スィアチ
すぃあち
北欧神話に登場する巨人。ヨトゥンヘイムの山奥にあるスリュムヘイムに娘のスカジ(スカディ)と一緒に住んでいる。ヨトゥンヘイムに住んでいる巨人だが、「山の巨人」(ベルグリシ)と呼ばれる種族である。
鷲に変身できる羽衣を使ってアース神族を苦しめた逸話が残っている。
オーディン、ヘーニル、ロキの3人は旅先のヨトゥンヘイムで肉を焼こうとしたが、一向に焼ける気がしなかった。すると近くにいた大きな鷲が「どれ、肉を焼けるようにしてやるから、報酬として肉をよこせ」と申し出たので、三神は約束通りに肉をやったのだが、よりにもよって鷲が一番美味しい部分を持っていってしまった。
ロキはお気に入りの部位を取られた事に激しく憤り、棒で鷲を叩き落とそうとしたが、逆に空高く攫われてしまった。
神といえど、この高さから落ちればただでは済まない。鷲は「助けて欲しかったら黄金のリンゴをよこせ」と脅迫したので、ロキは彼の言う事に従い、イズンに「あなたの黄金のリンゴより素晴らしいリンゴを見つけた」と言いイズンは無邪気でお人よしだったので難なく騙せて彼女ごと黄金のリンゴを奪わせた。なかなか肉が焼けなかったのもスィアチが魔法で肉を焼く邪魔をしていたからであって全てはこの為であったのである。
黄金のリンゴを奪われたアース神族は若さを保つ事が出来なくなり、急速に年老いていった。散々辛酸を舐めさせられたロキはスィアチに一矢報いてやろうとフレイヤから鷹の羽衣を借受けると、鷹に変身して木の実に変化したイズンを救出した。勘付いたスィアチが鷲に変身して追って来たが、ロキの機転で燃え盛るカンナ屑の山に誘導されて文字通りの焼き鳥になった所にトールがトドメを刺した。
食べ物の恨みとはそれほどまでに恐ろしいのである。何よりロキが火の神だったのだから、肉を焼く邪魔をされたのが癪に触ったのかもしれない。