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税リーグ

ぜいりーぐ

Jリーグへの揶揄表現。主にJリーグにおいて、クラブチームのホームになっているサッカースタジアムが地方自治体の税金による支援を受けていることに由来する。
目次 [非表示]

勘違いされることも多いが、この言葉はネット界隈特有のものではなく、こちら記事で使用されものがネット界隈で広まったものである。


記事の冒頭を読んでみると、税金をJリーグに使わさせられた自治体が、Jリーグのチェアマンをなじる時に使った単語であることがわかる。


つまり、「税リーグ」とは、問題の渦中にいる自治体の人間が、実際にJリーグを批判するため、口にした言葉なのである。

概要編集

なぜ、「税リーグ」という言葉が広まったのか?編集

この言葉の由来となったのは、先述した日本経済新聞も記事なのだが、では、この記事が注目されたきっかけは何だったのか?


それは、NPBのチームとJリーグのチームが本拠地として兼用で使用していたドームから、NPBのチームが離れてサッカー専用になって以降、それまで黒字だったこのドームが、大幅な赤字想定になったことと、それが現実として起きてしまったこと、そしてそれらが大きなニュースとなったことが、大きかったと考えられる。


これによって「スポーツ施設は、Jリーグだけでは採算を取ることができない」ということも広く取沙汰されるようになった。そうなると、なぜ採算が取れないのか?Jリーグの本拠地となっている他のスタジアムはどうやって設営管理をしているのか?という疑問も当然付随して出てくることになる。


その結果、Jリーグの本拠地になっているサッカースタジアムの殆どが赤字経営をしていること、その赤字を税金で賄っていることもまた知られるようになった。


その後に、上記にある日本経済新聞の記事が注目を集め、「税リーグ」という言葉が広まっていった。



なぜ、「税リーグ」は存在しているのか?編集


指定管理者制度編集

まずは、なぜサッカースタジアムの維持するにあたって、税金を頼ることができるのか、という話から説明していこう。


それは、地方公共団体が公の施設の管理維持を民間の団体に委託する「指定管理者制度」を用いているからである。


サッカースタジアムにおいては、地方公共団体がスタジアムがある地域の自治体、民間の団体がスタジアムの運営会社になる。すなわち、スタジアム自体を保有しているのは自治体であるが、芝の保養をはじめとする、スタジアムの維持管理料を支払うべきは民間団体、つまり施設の管理者ということになる。即ち、「本来なら」自治体がスタジアムの費用負担をする必要はない。


では、こちらの資料で、かつて日韓ワールドカップで使用され、現在もJリーグクラブのホームになっているサッカースタジアムたちの経営実態を見てみてみることにしよう。


資料1ページ目の表の右端にある運用収支の収支差の項目を見るとわかるように、札幌ドーム以外のWCで使用されたスタジムたちは、収入より支出が多い、即ち赤字の状態で経営されていることがわかる。


そして、収支差に書かれている指定管理料とは、自治体が管理業者に支払う委託料のことである。指定管理料の財源はもちろん自治体が集めた税金である。


即ち、この資料はサッカースタジアムが指定管理料という形で、税金によって経費の一部を負担してもらっている明確な証拠なのである。


資料は2016年のものであるが、現在と大きく収支のバランスの変化が生じているスタジアムは、当時黒字だったが、ファイターズ移転を機に赤字に転落した札幌ドームと、指定管理料を受け取ることになりながらも赤字に転落してしまった味の素スタジアム以外確認されていない。


もちろん、現在のカシマスタジアムの様に管理料抜きでも黒字である可能性も否定できない。これはそもそも、管理料をどの程度受け取っているのか実績は公開されていないからなのだが、管理料抜きでも黒字になる施設は、管理料をどれくらい受け取ったかを公開しているケースが殆どであり、公開していないということは...という邪推に繋がってしまっているのが現状なのである。

更に、指定管理料の受取以外にも、自治体からスタジアムが支援を受ける様々な方法があり、後述するように、カシマスタジアムも上記資料には明記されていない部分で、黒字額以上の支援を自治体から受け取っていたことが発覚している。上記の「大きく収支のバランスの変化が生じているスタジアム」にカシマスタジアムが含まれていなのはそのためである。


