主に人の血を吸う怪物の総称。狭義ではヴァンパイア(バンパイア)として呼ばれている怪物の和訳。pixiv上では専ら後者の意味である。
原点
吸血鬼はイメージに頼っている面が大きいので、定義が幾度と無く変化している。
東欧における吸血鬼
「血を吸う怪物」というモチーフは世界中の神話、民話に登場するが、現在一般に敷衍した吸血鬼の概念は東欧の伝説をベースとする。
東欧(チェコ、スロベニア、ルーマニア等)一帯には昔から吸血鬼・人狼伝承が多く、特にバルカン半島などのスラブ系民族の間では紀元4世紀ごろにはすでに多くの吸血鬼伝承が発生していたとされる。
これらの大半の地域は土葬がメインだが、近代以前の世界では医学が未発達であり、死亡判定が難しかったため、昏睡状態の病人を死んだと判断して埋葬してしまうことが頻繁にあった。
そのうちの幾人かは、棺桶の中で「よみがえる」。墓の中から音がする、といった怪談は大昔からあるが、これは実際に死んでいなかった人間が墓の中で暴れている音なのである。
そういったことが続くうち、人々の間に「死んだ人間が蘇る」「恨みを抱いた死者は死ねない」という概念が定着する。これを恐れた東欧の一部の地域には、死んだ人間の墓を掘り返し、心臓に杭を打ち、首を切り落として再び埋葬するという風習が実在した。
吸血鬼は「ヴァンパイア」の訳語だが、この言葉の語源ははっきりしない。東欧起源であることは確かである。このヴァンパイアだが、元々妖怪・魔獣と言った意味合いの言葉であり、現在よく想起される吸血鬼のイメージとは大きく異なる。
- 手塚治虫の変身人間が活躍する漫画「バンパイヤ」のタイトルは、こちらの意味が由来となっている。
悪霊のように取り憑く、墓を荒らして死体を食らう、ふいごの姿をして転がりながら火を噴くなど、現在の吸血鬼像からは想像も出来ないような姿をしたものもある。
変り種としてはスイカやメロン、南瓜等が収穫される事無く畑に放置されると転じる吸血鬼もある。
血のような模様が生じ、唸り声を上げながら転がりまわるという。他にも麦束を束ねる棒等、長く使わないでいる道具が転じるという付喪神のような伝承もある。
これが中世になると、一時幽霊や単なる怪物のような扱いを受けるようになる。これには土着の信仰・文化を取り込み、支配しようとしたキリスト教教会の活動が関係しているとされ、このため『狼男が死ぬと吸血鬼になる』といった混濁した伝承も多く生まれていく。
これらを総合的に見ると、「吸血」というイメージは意外なくらい希薄である。東欧のヴァンパイアは、あくまで怪物の一種であったと見て良い。
西欧における吸血鬼
東欧と違い、西欧には「吸血鬼」にあたる伝説、伝承は存在しなかった。西欧におけるメジャーな怪物、魔物といえば、悪魔であり、魔女である(余談ながら、ルーマニア語の吸血鬼(ストリゴイ)はイタリア語の魔女(ストレガ)と同じ語源)。そのためか、西欧ではしばしば苛烈な魔女狩りが発生したが、東欧での魔女狩りはほとんど記録されていない。
近代に入ると、東欧の伝承が西欧に伝わり、「ヴァンパイア」という外来語として受け入れられた。しかし東欧と違い、西欧人が注目したのは吸血鬼の「不死性」であった。血を吸うことで永遠に存在する魔物という概念は、恐怖とともにロマンを掻き立てた。
それを形にしたのが、19世紀初頭に出版されたポリドリ作の「吸血鬼」である。貴族で詩人のバイロン卿をモデルにしたと言われる吸血鬼像は、多くの人々に鮮烈なイメージを焼き付けた。これにさらに東欧の「ヴァンパイア」伝説を合体させて、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」が生まれることになる。
東洋の吸血鬼
日本では仏教の影響により血に対するタブーがあるため、怪談に登場する妖怪の多くは血ではなく精気を吸う、あるいは肉や骨も食らうとされていることが多く、血だけを吸う妖怪は稀である。
中国ではキョンシーが吸血鬼に該当し、マレーシアにはペナンガランの伝承がある。
狂犬病との関連
稀に言われるのが、狂犬病との類似点である。
狂犬病と吸血鬼の共通点として――
・水が苦手(吸血鬼の場合は流水)
・日光に弱い
・嗅覚・聴覚が鋭くなる
・性格が豹変し、獰猛になる(脳細胞に支障をきたすため)
特徴・能力
吸血鬼の設定は、イメージや作品に大きく左右されるため、厳密に定義することはほぼ不可能だが、原点の伝承である、一度死んだ人間がなんらかの理由により不死者として蘇り、人に害悪を与えるという点ではおおむね一致している。
下記は多く見られる傾向がある設定であるが、当然のことながら中には当てはまらないものもある。下項の各種キャラの特徴も参照。
- 出自に何らかの特徴が見られることがある。紳士という印象が見られることもある。
- 人の生き血を吸う。犠牲者もまた吸血鬼となる可能性がある。
- 吸血の際は首筋に牙をつきたてる。
- 血を吸われる相手には性的な快楽がある。
- コウモリや狼などに変身することがある。
- 魔術の類・暗示をかける魔眼を駆使する。
- 鏡に映らない。鏡と同等に反射するもの(ガラスなど)についても同様。
- 棺桶で寝る。
