ヨルムンガンド計画
よるむんがんどけいかく
※この記事は物語の核心に関わるネタバレとなります。未読者の方はご注意ください。
五つの陸を食らい尽くし
三つの海を飲み干しても
空だけはどうすることもできない。
翼も手も足もないこの身では。
我は世界蛇。
我が名はヨルムンガンド。
ヨルムンガンド計画とは、ココ・ヘクマティアルと天田南博士により秘密裏に進められてきた計画である。
その概要は、まず全世界の空を封鎖。軍事航空、一般航空、宇宙航空、ミサイル、ロケット弾等、人間が空を利用することを全世界同時に禁止。その結果、人類は交通の一つを失い、空は1910年代まで退行する。
国際的武器運送会社HCLIが打ち上げた126機の衛星『衛星測位補助システム』とココと天田が開発した量子コンピューターが実現する、空、海、陸の順の人間の行動制限と、地球上のありとあらゆる物流の完全制御。それによって人間と軍事を切り離すことがココの最終目的である。
すなわちヨルムンガンド計画とは、ココの手によって造られる強制的世界平和である。
CIA本部NCS欧州課長ブックマンをして、『ココ・ヘクマティアルは情報の世界の神になった』と認めさせるほどの力と思想であり、『なぜ世界征服しない?』と疑問を持たれる程である(なお、等のブックマンはココの造る新世界を見たがっており、むしろ協力的な姿勢ではある)。
協力者の天田は「大地と海を取り巻くヨルムンガンドは、太陽と星の光を消し大地を沈めてしまうわけなんだけど、空まで手に入れたヨルムンガンドは、この世界をどう変えてくれるのかな?」と思案している。
「軍を無効化させ人として解放する私の力は、神を超えている」とまで豪語するココの独断と偏見による極めて独善的な計画であり、この計画が発動した時点で68万3822名もの人間が死亡することが確定しており、これを「たった70万人」といいきれるココの考えは典型的なトロッコ問題として到底万人に受け入れられるはずもなく、結果としてヨナとの決別を招いてしまった。
しかし、もはや計画はココが死亡しても止まらない段階に入っており、結果としてココの言う『新しい世界』の到来は避けられない状況になっていた。戦争の絶えないこの世界を徹底的に憎む思想を語るココを説得することはもはや不可能と悟ったヨナはココの元を去ってしまう。
逃げ出した直後にキャスパーに拾われたヨナはそのまま彼らと行動を共にする。
そして2年後、ヨルムンガンドは完成し、あとは起動の信号を送るのみとなっていた。キャスパーの元を去り、再び戻ってきたヨナは「それで本当に平和な未来がくるのか?」と疑問を持っているものの、ココを信じついて行くことを決める。そしてついに・・・。
「ヨルムンガンド―――・・・・・・・・・」
「発動!」
ここで物語が終わっているため、その後世界がどうなったのかは不明。しかしキャスパーは
「この世界から武器がなくなると、本当に思うか?ココ。」
と発言しており、ココの言う『新世界』は必ずとも叶うとは限らないことを示唆している。