錆兎
さびと
人物
鱗滝の無理難題にくじけそうになっていた炭治郎の元に現れ、厳しい口調で指導を行う。「男」であることに強いこだわりと誇りを持っており、直接口に出すことで炭治郎が戦意を消失することを防いでいた。木刀でも非常に強く、炭治郎が自らに勝てるまで半年、真剣を使用することなく炭治郎の鍛錬を行った。
真菰とは血縁ではなく、孤児であったところを鱗滝に拾われており、共に鱗滝を尊敬している。因みにこうした境遇のためか、既に身分を問わず、名字を名乗れる様になった大正時代の舞台に於いて、名字は真菰共々持っていないのか、明かされていない。
厄除の面には彼の外見と同じ傷が刻まれていて、彼の姿勢がうかがえるような表情をしているように見える。
正体
実は既に亡くなっている、故人。
炭治郎に剣術を指導していたのは霊となった姿だと推測される。
最終選別において鱗滝に深い恨みを持つ異形の鬼と戦い、頚を斬り損ねたところで刀が折れてしまい、そのまま頭を握り潰され絶命。
志半ばで命を落とし、鱗滝の元に帰れなかった無念から炭治郎が同じ轍を踏んでしまうことのないように厳しく剣術を指南したのであった。
炭治郎が最終選別で鬼を斬り、滅した後、真菰を含む他界した他の鱗滝の弟子と同様に、魂だけになろうと帰るという約束通り、鱗滝の待つ故郷の狭霧山に帰還した。
後に冨岡義勇の口から、同じ時期に鱗滝左近次に入門した同期であり親友同士と語られる。
共に鬼によって家族を殺され、天涯孤独となっていたところを鱗滝に引き取られた。同い年の13歳であった二人はすぐに仲良くなり、最終選別を通るために稽古に励んだ。
そして運命の最終選別のとき、錆兎は手鬼と戦い、命を落としてしまう。
義勇が炭治郎に語った最終選別のあの日、あの年の選別で死んだのは錆兎一人だけであるが、それは錆兎が藤襲山に放たれた鬼たちを殆ど一人で倒していたからである。
錆兎を亡くし、何もしていない自分が最終選別に合格し鬼殺隊に入隊できたことに義勇は忸怩たる思いを抱き続け、根底では常に「自分は水柱に相応しくない」、「自分が死ねば良かった」と己の立場を否定することとなっている。
義勇の羽織の半分は錆兎の形見であり、それを羽織り続けているのは友の死、悔やんでも悔やみきれない想い、無力だった自分を忘れないためと思われる。
しかし、錆兎は共に暮らしていた頃、鬼に殺された姉の代わりに自分が死ねば良かったと言う義勇に対し、張り手と共に叱咤し、とある約束を交わしていた(義勇は余りに悲しい記憶から無意識に忘れていたが)。
能力
全集中・水の呼吸
弟弟子に当たる炭治郎から、「無駄な動きが一つも無い」と絶賛される流麗な剣技を持つ。最後に戦った手鬼からも「一番強かった」と評されている通り、嘗て鱗滝の元で修行を重ね、水の呼吸を修得した炭治郎や義勇、真菰等計15人の弟子達の中でも最強の実力を誇り、僅か13歳にして水の呼吸を極める等、その才覚は後に血の滲む努力で柱になったとはいえ、当初から才に恵まれている訳では無かった義勇をも凌いでいると言える。
又、アニメ柱稽古編第2話に於いては、オリジナルシーンとして、肆ノ型 打潮を披露している。
その事は義勇と共に受けた最終選別にて、自分を守るだけで精一杯だった炭治郎や負傷して離脱せざるを得なかった義勇に対して、当時の狭霧山に閉じ込められていた鬼の殆どをたった一人で倒し、死人を自分以外誰一人出さなかった事からもその片鱗が窺える。又、義勇も後に「俺に痣は出ない。錆兎なら出たかもしれないが」とすら述懐している(結局彼は痣を発現する事になるが…)。
ただ、炭治郎が手鬼に対して水の呼吸を使用した際、呼吸音を聞いた手鬼が『鱗滝と同じ』とは感じたが錆兎のことを想起することは無かったことから、手鬼に対しては何らかの理由で水の呼吸を使う機会が無かったものと思われる。
劇中では炭治郎との稽古に於いて木刀の方をよく用いていたが、最後の稽古を付ける際と義勇と受けた最終選別の時のみ、日輪刀を使用している。日輪刀は本来、自分専用の物を打って貰えるのは最終選別を生き延びて正式に鬼殺隊士になってからであるため、正確には当時、まだ鬼殺隊士となっていない錆兎の物は自然に考えて師匠である鱗滝からの借り物であると思われる。但し、彼からの借り物にしては殆ど色が変わっていない事から、別の人物からの借り物の可能性もある。
刀身は鎬幅が広く、直刃の刃紋が入っている。拵については、全体的に義勇と炭治郎の物を足した様な仕様となっており、白い柄巻は上方と下方は標準的な菱巻となっているが、中間は片手巻となっている他、鍔は義勇の物と同様の亀甲型であるが、鶯色の地に縁取りとなる耳、柄頭は明るい茶色で銀色の鎺を備え、鞘は黒塗りとなっている。又、日輪刀の拵では珍しく、赤い下緒を備えている。
余談
彼が炭治郎に稽古を付け、最終的に大岩を斬り伏せさせるエピソードは、柳生新陰流の開祖である剣豪・柳生石舟斎の伝説『一刀石』がモチーフになっているとされる。
一刀石は、奈良の山奥で剣の修行に励んでいた若き日の石舟斎の前に天狗が現れ、その天狗との戦いで石舟斎は一刀の下に斬り捨てるが、斬ったはずの天狗の場所に真っ二つに斬り裂かれた巨石があったという伝説である。
彼らの師である鱗滝が天狗の面を付けていることも、それを暗示していると思われる。
CV担当の梶氏は、SNS上にて『いつか、生きていた頃の錆兎を演じられますように』と2020年の七夕に祈願しており、4年越しに願いが叶ったことを報告している。