- 身体的な特徴がある
弱点
- 日光に弱い。(日光を浴びると灰になるというのは吸血鬼ドラキュラの映画版の独自設定だが、あまりに印象的だったためか現在では常識のようになっている)
- 銀の武器に弱い。
- 十字架を見ると自分の罪深さを思い出して自責の念に駆られる。
- 大蒜が苦手。(ストーカーの吸血鬼ドラキュラでは大蒜の花の匂いが苦手となっている。強い匂いを持つものは魔除けになるという民間信仰による)
- 川など流れる水の上を渡れない。(空を飛んだりボートや橋を使えば可能)
- 入ったことのない建物には家人から招かれない限り入れない。
- 杭で心臓を貫けば死ぬ。(地域によっては白木(ホワイトアッシュ)、山査子、鉄の杭など)
- ケシの種の様な粒状の物が大量にあるのを見ると、いくつあるか数を数え始めてしまう。これは原始的な魔除けの呪い(まじない)として、世界中に見られるものである。日本にも籠を軒先につるし、魔物に籠の目を数えさせて、魔物が去る夜明けを待つというものがある。セサミストリートに登場する吸血鬼、カウント・カウント(カウント伯爵)の癖はこれに由来し、子供に数の数え方を教える役目を果たしている。
創作における吸血鬼
上述のポリドリやレ・ファニュ、ブラム・ストーカーの小説による影響、ストーカーがモデルの一人としたヴラド3世(ヴラド・ツェペシュ)にまつわる逸話などから、高貴でプライドが高く、凶悪かつ強力なモンスターというキャラクターが一般化した。
また、被害者を誘惑し、牙を突き立てて吸血するというその行動には性的なイメージがあり、アンデッド=老いることなく、殺されない限り永遠に生き続けるという特徴と相まって、セクシーかつ耽美、あるいはスタイリッシュなキャラクターが生み出され続けている。
キャラクターの特徴
前述の一般的認識を踏まえ、ほぼそのままの設定で通す場合があるが、あえてその設定の一部を崩した設定を使う場合もある。
設定を崩している例
- 日光が平気、致命的な弱点ではない(HELLSINGのアーカード など他多数。)
- 十字架が平気(東方projectのレミリア・スカーレット など他多数)
- 必ずしも首筋から血を吸う訳ではない。(実際は『胸元から吸血』し、首筋となったのは映像作品等で「胸元から吸血が、姿勢的に難しい」等の理由で変更された。)
- 棺桶で寝ない(月姫のアルクェイド など)
- 力があるわけではない(ジョジョの奇妙な冒険の二部に登場する雑魚吸血鬼たち など)
- 一般人よりはかなり強いが、それよりも強い超人主人公に無双される (彼岸島の雑魚吸血鬼たち など)
- 吸血鬼が血を吸った相手が吸血鬼になるのではなく、吸血鬼側から血を与えられることで新たな吸血鬼が生まれる(幻想水滸伝、BLACK_BLOOD_BROTHERS、にゃんぱいあなど)
- 吸い取るものは血ではなく相手の姿、つまり噛みついた相手に変身する ときめきトゥナイト)
- 大蒜の球根が苦手(ただし中東では大蒜自体が魔よけのため、中東地方出身の吸血鬼には効果があってもおかしくは無い)
- 他人の家に招かれなくても普通に入れる(となりの吸血鬼さんでは単に倫理観から入らなかった)
- そもそも人間体ではなくアメーバ状の宇宙生命体であり、人間に寄生してから人の生き血を吸うという稀なケースもある(吸血鬼ゴケミドロ)。
- そもそもアンデッドでなく、伝承的な吸血鬼とはあまり関係ない(彼岸島の吸血鬼など他多数)
ただしいくつかは原典や細かい指定から考えると設定崩壊とは言えない。(特に日光と十字架)
他にも吸血方法については古い伝承には明確にされていないものが多く、「触れられると血を吸われていた」「目を合わせると血を吸われていた」などから、果ては「気が付いたら血を吸われていた」等というものまである。
また逆に吸血鬼全体に対してはこれらの弱点や特性が一般的であるとした上で、キャラクター固有の能力としてこういった設定が設けられることも少なくない。
pixiv上でのこのタグの使われ方
pixivにおいてはDIOなど、有名な吸血鬼の絵につけられることもあるが、それらの絵には登場作品特有のタグがつけられるケースが多く、敢えてこのタグをつけられるのは非常に稀である。
どちらかといえばオリジナルの吸血鬼キャラにつける場合、あるいは本来吸血鬼ではないキャラが吸血鬼化した、または吸血鬼の仮装をした作品に対し付けられる場合が多い。(→吸血鬼パロ)
吸血鬼を題材にした主な作品
有名な作品としてジョジョの奇妙な冒険やHELLSINGが主に挙げられる。吸血鬼キャラの数がこの2作では特に顕著であり、ストーリーの中核を担っていることが特徴的である。これらの作品の他にも、一部の作品でもこのようなキャラが登場する。
また日本では海外の様に実写作品としての吸血鬼映画はそうは多くなく、媒体はアニメ・漫画・小説などに多い。しかし実写の邦画でも吸血鬼を題材とした作品がいくつか存在している。
- 暁のヴァンピレス
- 悪魔城ドラキュラ
- アルネの事件簿
- インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア
- Vassalord.
