逢海日永
おうみにちなが
力とは、何だろうな…
作中に登場する異能者の自治組織・裏会の総帥。「王」とも呼ばれる。
普段はあまり表には出ず、作中で十二人会の会合にも出席した描写もない。
裏会総本部が置かれる最上級の神佑地・覇久魔(はくま)の異界にある「下の城」に住まう。
正統に成れなかった者の集まりとして本家の異能者から異端扱いされがちな裏会だが、総帥だけは本家の当主よりも立場が上である。
城の住人からは「王様」と呼ばれており、裏会では異例とも言える人間味のある穏やかな性格から、地位を抜きにして慕う者も多かった(配下である零からは友達扱いされ、専属まじない師のミチルは彼を愛していた)。
異界の入り口は宝物庫の壁に描かれた双頭の蛇の絵画だが、一般には秘匿されている。
彼と対面できるのは総帥直属の配下と弟である裏会最高幹部・夢路久臣だけであった。
人の心を読める能力により精神を病んでおりほとんど引きこもりのような状態。
かつて、無道を嫉妬させた「圧倒的な存在」とは日永の事である。
日永は幾度となく自分に挑んでくる無道を殺害し、その力に嫉妬した無道は外道に身を堕とす事となった。
しかし、無道の推薦を受け墨村正守を裏会最高幹部に押し上げた事も判明しており、二人の人間関係が悪かったわけではない模様。
強大な精神支配系の能力。本性は黒い海蛇のような精神体であり、他の人間に次々と憑りつく事で事実上の不死を可能としているが、女性に取り憑くことは出来ない模様。
回想時では土や岩を操る自然支配系能力者である老人を器にしており、無道を叩き潰したのもこの器。
復讐に憑りつかれた時点では「遠」という名の少年の体に乗り換えていた。遠は異能を持っていないが、彼の妹・遥が魂蔵持ちであるため、彼女が蓄えた力を「共鳴者」として使用することが可能。
当初より裏会最高幹部でさえ手も足も出ないほどの実力を誇っていたが、夢路への復讐の為に神佑地狩りを行い、さらに強大な力を獲得する。
余程の術者でも同時では10人が限界とされる精神支配を無制限に行使する事ができ、その力は単身で裏会総本部を制圧できるまでになっていた。
夢路(月久)への復讐の為に、月久の命はもちろん自身が創設した裏会を含む「月久が生きた証全て」の破壊を目論み、零、参号、水月、遥のみを連れて抜け出した(当初ミチルも連れて行くつもりだったが拒否された)。
七郎を雇って裏会の施設の破壊や要人の殺害を行った後、多くの結界師を育てて神佑地狩りを行い力を蓄え、嵐座木神社で扇本家の戦闘員の約三分の二を手中に収める。その後裏会総本部を襲撃し、裏会に残された幹部をはじめとした構成員ほぼ全てを手中に収め裏会を支配し復讐を果たす。
しかし手に入れた力に違和感を覚え、最後はさらに強大な力によって自身の全てを消し去らせる事を望み、正守らの到来を待つことに決める。その後、零へと乗り換え生き延びていた月久の襲撃を受けるが、この時点でも総力では依然として月久を超えており、裏会総本部に放っていた海蛇を全て自分の元に戻す事で逆に撃退する。
そして、月久を撃退した後、そこへ現れた正守に対して自身の過去や復讐の真相を話す。
過去と復讐の真相
少なくとも400年前から生きていたようで、ある時に天女の噂を聞いて龍仙境を訪れていた。
そこにいたのは水月で、彼女に一目惚れした当時の日永は精神支配の能力を使えば容易く手中に収めることができたのにもかかわらず、それを使わずに必死に口説き落として夫婦となる。
その後は彼女の願いで各地を旅する日々を送っていたが、ある日、2人の運命を大きく変える出来事が起こってしまう。
2人は異能者たちが催す怪しげな宴の現場を偶然見てしまい、それに気づいた異能者たちは彼らを口封じで殺そうとする。
しかし、異能者のリーダー格はそれに待ったをかけ、2人に接触する。
そのリーダー格は月久であり、月久は2人の記憶を書き換え、日永を自身の兄に仕立て上げ、水月を自身の妻にしてしまう。
つまり、逢海兄弟は実の兄弟ではなかった。
その後は間時守の協力を得て月久と共に裏会を創設し、献身的な月久に感心して業務を任せていたが、偶然水月に接触したことで実は月久が日永を裏切って記憶を書き換えており、妻の水月を寝取ったりとやりたい放題をしている事が発覚。
その真相に絶望した日永は自身らの痕跡である裏会を含む全てを消し去ることを決意した。
かつての妻・水月は自身に復讐の念を呼び起こさせた存在として「復讐の最後に殺す」と宣言していたが、彼女のことは許すことはできなかったとはいえ、月久に弄ばれた最大の被害者とも捉えていたようで、実際は水月のために復讐を行っていたことを明かした。
最期
過去を話し終えた後、突如現れた“眺める者“が遥の命を全て飲み込んでしまい、自身の命と引き換えに遥を救おうとするも相手にされず、さらには水月が遥のために命を捧げることになってしまったため絶望する。
日永
「もう… この子に身体を返したい。」
「私はもう… 人間達の前に立っているのが恥ずかしくてならないんだ…‼︎」
自分の愚かさ、矮小さを思い知らされた日永は遠に身体を返す決意をし、彼らの身柄を正守に頼む。
日永
「そもそも、お前を妻に望んだところから… 私には出過ぎたことだった。」
「すまない。」
水月
「謝らないで‼︎」
「あなたを選んだのは私です‼︎」
そして、自身と関わったことで運命を大きく変えてしまった水月に対して謝罪するが水月は反論し、その答えを聞いた日永は立ち上がる。
日永
「最初から殺すつもりなんてなかったよ」
水月
「待って…」
最期は水月の制止も聞かずに月久を巻き込んで、正守の絶界の中へ消えていった。
水月
「本当に… バカな人…!」
正守からは「人の上に立つ器ではないが憎みきれない」と評されており、事実として水月や他の関係者への思いは良くも悪くも人間臭いものであった。