ところで、指定管理料がスタジアムによって6000万〜6億円と大きな差があるのだが、自治体は、管理業者に支払う指定管理料の金額を、一体どうやって決めているのだろうか?結論から言えば、その年にスタジアムがどれくらいの損失、即ち赤字を計上することになるかである可能性が高い。


その一番の根拠は、上記資料の改計(収支差に指定管理料を足した金額)が指定管理料を受け取っているスタジアムのうち、ヤンマースタジアム以外は黒字3000万円以下という極めて小さな金額になることである。つまり、多くのサッカースタジアムは税金で赤字を補填しているのだ。


確かに、指定管理料金は年度の頭に民間に払うものなので「決算でこれだけ赤字になったから、その分を補填してくれ」と自治体に頼むことはできない。これを聞くと、先の話に矛盾しているように聞こえるだろう。しかし、指令管理料がいくらになるかは、地方公共団体と民間団体が協議をした上で決めていることは留意すべきだろう。


これは即ち年度の予算や収支の計画を組んだ上で、自治体に向けて管理料をいくらにしてほしいと交渉できてしまうことを意味する。つまり、管理料で「足りなかった分」を後々補填することは不可能でも「足りなくなる分」を予め補填しておくことは可能なのである。


仮に民間団体が要求した通りの金額にならず、予算や収支を修正するにしても、その金額がゼロでない限り、指定管理料というこの上なく確実な収入ありきの内容になる点は結局変わらないというわけである。


赤字の理由編集

Jリーグのサッカースタジアムにおいて、自治体が税金による赤字補填を行っているのは先に説明した通り。


しかしもっと根本的な部分で別の疑問が湧いてくる。なぜJリーグのホームスタジアムは赤字経営になってしまうのだろうか?


それは、Jリーグの試合数と、スタジアムの特性に原因があると言われている。


本来、自治体が所有するスポーツ施設は、試合のない日にアマチュアスポーツやイベント団体にスタジアムを貸し出して借用費を稼ぐことで、収益を得ている。アリーナや体育館は典型例だろう。


ところが、Jリーグのサッカースタジアムは、天然芝の養生のために、Jリーグの試合以外では、使用することができないスタジアムはかなり多く、Jリーグのホーム試合は1ヶ月に2回程度しかないため、それがスタジアムの稼働率とほぼイコールというケースも少なくない。実際、先の資料をもう一度見てみると、サッカーの選手権やプロの使用が多くて40日程度で、青少年やその他の利用日数に至っては1桁ということも珍しくないことがわかる。


芝の養生のやスタジアムの維持には毎日出費を強いられるのに、目ぼしい収益を得られる試合は月に2回、これでは大赤字も当然である。

陸上トラックが併設されているスタジアムに至っては、陸上のほうがサッカーよりも使用日数が多いというスタジアムも珍しくないため、これらは維持コストの低い人工芝を使用して、陸上に特化した競技場として運営したほうが、財政状態が健全になることさえも考えられる。(人工芝であっても、イベントのない日に一般客に貸し出してサッカーをする分には問題ない)


この赤字を、スタジアムの運営会社の貯蓄から払ってくれるのなら大きな問題はないのだが、大抵はそれでは賄いきることができず、残りをスタジアムを構えている地方の自治体が、税金を使って負担せざるを得ない。というのが、指定管理料の実態というわけだ。


しかし、冷静に考えると委託元の自治体が、委託先のクラブやスタジアム運営会社に管理料を払うこと自体は決して不自然ではない。サッカースタジアムだって自治体が保有している公共施設なのだから、自治体が赤字補填をすることが必ずしも悪いとは限らない。それなのに、なぜこのことが問題視されるのか?


結論から言えば、そもそもサッカースタジアム運営に指定管理者制度を用いることや、スタジアムを公共施設と見なすこと自体が間違っていると考えられているからである。


その理由は、次項で説明していく。








なぜ、「税リーグ」は批判されるのか?編集

上記のように施設にかかる費用の一部を自治体が負担しているのだが、それだけでなく、Jリーグのスタジアムは、建設時点でも自治体にその資金を捻出させていることも多い。


だが、実はスポーツ施設の建設と維持に税金が導入される事自体はさして珍しくない。

一例として、最も収益を得ているのスポーツ施設の一つであるNPBの本拠地球場を上げると、球場の建設時に税収が免除されたり、自治体が無償で土地を提供したり、建設費の一部を負担したり...というケースも多いし、指定管理者制度によって、NPBのチームが球場を運営していることだって珍しくない。


それでも、このようにJリーグが税金を使うことを揶揄する声が大きいのは一体なぜなのだろうか?