- ヴァニタスの手記
- ヴァンパイアクルセイダーズ
- ヴァンパイア・クロニクルズ
- ヴァンパイア十字界
- ヴァンパイアシリーズ
- ヴァンパイア騎士
- ヴァンパイアナイト
- 吸血姫美夕
- ヴぁんぷ!
- ヴィジュアルプリズン
- ウィッチテイル
- 終わりのセラフ
- かりん
- 仮面ライダーキバ
- 吸血鬼ゴケミドロ
- 吸血鬼すぐ死ぬ
- 吸血鬼ドラキュラ
- 吸血殲鬼ヴェドゴニア
- 禁断吸血鬼
- 銀狼ブラッドボーン
- 血界戦線
- SERVAMP
- シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア
- ジョジョの奇妙な冒険(第1,2,3部)
- ストライク・ザ・ブラッド
- SeventhBloodVampire
- 戦刻ナイトブラッド
- ダレン・シャン
- ダンスインザヴァンパイアバンド
- 血と灰の女王
- ちびっこ吸血鬼
- チョコレート・ヴァンパイア
- 血を吸う薔薇
- 血を吸う眼
- 月とライカと吸血姫
- 月姫
- 月夜に響くノクターン
- DIABOLIKLOVERS
- デイブレイカー
- デビルズライン
- 転生吸血鬼さんはお昼寝がしたい
- 東方紅魔郷
- ときめきトゥナイト
- となりの吸血鬼さん
- トリニティ・ブラッド
- トワイライト
- ドン・ドラキュラ
- にゃんぱいあ
- 吸血鬼ハンターD
- バンパイヤ
- バンパイヤンキッズ
- 彼岸島
- 羊のうた
- ブラッディ+メアリー
- BLACK_BLOOD_BROTHERS
- BLOODALONE
- BLOOD+
- ブラッド・クルセイド
- ブラッドラッド
- Blade
- CODE_VEIN
- HELLSING
- ぼくのエリ 200歳の少女
- ポーの一族
- ボクらの太陽
- MARS_RED
- マスターモスキートン'99
- よふかしのうた
- ロザリオとバンパイア
吸血鬼キャラの皆さん
代表的なものを挙げる。
男性
カート・バーロウ/ブライヒェン卿('Salem's Lot)
女性
カーミラ(当該記事参照)
ドラキュラの『妻』たち(吸血鬼ドラキュラ)
ヴァンドラ(んちゃ!!わくわくハートの夏休み)
カーミラおよびドラキュラの影響で貴族的なイメージが確立する以前の(あるいはその影響下にない)死霊や獣人に近い『吸血妖怪』の中にも、女性とされるものがいる。
ラミア / エンプーサ / モルモー / ゲッロ(Γελλώ)
ペナンガラン / スンダル・ボロン / ポンティアナック(pontianak)
Space girl(スペースバンパイア / 宇宙ヴァンパイアー)
一族
最後の大隊『ミレニアム』の皆さん
笑顔の絶えない職場でお馴染み、ナチスの吸血鬼さんたちです。
え?あと2人?原作嫁!
関連タグ
ヴァンパイア バンパイア ヴァンパイヤ Vampire ヴァンパイアロード ヴァンピール
ノスフェラトゥ ウプイリ ストリゴイ(モロイ/モロアイカ/ムロニ) クドラク
ダンピール クルースニク ヴァンパイアハンター ヴァンパイアキラー ユダの子ら コリントの花嫁 ネラプシ
荒木飛呂彦-十年程度経過しても外見があまり変わっておらず、またジョジョの作者であることから、お約束的なジョークの対象になっている。
仮面ライダーBLACKRX-本人曰く「陽の光在る限り何度でも甦る!」をはじめその時不思議な事が起こって吸血鬼の天敵と云える能力をも手にしたチートライダー
ムンク-彼の作品の一つに「吸血鬼」という題名の作品がある。
鬼滅の刃(鬼の設定が類似)