本ダービー初制覇となった。
ダービーから一ヶ月後に次走は菊花賞と発表。さらに皐月賞馬ソールオリエンス陣営も菊花賞へ向かうことを発表した。近年は皐月賞かダービーの片方のみを勝った馬は皆天皇賞(秋)、ジャパンカップ、もしくは凱旋門賞などに向かい菊花賞に行くことが殆どなかった。ダービー一冠の馬が菊花賞へ向かうのは2014年のワンアンドオンリー以来、皐月賞馬とダービー馬が揃って菊花賞へ出走するのは2000年のエアシャカールVSアグネスフライト以来である。そのような事情もあり、ダービーと菊の二冠馬はタケホープ以来50年以上現れておらず、久々の記録達成となるか注目された。
そして迎えた菊花賞は、短期免許で来日中のジョアン・モレイラに乗り替わり。ソールオリエンスに次ぐ2番人気となった。
道中は中団を進み、最終直線で猛然と飛んでいったが、ここで立ちはだかったのはなんとソールオリエンスではなく、父のライバルドゥラメンテの息子ドゥレッツァ。番手から上がり最速を叩き出したドゥレッツァに対し、タスティエーラは残り100mで加速が鈍ってしまい、それでもソールオリエンスを振り切って2着を確保。モレイラ騎手は「勝った馬が強かった。経験の少ない馬だし、まだ良くなる」とコメントした。
こうして、タスティエーラのクラシックはダービー一冠、三冠皆勤かつ全連対という形で幕を引いた。
菊花賞の数日後、香港国際競走の予備登録馬の名が発表され、そのうち香港ヴァーズにタスティエーラが選出された。だが、海外遠征の負担を懸念し辞退。専門誌では年内出走を行う場合、有馬記念が有力と報じられた。
その後、11月25日に馬主から有馬記念出走を正式に表明。また、ソールオリエンスも有馬記念への出走を表明し、古馬混合重賞にて古馬らも含めた対決となった。鞍上は、11月のエリザベス女王杯に合わせて来日するも、落馬負傷により帰国していたライアン・ムーアが再来日して騎乗。本番は中団の位置でレースを進めるが、最後の直線で周囲の馬が不規則な動きを見せた影響で手綱を引いたことや前が閉じてしまうロスによって立ち上がりが遅れ、6着に終わった。とはいえ、対ソールオリエンスという点では先着しており、3歳時の対決では勝ち越す結果となっている。
4歳(2024年)
年が明け、ドバイワールドカップデーの予備登録の情報にて、ドバイシーマに登録したことが判明。そのため、ドバイシーマへ参戦すると思われていた。だが、1月末のJRA賞授賞式のやり取りの中で、馬主のキャロットファームとしては国内本線のレース選択を示唆し、堀調教師も馬の状態を優先するローテを取るとコメントした。最終的に招待を受諾してたドバイシーマにの方をキャンセルして大阪杯を選択。
そして迎えた大阪杯。4歳世代代表も背負って1番人気で挑んだが、なんと11着に沈み、初の2桁着順になってしまう。この敗戦に関しては輸送後に飼い葉を残していたことが明かされ、輸送に難がある体質かもしれないと釈明した。それにもかかわらず、次走として天皇賞(春)を選択。結果は4番人気の7着とそこまで気落ちしなくていい成績のように見えたが、ライバル的な位置づけとなっていた同世代のドゥレッツァが軽度の熱中症などの大敗した要因がいくつか見られたのに対し、タスティエーラはその2戦ともレース内容の悪く、特に大阪杯では最後の直線では好位につけながら、大敗したせいで評価を下げてしまい、同世代が厳しいのではと言われてしまう要因となってしまう。