TVアニメブレンパワードにて、主人公の敵対勢力「リクレイマー」に属する「ジョナサン・グレーン」が発した名台詞(迷台詞?)である。
実演
発言者 | 発言内容 |
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アノーア | いい加減でクマゾーくんを下ろして投降なさい。そうすれば悪いようにはしません! |
ジョナサン | 嘘をつけ! 悪いようにしないなんてずーっと言ってきたじゃないか! だけどいつもいつも裏切ってきたのがママンだ! |
アノーア | そんなことありません! |
ジョナサン | 8歳と9歳と10歳の時と、12歳と13歳の時も僕はずっと……待ってた!! |
アノーア | な、何を……? |
ジョナサン | クリスマスプレゼントだろ!! |
アノーア | ああっ……!? |
ジョナサン | カードもだ! ママンのクリスマス休暇だって待ってた!! あんたはクリスマスプレゼントの替わりに、そのピストルの弾を息子にくれるのか!? |
アノーア | そんなに忘れてる……っ!? |
詳しい説明
アニメ『ブレンパワード』第9話「ジョナサンの刃」での1シーン。
サバイバル艦「ノヴィス・ノア」の艦長を務めるアノーア・マコーミックと、その息子でありながら敵対勢力である「リクレイマー」に属するジョナサン・グレーン。
母アノーアは息子ジョナサンが敵になっていることなど知らなかったが、ジョナサンの潜入作戦により予期せぬ対面を果たす。
精子バンクの提供を受けて誕生したため父親の顔を知らず、仕事一辺倒の母親には愛情を注がれていなかったと糾弾するジョナサンだが、アノーアはそれを否定。
作戦の失敗により、その場に居合わせた孤児のクマゾーを人質にして逃走を開始するジョナサン。
そこに先回りして立ち塞がったアノーアに、ジョナサンは言葉の刃を突き立てる(実演参照)。
登場当初からキモ系二枚目として様々なオーガニック的台詞を連発し、半ばネタキャラ化していたジョナサンだったが、この回でマザコン属性を持ち合わせていることを明らかにし、更に煽りのプロとしての本領をも発揮した。
セリフ回しや迫真の演技によって、「たかがクリスマスプレゼント如き」と笑うに笑い飛ばせない生々しさを醸し出している。
自分は息子を愛していると確信し上から目線がにじみ出ていたアノーアも、それが独りよがりの思い込みでしかないことを思い知らされ、打ちのめされる(この辺は「(親が)勝手に想ってるだけの想いなど、子供に伝わるわけがないだろう!!」という台詞にも強く出ている)。
なお、この出来事は、後々の物語に大きく響いてくる。
さて、ここに至るまでの少し前の会話を振り返ってみよう。
ジョナサンの会話をよく聞いてみると(アノーアが男女の愛より遺伝子を重視すると解釈して)自身の悪辣さの原因は自身を構成する天才の遺伝子のせいにするなど遠回しな優しさをうかがわす一面も見られた。しかし、当のアノーアが自身の遺伝子の方に問題があったからだと返すと「自分に欠陥があるのなら子供なんか作るな!」と激昂していた。
その場に居合わせた直子には「憎まれ口が叩けるのも母親の存在があるからだ」(要約)と的外れな発言をされた挙句、クマゾーの立ち小便に付き添った際には「ママのおっぱいが欲しいんで、ここに会いに来たんだも?」と本質を子供特有の残酷な口調で指摘されるなど踏んだり蹴ったりな目に遭っている。
これが切っ掛けでクマゾーにビンタを喰らわせたり、上記の掛け合いに繋がるのだが、それでもメンタルが折れなかったクマゾーくんはすごいという他ない(これにはさしものジョナサンも感心するほど)。
名台詞に事欠かない『ブレンパワード』の中でも屈指のオーガニック的名台詞だと、ファン内外からの認知度は高い。
『第2次スーパーロボット大戦α』でもジョナサンがノヴィス・ノアに潜入する場面が登場し、このセリフもボイス付きで登場しているが、トーンはアニメ版よりも下がっている。
余談
キリスト教圏である欧米諸国ではクリスマスは家族で過ごすのが常識となっており、仕事の都合でどうしても無理でも凝ったクリスマスカードや豪華なプレゼントを送ることで詫びを入れるのが当然である。
そういった詫びを一切入れず子供一人で過ごさせるのは育児放棄に等しく、下手をすれば親権の停止すらあり得る大事である。日本で言うなら正月や誕生日に、お年玉やプレゼントも忘れて、おせちなどの特別な料理もなし、連絡や説明も謝罪もなしで無断で子供を一人ぼっちにさせている、と言えばその重大性がわかるだろうか。
またセリフを見れば11歳が抜けているが、これはアノーアがブリッジに飾っていたカードを「ジョナサンが10歳の時にプレゼントしてくれた」と記憶している事から、恐らくそのカードがきっかけとなって、11歳の時には忘れずクリスマスを祝ってもらえたのだろうと推測されている。11歳のジョナサンがどれほど喜んだか、翌年もどれほど期待したか、そして12歳の時にまたしても裏切られたジョナサンの気持ちは、察するに余りある。
(なお、アノーアは「仕事が忙しすぎて帰る暇がなかった」のではなく、単に「仕事をしていたかったから一度も帰らず仕事をしていた」だけであり、同僚は「休暇入りに誰よりも遅く帰って、明けに誰よりも早く出社しているだけ」と勘違いしていた。しきりに息子を愛しているアピールをする彼女がまさか家族をほっぽらかして仕事しているなどと夢にも思っていなかったのである。)
ジョナサンは物心ついてから、たった一回しか母親にクリスマスを祝ってもらえなかったのだ。
それにもかかわらず母親は「自分は息子を愛している」と確信して疑いもしないのだ。
これがどれほどジョナサンを苦しめていたかは、本編中の彼の行動を見れば自ずと察しがつく事だろう。
日本のネット上ではマザコン、ギャグ的なセリフとしてネタにする者もいるが、ジョナサンが幼少期からずっと抱え込んできた孤独や絶望、親に対する期待や怒り、憎しみなどの入り混じった感情を、自分の事を何も理解していない親に叩きつける、極めてシリアスなセリフなのである。
英語版声優陣はその重大性を日本人よりもよく理解していることもあって、英語版ブレンパワードの該当シーンでのジョナサンの演技は日本語版よりも熱の入ったものになっており、必見。ジョナサンの「FOR A CHRISTMAS PRESENT FROM YOU!!」からは「こんなことも言わなきゃわかんねぇのかよ!!!なんでわかんねぇんだよ!!?」という慟哭が伝わってくるほどの迫力がある。
また、アノーアの返答で少しでもマシな印象にしたかったのか日本語版の「そんなに忘れてる…」から「I haven't forgotten you...(忘れていたわけじゃない…)」に変わっている。
※該当シーンの英語吹き替え際に現場がお通夜状態になった、ジョナサン役の声優が「辛かった」と述べた、アノーア役の声優があまりの辛さに言えずセリフ変更してもらった、寝込んでしまったなどという噂がインターネット上で散見されるが、ソースが確認されないことからデマや伝聞に尾ひれがついた可能性に注意されたし。
クリスマスプレゼントだろ!!(英語版)