それは、一般的なスポーツ施設に税金を使う場合と違い、Jリーグのスタジアムには、税金を導入する正当な理由がないと考えられているためである。


そもそも、国や自治体が「税金」という名目で住民から私財を取り上げるという、一見すると乱暴なシステムが成り立っている理由は「受け取った税収で、住民に公共財や公共サービスを提供する」という形で、納税者も相応の見返りを得られるからである。


即ち、先の話の言い換えにもなるが


  • 提供されたものによって、自治体の収入が増えて将来的には住民の税負担が減る。または、より多くの公共財や公共サービスを提供できるようになる。

  • 多くの住民が提供された公共財や公共サービスの恩恵を受けることで、自治体の課題改善や活性化に繋がる。

のいずれかを満たすことで、初めてそこに税金を投入する価値が生まれると言っていい。


すなわち、スポーツ施設に税金が使われるのは、その施設が大きな売上を生み出して、そこから出費以上の法人税収入が見込める場合や、多くの住民の生活に役立つ公共性の高さを評価されたときなど、自治体にも上記の要件を満たしたメリットが存在する場合なのである。


ここでも、NPBチームの本拠地球場を例に考えてみよう。

東京ドームはプロ野球の試合とその他様々なイベントによって年間300日稼働している。

神宮球場はプロアマ合わせて野球を年間400試合開催。春と秋はプロ野球をナイター開催しながら、昼間はアマチュア野球にも貸し出しているため、1日2試合も当たり前なのである。

マツダスタジアムは、指定管理料が1200万円程度でありながら、毎年広島市に2億円以上の金額を納付している。大きな利益を得られた年は納付金が3億円近くだったケースもあり、これによってスタジアム建設時に広島市から取り付けた23億円の債務を10年足らずで完済。それ以降も納付契約は有効であるため、現在広島市は、マツダスタジアムによって毎年2億円以上の収入を得ていることになる。


しかし、Jリーグ規定のサッカースタジアムの多くは、自治体の支援額を差し引けば赤字経営であるため、法人税の収入も見込めない。ゆえに自治体には指定管理料どころか、それ以前に支払ったスタジアムの建設費すら回収する手段が存在しないのである。


それでも、多くの住民が使用する機会があれば、赤字に目を瞑ることもできるかもしれない。しかし、Jリーグのスタジアムは公共性が非常に低い。これは、前項で述べた通り、青少年やアマチュアがサッカーのピッチを使用している日数があまりにも少ないことからも否定のしようがない。


なにせ、先の例に加えて、横浜スタジアムにおいては、NPBのオフシーズンである1〜2月だけで、サッカーのアマチュア大会・イベントのために、10日前後球場を貸し出しているのだから。

つまり、アマチュアサッカーのイベントに限って言えば、NPBの球場が2ヶ月で開催した回数と、Jリーグのスタジアムが年間で開催した回数は大きく変わらないのである。この現状は、後者の場所を公共物と見ている者にとっては、相当不可解に映るだろう。

2024年現在、Jリーグのオフシーズンは年のはじめから2月の終わりまでというNPBと大きく変わらない時期であり、またJクラブが、横浜市に3つ、神奈川に6つ存在する。これらを踏まえると、本来ならクラブのホームスタジアムのほうが需要があっていいはずので尚更である。


よって、公共性の観点では、NPBで使われる野球場は無論、室内競技用のアリーナや体育館の足元にも及ばないと言わざるを得ない。

体育館の公共性とそれに付随する汎用性の高さは、読者諸君が学校の授業や部活動で、どれだけ学校や自治体の体育館を使わせてもらっていたかを振り返ってもらえれば、容易に理解できるだろう。


そもそも、指定管理者制度は「地方公共団体が、彼らが必要と考えている施設の維持管理を民間の団体に委託する。」ためものである。


施設が黒字経営であったり、高い公共性を確保できていたりすれば、「施設が自治体の財源になっているから。」「施設を使う住民が多いから」と、管理料を自治体が払っていたとしても、施設の必要性を説くことで、それを正当化することができるだろう。


