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概要編集

壁井ユカコ作のライトノベル。2009年12月25日にメディアワークス文庫から刊行された。

電撃文庫刊行の『カスタム・チャイルド』と同一世界観の作品。ストーリー自体は前作と繋がりは無く単作として読めるが、『カスタム・チャイルド』と共通の舞台(ハンダ通り、〈閂亭〉等)で展開されており、同作品のキャラクターも登場している。

前作のボーイミーツガールの作風とは一線を異にしており、遺伝子工学によって生まれた負の側面を強調したディストピア色が強い小説になっている。


ストーリー編集

至高の外見を持ちながら四歳で母親に返品された春野倫太郎

ジーン・プア(遺伝子貧乏)として差別される人生を送る清田寿人

父が偏愛するキャラクターの実体化として生まれた冬上レイ

遺伝子工学の最高権威への近道になるSスクール。その入学を目指す予備校で出会った三人の歪んだ青春劇。


世界観編集

1970年代に遺伝子工学と技術が異常発展し、生まれる子供の遺伝子を自由に操作できる遺伝子産業革命が起こった仮想現代。

出生前の子供の性別、髪や瞳の色といった容姿・性格の傾向を自由に選ぶことができる生殖ビジネスが台頭し、生まれた子供はトランスジェニック・チャイルドと呼ばれている。新企業として急激な成長を遂げている半面、子供の親からは「会社で見たカタログと子供が違う性格/容姿だ」とクレームを付けられることもあり、会社によっては“返品”された子供が育てられる施設がある。

またトランスジェニック・チャイルドとして生まれていない少数派の人間はジーン・プア(遺伝子貧乏)と呼ばれ、先天的遺伝子異常者とはまた異なる公然とした差別がまかり通っている。


登場人物編集

主人公編集

春野倫太郎(はるの・りんたろう)

16歳。金髪にアッシュグリーンの瞳を持つカタログ・トランスジェニック・チャイルド。旧姓は吉一。

動き方や言葉遣いが何もかも軽く、飄々とした性格で本心を見せない腹黒。何事にも真っ直ぐな清田を鬱陶しがって日々悪口を言い合っているが、心の底では彼の綺麗な性分を眩しいと思っている。

一般的なトランスジェニック・チャイルドよりも優れた美貌を持ちながら、四歳で母親にトランクに詰められて“返品”された過去を持つ。境遇を見かねて引き取った知佳には性格と教育方針もあってか頭が上がらない。


清田寿人(きよた・ひさひと)

16歳。親の意向でジーン・プアとして生まれた、作品内では珍しい日本人らしい日本人。

ジーン・プアと差別してくる人間にも真っ向から挑むほど気が強く、若干短気な性格。両親の教育の反動でトランスジェニックを憎んでいるが、同時に容姿・頭脳・運動能力の何もかもを上回る彼らに強いコンプレックスと羨望を抱いている。

春野とは第一印象から犬猿の仲で会うたび喧嘩していたが、次第に気心が知れた友人と認めるようになる。冬上のことが好き。


冬上レイ(ふゆがみ-)

16歳。先天的なアルビノとしてカスタマイズされたオーダーメイドのトランスジェニック・チャイルド。

父親が溺愛する某美少女キャラクターと瓜二つの容姿で生まれ、キャラクターの分身となるよう徹底的に躾けられている。その影響で歳をとるという自然の摂理に怯えており、父のためなら何を犠牲にしてもいいという歪んだ価値観(春野曰く「奴隷根性」)を持つ。

何事にも無反応で淡白。存在感が極端に薄く、常に眼帯や包帯をしている。


主人公達の関係者編集

春野知佳(はるの・ちか)

36歳。ダーウィンズ・ヒルで働く派遣社員。

吉一あきこに返品された春野を勢いで引き取り、独り身で子育て経験がないながらも養母として彼を育てる。

豪胆で男勝り。教育に関しては若干放任気味だが春野のことは「自分の宝物」と大切に思っている。


牧原(まきはら)

47歳。ダーウィンズ・ヒルの社員。

春野や知佳からは「部長」(以前は「主任」)と呼ばれており、春野からは「理想の中年」と尊敬されている。

幼い春野を引き取った知佳に好意を抱いてプロポーズするが、とある事情で保留されてしまい十年以上片思いしている。


清田の父

反トランスジェニック派の宗教に属していた小さなタイル工場の社長。

学がないためトランスジェニックに対して強い偏見を抱き、清田の母が亡くなってからは酒に溺れるようになった。


冬上ヒデミ(ふゆがみ-)

41歳。レイの父親。

太った外見、粘つくような言動、小物染みた反応と何もかもが醜悪な人間で、冬上を自分が望むキャラクターへ近付けるために虐待同然の教育を行っていた。


吉一あきこ(よしかず-)

春野の実母。四歳の春野を正規の手続きを行わずに“返品”してきたクレーマー。

自分がカスタムしたトランスジェニック・チャイルドは全て自分の理想通りに成長すると妄信しており、子供の失敗には過敏に反応してヒステリックな躾を強いる。


吉一るうたろう(よしかず-)

15歳。あきこの息子で春野の実弟。

春野とそっくりな外見を持ち、無自覚に人をイラつかせる性格をしている。春野については両親から「神隠しに遭った」と教えられている。


ネジ

スラム街で権力を持つ一人。常人の何倍もの速さで老化する病を持つ先天的遺伝子異常者。

遺伝子異常と引き換えにずば抜けた頭脳を持ち、スラムに居る遺伝子中毒者等を相手に商売を行う。ダーウィンズ・ヒル及びトランスジェニック・チャイルドの暗部を把握している。


関連タグ編集

壁井ユカコ メディアワークス文庫 ライトノベル

ディストピア

カスタム・チャイルド


外部リンク編集

メディアワークス文庫 カスタム・チャイルド -罪と罰-

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