野獣死すべし
やじゅうしすべし
概要
昭和33年に早稲田大学の同人誌にて発表された氏のデビュー作で、後にいくつかの出版社より刊行。現在は電子書籍化もされている。
処女作『野獣死すべし』とその続編の『復讐篇』、そして副題に「第三部」と銘打たれた『血の来訪者』をもって“野獣三部作”とされているが、その定義づけは各書評家やファンによっても様々な意見の分かれるところ(それ以降の、主人公がジェームズ・ボンドのような超人的ダークヒーローと化したエンターテインメント作品群は、単に「伊達邦彦シリーズ」と呼ばれることが多い)。
また、映像作品についても昭和34年に仲代達矢の主演による劇場版映画が公開されて以来、昭和48年には藤岡弘、(タイトルは『野獣死すべし 復讐のメカニック』)、昭和55年には松田優作(本項で紹介)、平成11年には木村一八(タイトルは『野獣死すべし 復讐編』)の主演による劇場版映画が制作・公開された。
原作あらすじ
『野獣死すべし』
警視庁の警部が殺害され、拳銃と警察手帳が奪われる事件が起きた。犯人の伊達邦彦は戦争で子供心に深い傷を受けた世代のひとりで、普段は真面目な学生を装いつつもその根底は暗く熱い怒りに燃えていた。青春も野望も命も一緒くたに賭けて、邦彦は大学入学金強奪計画を最終目標に次々と凶悪な犯罪に手を染めていく‥‥。
『野獣死すべし 復讐篇』
アメリカに高飛びし留学生活を送っていた邦彦の元に届いた一通のエアメール、それは大手鉄道会社京急コンツェルンの御曹司・矢島雅之と恋に落ちたことを知らせる、妹・晶子からの便りだった。コンツェルンの総帥矢島裕介はかつて邦彦の父が大陸で経営していた会社を乗っ取り、失意の底へ沈めた因縁の相手。帰国した邦彦は京急グループの末端企業・新東商事にいちサラリーマンとして潜り込み、ここを足掛かりにしてグループ全体の乗っ取りという復讐の大バクチにうって出る‥‥。
『血の来訪者』
邦彦は資本金100億の大企業・大東電気に狙いをつけ、その社長令嬢神野知佐子を誘惑するが、ドライブ中に遭遇したカミナリ野郎の銃弾でその知佐子が死亡。彼女の死を隠して神野家から身代金を奪取するも、その後も事件の謎を追う警察や凶行に用いられた銃の元の持ち主であるヤクザ、神野家から真相究明を依頼された興信所長津村らが絡んでの三つ巴、四つ巴の戦いが続き‥‥。
映画版解説
戦地を渡り歩いた通信社の元カメラマンが、翻訳の仕事に身を隠しながら、一匹の野獣となって、管理社会の安穏とした生活に犯罪で挑む姿を描くハードボイルドアクション作品。