もう殺した数もよく分からん。俺は、自分で言うのも何だが、極悪の部類じゃないか?
概要
作中に登場する異能者の自治組織・裏会の最高幹部である十二人会の元・第七客(正守の前任)。
人物
マジシャンのような格好にチョビ髭を生やし、長いマフラー(数種類所持している模様)を巻いている中年男性。正守のことは「ぼうや」と呼んでいる。十二人会のことは「完璧なまでに退屈な場所」と言っており、裏会にいた頃は独自の組織を作って若い世代の育成に注力していた(正守が夜行を立ち上げたのも無道の影響)。
「そんなに知りたいなら教えてやる。俺は、裏会の最深部で目の当たりにしたんだ-」
「圧倒的な存在というものを…!」
しかしある時、裏会の深奥で「圧倒的な存在」により完膚なきまでに叩き潰され、生まれて初めて劣等感を味わう。そして、「莫大な力を得ることで生まれ変わり、次こそ完全な存在となる」という思いのもと、裏会の訓練施設や若者達を潰して回る外道に堕ち、やがて神佑地の力に目をつけ、人間を捨てて妖となった。
紆余曲折の後に正守によって消滅されるが彼が持っていた重要な案件は裏会の謎を追求するために必要と考えた正守が奥久尼配下のまじない師の術により遺髪から霊体のような状態で復活させられる。
能力
魂蔵という特異な能力を備えた体質の持ち主で、この能力により妖混じりでないのにもかかわらず再生能力を持ち、絶界で消し去られても魂蔵の力が無くならない限りは無限に再生し続けるほど。
裏会時代では、重症を負っても数日でピンピンしていたほか、死亡を確認されて火葬・埋葬されているのにもかかわらず、墓から這い出してきたことが正守の知る限りでも2回ほどあり、「不死身の無道」と呼ばれていた。
戦闘においては、魂蔵の力を応用した赤黒い無数の球を生成する。この球は触れた相手の力や生命を吸収し、正守の絶界も触れた場所から侵食するほどであるのに対し、自身はこの球に触れても問題はなく、球の上に足を乗せて空中に浮かぶことができる。また、この球を平たく圧縮させることで飛ばしてカッターのように斬り裂いたり、複数融合させて巨大化させたりすることも可能。
妖となってからは、マフラーで相手を捕縛することも可能になった。
作中の動向
無道
「来ると思っていたよ、ぼうや」
ビルの間の神社から繋がる異界の主・淡幽が暮らす神佑地の力を求めて襲来し、正守と対峙する。若者達を殺して回ったことや人を捨てたことを尋ねられるが、攻撃を仕掛けた隙に姿を消す。その後は土地を荒らし回るが淡幽を見つけることが出来ずにいた。
しかし、社の柱を破壊したのにもかかわらず水面に映る柱は無傷であること、水面にのみ淡幽が映っていることに気づいて襲撃をかけるが、その場にいた良守に邪魔される。
無道
「君が件の正守の弟君か! だが- 邪魔しないでもらおうか。」
良守は応戦するが一蹴され、淡幽は捉えられて魂蔵の球を食らってしまう。
良守
「そいつが何したってんだよ!?」
無道
「この外の神社付近で最近、行方不明者が続出しているのを知っているかね? こいつは夜な夜な人をかどわかしては魂を抜くことを繰り返している」
淡幽
「何を…」
良守
「そいつをはなせよ、おっさん。俺は訳わかんねー話をする奴の言うことは、聞かねーことにしてんだ。」
自身の正当性を示すが、良守は淡幽を捕縛していたマフラーを結界で滅して言い返す。
無道
「なるほど。君はシンプルだな。迷いがない。あいつが劣等感を覚えるのもよく分かるよ。」
しかし再び良守を一蹴し、更には先ほどの話は全て嘘であることを明かす。
無道
「君を殺したら- あいつは悲しむかな? それとも喜ぶかな?」
そのまま良守を甚振り続け、土地を更に荒し回っていく。
しかし、突然自身の足に念糸が巻かれ、直後に水面から正守が絶界と共に飛び出してくる。
無道
「思っていたより、来るのが早かったぞ、ぼうや…」
正守によって完全に消し飛ばされるが、魂蔵の力によってすぐに再生する。
そのまま正守と激しい攻防を繰り広げ、淡幽に張り付かせていた球を自身の元へ引き寄せる。
無道
「どうだね、ぼうや。青年バージョンだ! 悪くなかろう?」
良守
「わ… 若返った…?」
正守
「ま… さか… あなたの目的は、若返ること… だと言うのですか!?」
無道
「違うな、それでは不完全だ。つまりだね- 全てを一からやり直すのさ。赤ん坊よりさらに戻って、この世に生まれ出る所から。」
その後は力を増した攻撃で正守の絶界を斬り裂き、更に苛烈な攻撃を加えていく。そんな状況の中、正守は良守に淡幽を連れて逃げるように命令するも、良守はそれを拒否する。
無道
「では特別に、その兄弟愛に免じてどちらか一方を見逃してやろう。」
2人のやり取りを聞き、気まぐれで彼らのうち1人を見逃そうと提案する。正守は良守の命を捧げることを選んだが、それは良守に絶界を発動させようとする正守の賭けだった。
しかし、無道はそれすらも読んで正守へ攻撃を仕掛け、正守は絶体絶命に陥ってしまう。
良守
「待てよ… 兄貴…‼︎」
無道
「何… 」
良守は黒芒楼と同じ絶界とは異なる何かを発動し、瞬く間に消し飛ばされてしまうも再生する。
しかし、彼らの戦いで土地が壊されていくのを見た淡幽は異界を閉じる決意をし、それに伴う異界の崩壊に巻き込まれていく。
そして、正守が絶界を発動して突っ込み、無道は自身の置かれた状況を理解する。
その後は土地から脱出しようと試みるが成功せず、奥の手として魂蔵の殆どの力を使って子供にまで若返って脱出を試みるも失敗する。
無道
「そんな… 」
正守
「往生際が悪いですよ無道さん。俺の質問に答えるなら、逃走に手を貸しましょう。」
その直後、無道は正守へ突っ込み、正守を捕縛して自身が変貌した理由、それによって覚えた強烈な劣等感を打ち明ける。
無道
「あと一つ教えてやる。神佑地を狙ってるのが俺だけだと思うな。」
「強大な力を得るのに一番の近道… 俺のやり方だけじゃない、方法はいくらでもあるんだ。」
「烏森などかっこうの標的になっているぞ。誰かに獲られる前に、自ら手を伸ばすのも一興じゃないか?」
正守
「どういう… 意味だ… 」
無道
「もう一度言う、やり方はいくらでもある。これが俺の最後の教えだ。」
「まあ、ここから出られたらの話だがな」
最後の最後に正守へ教えを残し、跡形もなく消滅した。