実際、NPBチームの本拠地球場が民設民営でも黒字化できるほどの収益を得ているのに、自治体がそこに様々な支援をしているのは、先述した理由に加え「他の自治体から好条件の移転オファーがあっても、球団が簡単に離れないように厚遇している。」という事情もあり、自治体は球団と球場を必要な存在と考え、それらを失った場合、自分たちが大きな損失を被ることになると考えているわけである。先に述べた球団が移転した結果赤字転落したドームの話でも、球団移転の原因は、自治体が球団を冷遇したことだった。これなら指定管理料を払うのも筋が通っていると言えるだろう。


しかし、Jリーグのサッカースタジアムにおいては「クラブが必要としている施設の維持管理のためだけに、自治体が資金を提供をしているに過ぎない。」という実態が本来の目的とは正反対になっている有り様なのだ。


ゆえに、「自治体がスタジアムを保有し、民間企業にその運命管理を委託する」ことが自治体や住民にとって何の得になるのか、仮にメリットがないなら、自治体の財源、すなわち税金を無駄遣いしているのではないか、という点が疑問視されるようになり


「赤字な上に、Jリーグのチームしか使えない、その上月に2回の試合以外でほとんど使う機会がないサッカースタジアムに税金が使われるのはおかしい。」

「なぜ、一般利用が大幅に制限され、大半の日数を株式会社であるサッカークラブのために充てているているスポーツ施設を自治体が保有し、そこに税金を投入しているのか。クラブか運営会社が施設を保有して、自前で設営管理をするのが筋ではないか。」


という論調が増していった。



これらを踏まえると、冒頭の新聞記事のように、チェアマンが自治体の人間から「君たちはゼイリーグだ」と罵られるようになってしまったのも致し方なしである。


当然のことながら、仮に赤字であっても、クラブやそのスポンサーが、民設民営の自治体に頼らないスタジアムを使用しているのであれば、上記の問題は指摘されなかっただろう。実際のところ、そのような形を取っているスタジアムをホームにしているクラブも少数ながら存在しているので、Jリーグスタジアムの規約が厳しいものであったとしても、現在指定管理制度を用いているスタジアムが、同じことをするのは不可能ではないはずである。


これらのことから、これまで地方自治体がJリーグのために、新しいスタジアムを作ることを足踏みするようにもなっている。


「税リーグ問題」の本質は、Jリーグが税金を受け取っている事そのものでもなければ、その金額でもなく、「Jリーグが使った税金によって、金額相応の見返りを住民や自治体が受け取ることができていない」ことなのである。










外部の評論編集

ANA総合研究所編集

2024年8月、ANA総合研究所が、「Jリーグは誰のものか」という、研究報告書を公開した。


この報告書では、自治体が指定管理料でサッカースタジアムの赤字を補填していることや、Jリーグの試合数が少なくクラブのサッカースタジアムはあまり収益が見込めないこと、対費用効果の低さから自治体の新サッカースタジアム建設が暗礁に乗り上げていることなど、この記事でも説明した内容に触れているほか、Jリーグ全体の収入のうち、入場者収入の割合ががあまりに小さいこと、それを補填するために、Jリーグとそのクラブは広告収入に大きく依存していることなどにも触れている。


注目すべきは、Jクラブは、クラブそのものの赤字をスポンサーから、スタジアムの赤字を自治体から補填してもらっている実情を説明した上で、その実情を「夢のような構造」という皮肉としか捉えようのない言葉で表現している所だろう。


ANA総合研究所は、航空業界で培ったノウハウをもとに、様々な研究調査と並行して、産学連携事業や地域活性化支援事業をおこなっている企業であり、地方自治体に必要以上の負担を強いているJリーグの現状に我慢ならなかったとしても不思議ではない。


最後のページでは、Jリーグの問題点を簡潔にまとめた上で「プロスポーツとして成り立っておらず、広告媒体としても機能していない。」という辛辣な評論を記し「観客数と放送収入を今のうちに増やしていかなくてはいけない。」という結論で締めくくられている。


