概要
塩野七生による歴史小説。
例外はあるものの特定の主人公が存在しているわけではなく、後世にヨーロッパ文明の基礎となった古代ローマという国家を含めた文明そのものの興隆と滅亡を描いた大河小説。
小説というよりも、歴史書としての側面が強いというのが特徴的である。
ハードカバー版で全十五巻、文庫版で四十三巻に及ぶ大長編となっている。
作品内容
作者による古代ローマという国家と文明についての考察を交えつつ、古代ローマの歩んだ歴史が叙述される大河小説。
作者による考察とはいうものの、実際の考古学的資料や歴史的に信頼度の高い資料を用いて、架空の人物などは登場させること無く、歴史的な事実を詳細に叙述した上で、考察が重ねられている。
元々歴史が短く、殆ど神話や伝説の域に入っている王政ローマについての叙述は短く抑えられ、特に共和制ローマと帝政ローマに関する叙述が中心となっている。
その中でも特に歴史的な意義の大きい人物は個別に巻数が立てられている。
主人公
各巻において特定の主人公は存在しないが、二巻のハンニバル戦記、四巻と五巻のユリウス・カエサル、六巻のパクス・ロマーナは、その後の古代ローマの歴史を決定づける英雄であることから、便宜上主人公として扱う。
二巻ハンニバル戦記の主人公。
共和政ローマとカルタゴの戦争であるポエニ戦争のカルタゴ側の将軍。
後世において天才戦術家として知られ、のちのローマにおいては『ローマ最大の敵』と呼ばれる。
四巻ユリウス・カエサル ルビコン以前と、五巻ユリウス・カエサル ルビコン以後の主人公。
ローマ帝国における最大の英雄。
内乱の一世紀と呼ばれる時代に元老院を掌握し、帝政ローマの礎を築いた。
彼の生涯はローマ人の物語の中でも特に重要な位置づけにあり、いわゆる「賽は投げられた」の言葉で有名なローマ内戦以前と以後とに分けられている。
第六巻パクス・ロマーナの主人公。
帝政ローマにおける初代皇帝。
カエサルの養子であり、カエサルの死後、カエサルとは違うやり方で元老院の権力を一手に掌握し、事実上のローマ帝国の独裁者となり、帝政ローマを建国する。