その闘いは、
時を超え、
場所を変え、
歴史の陰で絶え間無く続いていた。
そして紡ぎ出される新事実
概要
テレビアニメ『BLOOD+』のメディアミックスの一環として制作された作品の一作。
同作品の第7話の終了後、ベトナムへ渡るまでのとある一夜に発生した事件を描く、オリジナルストーリーとなっている。
ゲームジャンルはアクションアドベンチャーで、プレイ人数は1人。
ストーリーは、戦闘に際して刀と体術を用いる小夜パートと銃を用いる青山パートのシナリオが、交互に切り替わりながら進行する。
ディレクター・シナリオライターはグラスホッパー・マニファクチュアの須田剛一が務める。
須田の手掛けた作品では『ムーンライトシンドローム』以来の日本を舞台とした現代劇であり、同作で描かれた「ニュータウンという地場の中で人が狂っていく姿」を翼手という存在に置き換え、『BLODD+』の世界観で再現するという試みでもある。
原作アニメの監督である藤咲淳一は須田に「好きなように作ってください。ただ、グラスホッパーさんなんで、やり過ぎないように」と言っていたという。
前月には『BLOOD+ 双翼のバトル輪舞曲』が発売されているが、
本作は戦闘のみならず探索要素も備えているなど様々な点が異なる。
また、『双翼のバトル輪舞曲』は原作アニメの絵柄を3Dで表現していたが、
本作はトゥーンレンダリングを用いており、グラスホッパー・マニフェクチュアが過去に開発した『killer7』風のタッチとなっている。
これはバンダイナムコゲームスからの「『killer7』のタッチが『BLOOD+』に合っている」という話を受けてのものである。
しかしグラスホッパー・マニフェクチュアは『killer7』のPS2版にはほぼ携わっていなかったため、PS2向けに新たに開発した描画エンジンを使っている。
アニメ版にある残酷描写は、対象年齢を下げるために大幅に抑えられている。
具体例として、翼手の血の色が赤から黄色に変更されており、
刀で肉体を切断するといった表現も皆無に等しく翼手の部位破壊はその部分から泡が霧散するような演出で表現され、実際には部位は破壊されない。
これは「土6のアニメはティーンエイジャーが観る作品である」という須田の意向によるものである。
これと同様の傾向は、『双翼のバトル輪舞曲』でも見られる。
ゲームシステム
ゲームの流れ
ストーリーは小夜と青山の章を交互に繰り返しながら進行する。
各章は翼手化して対決するキャラクターの名前表示と共に始まり、アドベンチャーパートによる探索に移る。
アドベンチャーパートとクリアすると、翼手との対決であるバトルパートに移行する。
翼手を倒すと章クリアとなり、セーブを挟んでもう一方の主人公の視点に移る。
ごく一部、バトルパートの無い章もある。
ゲームの難易度は「adventure mode」と「action mode」から選択可能。
前者は難易度が低く、ストーリーを追いやすい。後者は難易度が高く、プレイヤーの腕前を求められる。
アドベンチャーパート
学園内や市内を自由に歩き回るパート。
NPCに話しかけたり目的地に向かうなどで条件を達成するとストーリーが進行する。
ストーリーが進むと各所のマンホールから「実験動物体」との戦いに挑めるようになり、
ストーリー進行には実験動物体の全滅も必須になる。
各章には任意で行うサブイベントが用意されており、クリアするとコスチュームが手に入る。
手に入れたコスチュームは小夜、青山それぞれの拠点で着替え可能。
小夜は様々な学校の制服、青山はTシャツが用意されている。
実験動物体との戦いで受けたダメージは自動販売機で回復可能。
セーブは小夜の場合は随所でチェロを弾いているハジに話しかけて、青山の場合は随所にある喫煙所で赤間に電話して行う。