サッカースタジアムのたちの現状編集


花園ラグビー場編集

高校ラグビーの全国大会を開催し、2019年には、ラグビーワールドカップの舞台にもなった花園ラグビー場。


しかし、2020年の4月から、当時JFLのクラブだったFC大阪を中心とする事業者団体が指定管理者となっている。


なぜ、サッカークラブがラグビー場の指定管理者になれたのか。詳細はこのスポニチの記事に詳しいが、経緯を簡単にまとめると以下のような説明になる。


花園ラグビー場は、ラグビー・リーグワンの花園近鉄ライナーズの本拠地であり、その縁もあって以前は近鉄がこのラグビー場を所持していたが、諸事情で手放すことになった。


そこで、日本ラグビー協会は複数の団体でつくる「ワンチーム花園」で代わりの指定管理者になろうと手を挙げた。


しかし、それと同時にFC大阪も花園ラグビー場をホームグラウンドにしようと、指定管理者として手を挙げた。東大阪市は、両者がどのような形で設営管理を行うつもりであるかという提案内容を吟味した上で、指定管理者を選ぶこととなり、その結果、FC大阪に軍配が上がったのだ。


東大阪市は、FC大阪の提案の方が優れたものであったと判断したわけだが、その提案内容はどのようなものだったのだろう?


なにせ、先に話した通り、花園はワールドカップや高校の全国大会を開催してきた実績があるラグビー場である。即ち、日本の球児たちが甲子園をそうだと考えているように、日本のラガーマンにとって、花園ラグビー場は「聖地」と言える場所なのだ。


そこに、サッカーの公式試合の予定を組み込まなければならないのである。サッカーがラグビーを邪魔するような運営方法は、絶対に避けなかればならない。ラグビー界に大きな実害を与えることがJリーグの理念に明確に反している(詳しくは後述)となると、尚更のことである。なにせ、FC大阪は当時J3昇格を目指して奮闘していたのだから。


だが、幸いにも花園ラグビー場には第1、第2の2つのグラウンドが存在する。そこに目をつけたFC大阪は、サッカーとラグビーの双方が花園ラグビー場を使用できるように、次のような管理方法を東大阪市に提案した。


  • FC大阪は、第1グランドをクラブの試合で使用する予定はJ2に昇格するまで存在せず、少なくともその間はラグビーが最優先で使用できるようにする。

  • J2昇格まで、即ちJFLやJ3にいる段階では、FC大阪が第2グラウンドを整備して5000人観客を収容できるようにした上で東大阪市に寄付し、そこでJリーグのホーム試合を行う。

先の花園近鉄ライナーズの本拠地は第1グラウンド。彼らはこれまで通りホームグラウンドをラグビー最優先で使用することができる。即ち、FC大阪の運用方法は、ラグビー側にとっても、大きな不利益が出ない受け入れやすいものだったと言える。


ただし、これらは「FC大阪が掲示した条件通りの運用ができた場合」という、本来なら論を俟たない前提条件のもとで成り立つ話だった。


ところが、その前提条件がいとも簡単に覆されてしまったことが、読売新聞の報道により明らかとなった。


FC大阪が指定管理者となってから、第2グラウンドの地盤の状態が良くないため、その整備は予定より遅れることとなったのだ。


FC大阪が第2グラウンドをホームとする契約を結んでいる以上、その整備が滞ることはホーム試合環境にも大きな影響を及ぼすことになるため、FC大阪は可能な限り早く手を打たなければならない。


そこで、FC大阪と本来無関係なはずの第1グラウンドで「第2グラウンドの整備が終わるまで」ホーム試合が行えるように手配。そして、東大阪市は、2021年6月には整備を開始し、2023年3月までに完了する旨の覚書をFC大阪と交わした。


しかし、2024年現在、第2グラウンドの整備は、FC大阪が管理者となって4年経っても一向に進まず、スタートすらしていない。

おまけに、FC大阪は現時点でまだJ3のクラブに過ぎず、第2グラウンドを使わななければいけないはずなのに、実に9割のホームゲームが第1グラウンドで行われている。


そのせいでラグビーとサッカーで併用されている第1グラウンドの芝の状態が悪化し、ラグビーの試合がTV中継された際に、解説者から芝の管理の杜撰さに対して苦言を呈されたこともあった。


一方、第2グラウンドはJリーグの試合では使われていないが、学生ラグビー等で使用されている。それなのに、整備どころか老朽化して破損した観客席の修理すらまともにされていない。そのせいで怪我人が出たことから、東大阪の市議会でまでこの件が取り上げられる有様である。


これらを東大阪市側が厳しく追及すると、令和9年までに整備を行うとFC大阪は回答。


しかし、そのために必要な資金は40億円を超えると言われている。年間売り上げ約5億5000万円のうち、4億円以上をスポンサーに負担してもらい、それでも100万円程度しか利益を出せていないFC大阪が、そんな大金を用意できることなど、いったい誰が信じられるというのだろうか?


