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中村拓磨

なかむらたくま

鳥人間コンテスト2011 人力プロペラ機ディスタンスの部、優勝チーム東北大学Windnautsの勇者である。
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あの日から142日が経った

東北大学の中村拓磨は鳥人間コンテスト2011の会場に居た。

パイロットとして、援助してくれた人々の想いを胸に

飛び出していった。


「ペラ回しまァああああすッ!!!」



行きまーすっ!!3.2.1.Go!!編集

順調な滑り出しで3㎞地点を突破、更なる飛行を予感させるものだった。


「直進するッ・・・!!」



聞こえる?桂・・・GPSの信号が無い。編集

4㎞を目前とするところだった。

中村を襲ったのは、GPSの無反応

つまり現在地も、仲間の声も自分の声も届かない、孤立を意味していた。


「あの・・・何も聞こえない・・・無線が・・・」


イヤホンから聞こえる指示も、励ましもない。

追い打ちをかけるかのように風に流されて進路は陸側へ向かってしまう。

絶体絶命の危機に陥ってしまった中村は問いかける。


「対岸は見える・・・だがこれはダメなんだろう・・・?」



クソっ・・・GPSが切れたら・・・俺は運転もできないのかよ・・・編集

機体は無情にも旋回し、スタート地点へ戻りだす。

どうにかして修正を試みる中村と叫ぶ事しか出来ないメンバー。

既に2㎞地点近くまで戻っていた。


「もう・・半分くらいの体力を使っている・・・帰って来れるのか?・・・これで・・・」


限界が近いことを悟る中村は吹っ切れたのだった・・・



「悪いね・・・ヘボパイロットで・・・・エンジンだけは・・・一流のところを見せてやるぜ」編集


「クソっ・・・フルパワーだぜっ!!信じらんねぇ!!」


機体は2km地点と3km地点の間で完全に旋回し、建て直しに成功する。


「やっと戻った・・・うわ・・だいぶ流されてるな」


戻ったのは3㎞地点、かなりの距離を流されていた。



「俺の人生は・・・・晴れ時々大荒れ・・・イイねっ!! いい人生だよ!!」編集

震災のときもそうだった、平穏な日常が一瞬で悲劇と化した。

順調に動いたものが動かなくなってしまった…。

どこか重ね合わせたのかもしれない

だが、東北も復興に歩んでいる。

自分が行かないでどうするんだ・・・


「風を・・・風を拾うんだ・・・」


一つの答えに行きついた、計測距離は5㎞を超え10㎞に近づく。


「押されてる・・・・わかってる・・・」


再び風に煽られ進路を流されてしまう機体。

必死に抗い、前に進ませようとする中村とそれを見守り続けるメンバー。


観客をも巻き込んで飛び続けた、そんな中村の足は悲鳴を上げる。



「アァっ左足がっ・・・攣ってる・・・」編集

18㎞を過ぎたあたりだった、総飛行距離は30㎞をゆうに超えていた。

1時間ぶっ続けでペダルを漕いだ足は限界を迎える。


「片足だけでまわすのは・・・右も限界に近い・・・・」


両足の筋肉に溜まり続ける乳酸は容赦なく中村を襲う。

機体は徐々に高度を下げ水面に触れるような状態にまで陥った。


東北大学だろ?Windnautsだろっ!?」



「まわれっ!!回らんかーっ!!」編集

彼を動かすものは何なのか、チームのため、周囲のため、地元のため、

否、そんな言葉では表現しきれないだろう。

あるのはただ情熱。

何度も痛みに悶え、咆哮を上げるが

ペダルを漕ぐ足は止まらない。


計測距離は18㎞、総飛行距離34㎞・・・

己の限界に抗い、着水をギリギリで耐え続け、それでも飛び続けた中村は勇気と感動を与えた



「桂ぁぁ今何キロ!?」編集

この声と共に着水、失神同然でボートに上げられた中村を祝福するかのごとく

電光掲示板は計測距離18687.12mを表示していた。


「クソォォォ!!・・・まだ・・・まだ飛びたかった・・・」


その後東京工業大学が8182.8mで着水した事で、優勝が決定する。


大会終了後に中村は本放送を待たずして渡米し、

本編やネットからの反響はアメリカで知ることとなった。


「まぁ、いずれは世界中でブームになるからな。」


中村、君は勇者だ。




編集

ちなみに桂とはボートで伴走していた同チーム機体設計の桂朋生さんの事で、中村を支え続けた。

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