桜通信
さくらつうしん
『週刊ヤングサンデー』に1995年から2000年まで連載されていた遊人原作の漫画作品。
単行本は20巻まで発売。OVAにてアニメ化(アニメーション制作:シャフト、全12話、1997年)、またセガサターン用ゲームソフトも発売された。
新・桜通信も存在するが、2巻で打ち切られている。
大学受験のために上京した受験生・因幡冬馬。第一志望は慶応大学! しかし、突然現れたかわゆい女子高生・麗の甘い誘いに心を乱され、慶応はおろか、志望校すべてに不合格。予備校生となった冬馬は、麗と同じ屋根の下、ドキドキのプチ同棲生活を始める。
『東京大学物語』のパロディ風の作品(オマージュではない)で、序盤から夢だと割り切りながら読む作品であり、夢に夢を重ねていく夢のドロステ効果作品。
氏のANGELなどで使われているストーリーギャグ漫画の用法が生かされており、
美咲子に嘘の電話番号を渡されて振られる下り(その後何の説明もなく交際を再開した)、鵠沼にアパートに放火されたり摩周に高速道路に連れ込まれたり麻薬漬けにされたり麗にお百度を強要されたりして死にそうになる下り(その後何の説明もなく生き返った)、決して羨ましいとは言えない暗い世界観(見どころはエロのみ)など、コンティニューとゲームオーバーとリセットを繰り返す内容。
最終回の大学合格(夢のまた夢)後に今までの内容の舞台を予備校ではなく一流大学に書き換えて振り返ってみると見えてくる裏テーマ(男性だけに都合がいいストーリーと見せかけて裏があり、性の乱れは男性だけが悪いようで違い、作中で批判されている学歴社会や児童虐待や拝金主義とも関係している)、最終回の主人公とヒロインではなく主人公とヒロインの転生体が再会したのを匂わせる二重の匂わせ描写からも、夢や妄想という目線で読む作品だと分かり、主人公の未来形ともメタ発言とも取れる自分勝手なモノローグがオチの伏線になっている。
作者が嫌々ながら描いていたこともあり、ストレスなく読めるラブコメディというよりはケータイ小説を男性向けにアレンジしたエロ漫画で、見どころは美少女たちとエロと上手い構成で、浪人生の主人公は狂言回し役である。
ヤングサンデーに廃刊の危機が迫っていた時期の作品である。
※声優はOVA版のもの。
因幡冬馬(いなば とうま)
声優 - 真殿光昭
主人公。大学受験に失敗した浪人生で、浪人中は美咲子のいる慶應義塾大学を第一志望にしている。あだ名はトンマ。
よくいるエロゲ主人公と別の意味で酷い主人公で、彼を酷い目に遭わせる摩周を応援したくなる程だが、OVAやサガサターンではその設定がすべてカットされてパラレルにされているため、声優ファンは安心されたし。
春日麗(かすが うらら)
声優 - 氷上恭子
メインヒロイン。冬馬より1歳下の従妹。東京の女子高生。幼い頃に母親と死別しており、幼い頃の些細な出来事がきっかけで冬馬が好きになり今に至る。
四葉美咲子(よつば みえこ)
声優 - 兵藤まこ
もう1人のヒロイン。慶應義塾大学の文学部生で、同じ大学の者との恋愛を求めている。良家の令嬢であり、許嫁がいる。絶世の美女だが、自分で自分を等身大の女だと思っている。
夏樹香美(なつき こうみ)
声優 - 笠原留美
麗の友人。サバサバした性格で、付き合う男に高学歴等のブランドを求める。
秋本美寿紀(あきもと みずき)
麗がバイトで行っていたデートクラブの女の子で、一番指名率が高かった。白血病を患っている。
秋本浩司(あきもと こうじ)
冬馬が通う予備校生。三浪目。老け顔で大阪弁。妹には似ていないが桃恵の兄ほどではない。後に工事現場で働くようになる。
摩周達彦(ましゅう たつひこ)
声優 - 安井邦彦
慶應義塾大学の経済学部生。美咲子に思いを寄せている。裕福な家の出で、父親に対しては従順な息子として振る舞い、余人の前では傲慢な顔を見せるなど、歪んだ性格の持ち主。