まずはスポンサーに支援金の増額を頼むことになるだろうが、FC大阪のユニフォームに最も大きくロゴが掲示されている東武トップツアーズの資本金は30億円。これだけで、40億円を工面することがどれだけ困難か理解できるであろう。


案の定、東大阪市の市議会議員でも、FC大阪が捻出できる資金はたったの5億円であるという話が出てくる始末である。再度念押しするが、「FC大阪が第2グラウンドを整備して寄付をする」ことを提案してきたのは、FC大阪自身であり、断じて東大阪市が強制したものではない。FC大阪は、自分たちが用意できる資金の10倍以上かかる整備を行うと提案したのである。このクラブのトップの金銭感覚や数値計算能力は、非常に怪しいと言わざるを得ないだろう。


これらのことが重なり「第2グラウンドの建設主体が東大阪市となって、FC大阪も費用を一部負担する」案を、やむを得ず東大阪市が提示する有り様。


FC大阪が善意の寄付として話を進めていた計画が、遂に東大阪市に自らが管理している施設の税負担を強いるという悪意の塊のような計画に変貌しようとしているのだ。


もしも、東大阪市が最初からこうなることがわかっていたならば、果たしてFC大阪を花園ラグビー場を指定管理者に指名したであろうか?


不可解なことだらけのこの現状の真相を、可能な限り納得いく形で説明しようとすると、以下のような結論になるだろう。


おそらくFC大阪は、最初から第2グラウンドの整備も寄付もするつもりはなかったのである。


発案の時点から実行意思のない計画を東大阪市に掲示することで、花園ラグビー場の管理権限を手に入れ、地盤に問題があることを言い訳に工事を進めず、代わりに第1グラウンドを試合で使い続ける。そして、クラブにとって不必要となった第2グラウンドの整備を放棄。これらの計画が、全て指定管理者の候補に名乗りを上げた時には既に出来上がっていたのである。


そうでなければ、クラブが捻出できる金額の10倍近い整備費を負担するという提案を平然とできたことも、一時しのぎで第1グラウンドを使っているのに、自分たちが使う予定だった第2グラウンドが事実上放置されていることも説明がつかない。


ちなみに、花園ラグビー場は、Jリーグのスタジアムのライセンス規格を満たせていない。観客席の屋根のカバー率が不足しているとのことである。

その上、Jリーグの理念の一つに「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」というものがある。サッカー文化ではない。スポーツ文化の振興である。

しかし、FC大阪の花園ラグビー場に対する行為は、ラグビーというスポーツの聖地を破壊し、その文化を衰退させるものであり、Jリーグの理念に対する冒涜と言ってもいいだろう。


Jリーグはなぜ、こんなサッカースタジアムにライセンスを付与しているのだろうか?もしも、規則と理念、双方の観点から見て、今の花園ラグビー場がJリーグをするに相応しい場所であるとJFAやJリーグが考えているのならば、笑止千万という表現も手ぬるい。


Jリーグは秋春制の移行が近づいており、ラグビーの試合日程が重なる可能性が高くなるうえ、FC大阪がJ2に昇格すれば、第2グラウンドを気にかける理由は何一つなくなる。花園ラグビー場と日本のラガーマンたちの未来は、FC大阪によって閉ざされてしまうかもしれない。


東大阪市はこの件の被害者ではあるが、一方で計画の妥当性を正確に評価できなかったという点。そしてそのせいでラグビー界に実害を与えてしまった点に関しては、明確に責任の一端があるだろうし、FC大阪だけが加害者というのも適切な言い方ではない。


しかし、契約を反故にしたFC大阪というクラブの責任がゼロになることは決してありえないこと。Jリーグの理念に反した行為に及んでいるFC大阪というクラブ対して何一つ咎めないJリーグの姿勢に問題があること。そして、指定管理者入札において、「理想的なだけ」の計画を掲示したFC大阪に敗れ、その計画を反故にされたラグビー業界は、この件においては全面的に被害者であること。この3つはハッキリと断言することができるだろう。


