概要
ハルドリア王国のレイストン公爵令嬢、エリザベート・レイストン。宰相の娘であり、王太子フリードの婚約者。
王太子妃教育どころか、王妃教育まで終えているチート令嬢で、物心ついた時から未来の国母として努力して来た。
婚約者である王子のミスをフォローし、父である公爵の仕事を手伝い、義父となる国王を陰から支えて来た。
そんなある日、父や国王が不在の折、何を思ったか王子はエリザベートに婚約破棄を告げた。おまけに体面を気にした父親によって冤罪を着せられてしまい、国民からも悪人のレッテルを貼られてしまう。
そして、長年の不満からついにブチ切れたエリザベートはずっと隠していた本当の力【七つの魔導書】を手に祖国への報復を誓うのだった。
そして商人として「エリー・レイス」の名で仲間と行動をしている。
この事からか、敵には容赦がなく、野盗は人と見做しておらず、命令とはいえ村を襲ったハルドリア王国の男を苦しませながら死なせ、さらに別の男には村人に(本人たちの意思とはいえ)惨殺を任せている。
また、戦争時に氷魔法で敵兵を含め一帯を銀世界にしたことから《白銀の魔女》という異名が付いた。
できれば敵に回したくない彼女であるが、一方で優しい一面もある。
後世では、「《白銀の魔女》様」と敬称付きで呼ばれ、偉人として語られている。
経歴
祖国への復讐を決意したあとは、王国に滞在中だったユーティア帝国の大使ルーカス・レブリック子爵を味方に引き込み、王国を脱出し帝国へ亡命する。
亡命後、レブリック子爵領でトレートル商会を設立し、石鹸の販売で名を広めていく。
サージャス王国との戦争時は、自ら義勇軍を率いて戦果を挙げ、褒賞として帝国の特別認可商人に推薦され、評議会によって認定される。
能力
◇神器『七つの魔導書(グリモア・セブンス)』
それぞれ強力な効果を持つ七冊の魔導書。ハルドリア王国にいた頃は本当の力を隠し、神器を『英知の魔導書(グリモア・ウィズドム)』と偽っていた。
作中で登場したのは以下の六つのみ。
①『暴食の魔導書(グリモア・ベルゼブブ)』
魔法を記録する。他人の魔法を記録することで、自身に適性のない属性魔法も行使することができる。
②『傲慢の魔導書(グリモア・ルシフェル)』
情報を記録する。エリー自身が過去に手にした書物や見聞きした情報が記録されており、【検索(サーチ)】機能で膨大な情報量から特定のワードに関する情報をピックアップしたり、古文書を解読したりできる。ハルドリア王国の地理や人口などの軍事機密の他、禁書庫の秘術書、古代文明の技術を記した古文書なども記録されている。
公爵令嬢時代は、この『傲慢の魔導書』のみを『英知の魔導書』と偽って公開していた。
③『怠惰の魔導書(グリモア・ベルフェゴール)』
契約を記録する。精霊界や魔界など、隣り合う別世界の存在を対価を支払うことで召喚し力を借りられる。銀貨を対価にセイントバード、魔石を対価にウーズ・オリジン(魔界に生息するスライムの原種)を召喚している。
④『強欲の魔導書(グリモア・マモン)』
所有物を記録する。大量の物資を収納可能だが、生物は収納できない、エリーの所有物でなければ収納できない、水や空気は容器にいれて「個」と認識できなければ収納できない、などの制約がある。
⑤『色欲の魔導書(グリモア・アスモデウス)』
改変を記録する。条件を満たした相手の記憶を改竄し、強力な催眠・暗示をかける。一人にしか使えず、一度使うと対象者が死ぬか、エリー自身が対象者に接触しなければ解除できない上、効果の強さに応じて身体の一部に呪いを受けなければならない。
⑥『嫉妬の魔導書(グリモア・レヴィアタン)』
神器を記録する。他人の神器を蒐集し使用できるが、使った後は数日間魔力が全く使えなくなる。
◇『翼を持つ者(フリューゲル)』
元はハルドリア王国の宝物庫にあった宝剣。叙事詩にも謳われる名剣で、公爵令嬢時代、自身が立案した作戦で帝国軍を撃退した褒賞により、国王から下賜された。
天龍の素材でできた魔法武器で、透き通るほど薄く拵えられた刃はミスリルすら両断する鋭さを持つが、耐久性は無きに等しく、攻撃を受け流すどころか、無理な軌道で振り回しただけで砕け散るため、並の剣士では扱えない代物。
◇『雷神殺し』
ロゼリア・ファドガルとの取引で手に入れた雷龍の角で作られた細剣。製作者はおそらく評議員ガイエンの娘カガリ。後世では、《白銀の魔女》ゆかりの品として博物館に展示され、「かつて雷を斬り払った」と伝えられている。
用語
◇トレートル商会
エリーが帝国への亡命後、レブリック子爵領で設立した商会。設立から約一年ほどで子爵領を拠点とした他の化粧品を扱う中小の商会を吸収・拡大し、帝都に進出する。幹部にはファンネル商会時代からの部下だった者達や、吸収した商会の者もいる。
本部は当初レブリック子爵領の領都に置かれていたが、のちに帝都に移している。
◇タルクス
サージャス地方北部の限られた地域のみで採取される鑑賞用の花。加工法や触媒によって、その性質を大きく変える。
◇エルミア
トレートル商会が販売している香水シリーズ。元はタルクスの花の古称で、大昔にサージャス地方に住んでいたアルテミ氏族という古いエルフの一族が使っていた名称。
◇アクアシルク
ごく稀にダンジョンで手に入る、生産方法が不明な幻の布。アクアクローラーという魔物が条件を満たすことで吐き出す糸から作られる。
◇アクアクローラー
西大陸に生息する水棲の芋虫型の魔物。西大陸では湖で栽培している薬草を食べ尽くす害虫として扱われている。特定の条件を満たすことで上質な糸を作る。
◇ファンネル商会
ハルドリア王国にいた頃、エリザベートが12歳で設立した商会。予算の都合がつかずいくつかの貧民救済政策を施行できなかった経験から、自由にできる資金を得るため設立した。ハルドリア王国経済界でも上位に食い込むほどの規模に成長し、雇用の創出や貧民救済を通じて貧富の差を狭める一助となっていた。
婚約破棄後、幹部はフリードの息のかかった者(取り巻きの貴族子弟や上手く取り入った商人)にすげ替えられた。主力商品である化粧品の原料を安価なものに変え、作業員の人数を減らして負担を増大させたため品質が劇的に低下し、炎症が起こるなどの苦情が寄せられているが、全て王太子の名で揉み消している。他の商会や金融機関からの借金が嵩んでいるが、それも王太子の名で踏み倒している。
帝国金貨の信用を落とすため、フリードの指示で偽金を帝国内に流通させていたが、エリーに叩き潰された。