概要
小泉純一郎とは似て非なるタイプのポピュリズムと言え、より感情を露にし、白黒をはっきりつけることを迫る手法を特徴とする。
なかでも議会との対決・公務員批判・統制の強化は見る者に強烈なインパクトを与え、橋下の支持拡大に大いに結びついたとされる。
マスメディアにも積極的に働きかけて「ネタ」を提供し続け、カメラの前で職員達を吊し上げていく姿はとてもセンセーショナルに報道されまくった。
橋下は実務・選挙活動・著書・twitterなどさまざまな場で過激な発言を繰り返しており、例えば以下のようなものがある。
「今の日本の政治で一番重要なのは独裁。独裁と言われるぐらいの力だ」
「明確なルールによる規制がない限りは何をやっても構わない」
特に最後のスタンスは重要で、チキンレースのようでありながら弁護士の経験もあって最後の一線を越える事はまず無く、絶対に自分に有利な状況を崩さない安定性でさながらダークヒーローのように振舞った。
勝ち馬に乗り続けるために発言を突然180度変えることもしばしばであったが、これも弁護士流の巧みな話術で時にはぐらかし、時に開き直り、時に逆ギレするといった要領で正当化を続けた。
影響
当然の如く「ファシズム」が引き合いに出され批判されたが、己の名前と掛けた「ハシズム」として逆にキャッチフレーズにしてしまう始末。
元々言動の荒さが問題になりにくい土壌であった大阪での人気は絶大なもので、自身の立ち上げた「大阪維新の会」を通じて息のかかった政治家を次々と送り込むに至ると、在阪メディアの報道は大本営発表と化した。
最早大阪のみならず、関西全体が維新無しには語れなくなってきており、たとえ維新関係者がいないかごく少数の地域であったとしても、その存在を意識せざるを得ない環境となっている。野々村竜太郎のように、橋下と無関係でありながら「維新」を名乗るフォロワーさえ現れたほどである。
橋下の真の強さはここにあると言え、敵はいくらでも作るが味方も同じだけ作る。それを手のひら返しを交えながら絶えずし続けたのである。
これは現在で言う「炎上商法」にも通じるところがあり、定義は単純であるが成功例はそう多くない。特に政治の場では、小泉すら道半ば(後が続かなかった「小泉チルドレン」)で事実上断念しており、今の所維新が空前絶後の存在と言っても過言ではない。
橋下は2015年を以て政界を引退したが、その影響力は維新のメンバーを通じて今なお健在である。
維新的な政治手法の先駆者として鹿児島県阿久根市の竹原信一市長がおり橋下も一定の評価を下していたが、彼は「一線」を越えて裁判所を敵に回してしまい、メディアや市議会の掌握にも失敗した事から短命に終わっている。
名古屋市の河村たかし市長も同様の手法を取り、「減税日本」を組織する所までは成功したが、やはりメディア対応で躓き維新ほどの基盤は築けていない。
維新とは協力関係を結んだものの、体制構築が先か維新の乗っ取りが先かというレベルである。
東京都の小池百合子知事は「都民ファーストの会→希望の党」を一定の軌道に乗せ、メディア対応も当初は良好であったものの、政局に深入りしすぎて他党とその支持者から袋叩きに遭い、結局河村と同程度の存在にまで後退した。
立花孝志は完全にYouTuberのノリで「NHKから国民を守る党」を結成したものの、あまりに先鋭的すぎる手法で完全に「迷惑系」のそれと同じ扱いしかされなくなってしまっている。
そしてこれらの失敗が維新を引き立て、ある種のカリスマ性を与え続けるというサイクルが出来上がってしまっているのである。