茨城県立カシマサッカースタジアム編集

鹿島アントラーズ本拠地であるカシマサッカースタジアムは、先でも触れた通り指定管理料0円でありながら、令和4年に6700万円以上の黒字経営を達成した。


しかし、それによって自治体が利益を得ることができたとは、とても言えないであろうことは、上記の自治体の資料を見ると明らかなのである。


リンク先の資料の3ページを見ると、令和1年までは、指定管理料を受け取り、スタジアムの修繕を自治体任せにしながらも、管理料以上の黒字すら出せずに苦しだ挙げ句、投資が重なり赤字に転落したことと、令和2年度から指定管理料がゼロになり、コロナ禍が重なったことからさらに赤字経営が続いたが、それでも令和4年には黒字に持ち直したことがわかる。


しかし、ここで一つ疑問が出てくるのではないだろうか。一体なぜ、自治体は指定管理料を突然払わなくなったのか?資料をよく見ると、既に答えが書いてあるのがわかるだろう。


要約すれば、自治体のコスト負担を減らすためである。令和2年から、指定管理料をゼロにした上で、これまで自治体が主導していたスタジアムの修繕を、自治体がスタジアムに委託する形に変更することになったのだ。


驚くべきことに、令和1年以前のカシマスタジアムは、指定管理料を貰いながら、自身の修繕は自治体に完全に任せていたという、税金依存の極致とも言うべき運営体制を敷いていたのだ。そして、修繕費自体も年々増加傾向にあり、4ページによると、平成26年には2億円程度だったもが、令和1年には17億円以上にまで膨れ上がっている。その上で5700万円の指定管理料を支払っているのに、スタジアムは赤字。これでは自治体が悲鳴を上げるのも当然である。


そこで令和2年から上記の体制に変更されたのだ。自治体がスタジアムを税金依存体制から脱却させようという意図がよく見える。


しかし、修繕自体はスタジアムがする事になっても、その費用は委託元である自治体が支援することも記されており、修繕費を税金から引き出すことになる点は以前と変わらない。


資料の3ページにある表の下に書かれた備考を読むと、令和4年の維持管理費には、修繕費約2億7695万円が含まれていることがわかる。つまり、カシマスタジアムはこれだけの金額を使って、施設の修繕をしていたというわけである。しかし、資料によれば、自治体も修繕費を負担しているはずである。では、どれくらいの修繕費を払っていたのか。


明確にいくらと書かれてはいないが、もう一度資料の4ページ目を見ると簡単に計算にすることができる。このページでは、県(自治体)と指定化管理者(カシマスタジアム)がそれぞれおこなった修繕内容と、それらの修繕にかかかった実績費をまとめた表が記されている。


令和4年にかかった実績費は約6億3343万円。先述したカシマスタジアムが支払った修繕費より明らかに多く、やはりスタジアム自身が全額負担していたわけではないことがよくわかるだろう。


そして、既に勘の良い方はお気づきだろうが、この2つの差額である約3億5648万円が自治体の支払った修繕費なのである。


即ち、カシマスタジアムは指定管理料とは異なる形で、6700万円を優に超える支援を自治体から受け取っていたのだ。


擁護しておくと、これでもカシマスタジアムの経営体質は大きく改善している。利用者収入はコロナ禍を除いて増え続けているし、スタジアムの修繕費を一部負担し、指定管理料を受け取れない状態になりながら黒字を達成することは、17億円の修繕費を全額自治体に負担してもらいながら赤字だった令和1年頃には考えられなかったことだ。


しかし、それでも自治体の税金に頼らずにはいられないのが、Jリーグスタジアムの運営なのである。

余談編集

公金支出には議会承認が必要であり、必ず名前のついた公文書が存在するため、クラブの赤字補填に税金が使われている場合、それを証明する書類があるはずなのだが、そういった書類が出てきたケースは一度もない。


ホームスタジアムにはクラブの資金導入されているので、紛らわしいが、あくまでも自治体が支払っているのは、クラブではなくサッカースタジアムの管理費であり、クラブの赤字は親会社やスポンサーが補填している。



関連タグ編集

Jリーグ

野々村芳和(現 Jリーグチェアマン)

宮本恒靖(現JFA会長)

田嶋幸三(前JFA会長)

札幌ドーム

Jリーグ秋春制

日本プロサッカー選手会(JPFA 旧・Jリーグ選手会)…事実上、御用組合となっている。

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