井上真由子は、妖怪とらが 『一番喰いてぇ人間(蒼月潮・通称うしお)』の次に食べようと考えていた 『でざと(デザート)』で、その為に危険にさらされた時などには助けていた。
とらが取り憑いている潮をはじめ、気心の知れた人間に対するとらの 『喰いたい』という願望の根底には、はるか昔の記憶が無意識に根付いており、それには 『口の中に隠して守る』という意があるので、一番に喰いたいと思っている蒼月潮と、その次の真由子には、他の妖に喰われたり害されたりしないように守るという庇護的な感情や親しみは抱いていたと思われる。
作者によると、とらは真由子やかがり等、自分に好意を寄せる女性達には恋心といったものは抱いていなかったとの事だが、一方の真由子の方は物語の中盤以降、恋愛に近い感情をとらに寄せ初め、彼の事を「とらちゃん」と呼び積極的な態度を示すようになる。
とらの好物であるハンバーガーを度々ご馳走してあげたり、デパートのウェディングドレス売場でドレスを試着した際には、とらと婚礼の真似事をしようとして、渋るとらを強引に誘うなどといった、ほのぼのとしたエピソードもある。 誓いを求める真由子に迷惑がっていたとらも 「おめぇが喰えるなら」 という条件付きで、それに答えてあげていた。
物語のラスト近くで、潮から憎まれ別れを告げられてしまった事により、心に重く深い傷を負ったとらは、単身挑んだ白面にも敗れ潮時を悟る。 潮から投げつけられた「バケモン」という言葉に胸を抉られ、傷心の余り、一体で静かに消滅しようとするとらに、真由子は気遣うように語りかけたり、人間に戻れるよう願いを込めて髪を梳いたりした。
先述の婚礼の真似事で、とらに 「おめぇを喰えるなら」という条件を前提として誓ってもらった為か真由子は、とらの背中に縋りながら 「私を食べるって言ってたよね。必ず食べてね」という願いを口にしている。
「うしおの次にな!」 という返答を受けた真由子は 「それじゃ・・・私を、ずぅーっと食べないつもりだねぇ」と悟り涙するが、最後に自分の想いだけは告白し、とらから離れた。
離れ際に「100年経っても200年経っても私を守ってくれるわよね」と言う真由子に、とらは 「守らねぇよ。 今、白面を倒せばいいじゃねぇか! そんな役につくわけねぇ、わしとうしおなら、どんな敵でもやっつけられる」と言い放ち、真由子も本心では戦いには行かせたくなかったが、とらが再び潮と共に闘いたいと願っているのを見抜き、胸の穴を理由に潮の元へ行くのを躊躇しているとらに発破をかけ、戦いへと向かわせた。