もしかして?→スカジ(アークナイツ)
概説
巨人族(ヴァン神族)の出身ともされ、同じく元ヴァン神族の海神ニョルズの妻。
綴りは【Skadhi】、もしくは【Scatha】。「スカディ」とも呼ばれる。
その名は「傷付けるもの」、「損害」、「死」を意味し、ゴート語・古英語における「影」という言葉に通じるともされている。
ほか古ノルド語で「スキーの女神」意味する【アンドルディース/Öndurdís】、古エッダ『グリームニルの言葉』では「神々の麗しい花嫁」と称されている。
山を司る地母神としての特性と、スキーと弓矢を得意とし、狩猟を好み北方に棲んだ逸話から、「雪の女神」「氷の女王」としての神格を見出される。
逸話
ニョルズとの婚姻
父は不老不死をもたらす女神イドゥンを攫った巨人スィアチ。彼はイドゥンを攫ってアース神族を壊滅の危機に追いやった難敵であった。
その娘であるスカジは父の仇討ちの為にアズガルドに乗り込んでくるが、アース神族たちはスィアチの娘である彼女を敵に回すのを危ういと考えたか、和解交渉に乗り出す。
そこでスカジにアース神族との結婚を勧めることにしたが、彼女はとりわけ美男子と誉れ高い光の神バルドルを所望する。しかしバルドルはオーディンの子で、しかもオーディンの妻フリッグが溺愛する神々の貴公子である。おいそれと渡すわけにもいかず、神々は数柱の神を呼び寄せて頭から布を被らせ、足だけでバルドルを当てさせ、たとえ外れたとしても選んだ男神を夫とすることを条件とした。
結果、スカジはバルドルでなくニョルズを引き当ててしまい、彼と結婚することになった。
始めはそれなりに仲睦まじく過ごしていた両者だったが、互いの領分である海と山を往復する生活と、スカジはカモメの鳴き声が、ニョルズは狼の遠吠えがそれぞれ我慢できず、二神は破局を迎えてしまう。
以降、彼女は父の遺した「スリュムヘイム」の館を住まいとしたという。
また、「父が死んだので、決して笑わない」とも言うスカジを笑わせるために、ロキが自身の
陰嚢と牝山羊の髭とを紐でつないで叫んだり嬌声をあげながら綱引きをするという下ネタ
で笑わせ、スカジは怒りをなだめた。
さらに、オーディンはスィアチの両眼を天へ投げ上げ、2つの星にし、喜ばせたり神々がスカジに気を使っているシーンが多々ある。
のちにロキとも通じてそれを暴露されるが、ロキがバルドルを謀殺して幽閉されたときには、彼の頭上に毒蛇の牙を取り付けて毒液による責め苦を与えるという、報復とも取れる行動を起こしている。ロキは父スィアチの頃から因縁のあった神でもあり、思うところがあったのかもしれない。
ほか狩猟と弓の神ウルとスリュムヘイムで暮らした、オーディンの妃となったともされる。特に後者は10世紀ノルウェーの最高統治者ハーコン・シグルザルソン大公が、自身の血統はオーディンとスカジに由来すると謳っている。
余談
アメリカの作家兼女性運動家兼のバーバラ・ウォーカーが1983年に著した『神話・伝承事典 失われた女神たちの復権』では、スカディは死者を飲み込む大地母神の性格をもち、ケルト神話のチュートン族の女神であり、北欧神話の死の女神ヘルや、アルスターサイクルに登場する影の国の女王スカアハとの同一性がみられるとしている。
なおこの論には根拠らしい根拠は提示されていない。
また同書ではレジス・ボワイエ著『ヴァイキングの暮らしと文化』を依拠として、スカンジナビア半島の名の由来となっているとも指摘し、元は「スカジの国」を意味する『スカディン・アウヤ』が訛化したものと考察している。
ただしこの由来についてはAD.1世紀のローマで、博物学者大プリニウスが「スカンディナヴィア【Scadinavia】」≒『スコーネ(Skåne)の島』と記したものを語源とする説もある。このほかにも古代語を起源とする通説もいくつかある。
なお、バーバラ・ウォーカーはあくまでも作家、フェミニストであり神話・伝承の専門家ではない。言語学の専門家でもない
「神話・伝承事典 失われた女神たちの復権」も神話・伝承をフェミニズムの自説のために本来の内容から大きく曲解して解説どころか原典に存在しない内容の捏造なども指摘されている。
よって「スカアハとスカジの同一性」など、神話伝承の原典や他の本職の研究者による言及が存在しない、本書にしかない記述は極めて眉唾ものであることを留意しておく必要がある。
真・女神転生シリーズやFate/GrandOrderではバーバラ・ウォーカーの説を採用している。