このパートの導入は『ムーンライトシンドローム』でやれなかった「フルポリゴンの現代の街をフリーランニングで歩き回る」を実現するという意図もある。
バトルパート
敵との対決パート。
ボスキャラクターである翼手の他、雑魚モンスターにあたる実験動物体との戦いになるとこのパートに移行する。
小夜は刀と体術、青山は銃撃で敵にダメージを与えていく。こちらの体力が無くなると敗北してゲームオーバーとなる。
コンティニューは無く負けた場合はタイトル画面に戻り、セーブした場所からやり直しとなる。
翼手は部位を一つずつ破壊していき、最後に後述のトドメモードを経なければ倒せない。特定の仕掛けを用いるなどの手順が必要な場合もある。
破壊部位や別の手順は敵の体力ゲージのアイコンに表示される。
小夜は普通に攻撃しても翼手にダメージは与えられず、攻撃を当ててBLOODメーターを溜め、覚醒モードに入らなければならない。
覚醒モードになると素早い連撃が可能になり、翼手の部位にダメージを与えられるようになる。
青山は攻撃を当てればダメージを与えられる。
敵の体力を削り切ってもすぐには勝利にはならず、特定のタイミングで出るアイコンに合わせて△ボタンを押し、トドメモードに入らなければならない。
青山の場合は即座に戦闘が終了するが、小夜の場合は画面に表示された通りのコマンドを入力する必要があり、成功すると翼手は結晶化して崩壊し、完全に倒せる。失敗すると戦闘が続行する。
実験動物体は翼手よりも弱く、普通に攻撃を当てて体力を削れば倒せる。
実験動物体を全滅させると戦闘が終了し、操作キャラが成長する。
2周目
一度エンディングを迎えると、タイトル画面から2周目が選択可能になる。
2周目はタイトルが『BLOOD+ PERFECT KISS』に変化し、小夜と青山の初期の服装も変わる(小夜は制服が冬服に、青山はスーツではなくプロテクターで身を固める)。
一部イベントや演出、エンディングも1周目とは異なったものとなっている。ただし、1周目のモードに関わらず難易度は強制的に上昇した状態で始まる。翼手のカラーリングも変わる。
ブルーマウンテンモード
2周目をクリアすると解禁されるモード。
青山を操作して作中の翼手を(小夜のみが戦った翼手や青山が倒せなかった翼手も含めて)順番に倒していく。
ライフの回復は無く、負けるかラストボスを倒すと終了。このモードでは青山も体術やハジガードが使える。
クリアすると小夜のコスチュームが解禁される。
あらすじ
S玉県の式ニュータウン付近のハイウェイにて、猛スピードを出していた乗用車がトラックと衝突事故を起こす。
壊れたトラックからは裸の少女が現れ、川へと身を投げた。
翌日、公安警察の刑事・青山轟が例の事故現場近辺の河原にて、ホームレスと思しき島村耕一に聞き込みをしていた。
青山は数年前に怪物にパートナーを殺され、その仇を追い求めていた。
そして式市では化物による事件が頻発しており、その情報を基に青山は式市にやってきたのだった。
一方、その怪物が翼手であるという情報を得た「赤い盾」は小夜を式市に送り込んでおり、彼女を乗せた飛行機が丁度到着するところであった。
式東高校に一日限りの編入で潜り込んだ小夜は、同じクラスの福岡ツバサと友達になる。
しかし街には既に数多くの翼手が存在し、学園内でも翼手化した生徒や教師と遭遇する。
これらを切り伏せた小夜は、タイムリミットとなる翌日の夜明けまでに式市の翼手を全滅させるべく街を奔走する。
青山も翼手と戦いつつ仇敵である翼手・秦一郎を追い求めて捜査を続けるが、二人の戦いはやがて街を覆う巨大な闇を顕にしていく。
夜明けが迫る中、とうとう青山は秦を打ち倒すが動き出した黒幕によって撃たれてしまう。
一方の小夜は最後の翼手を追い詰めるがそれはツバサであり、悲壮な戦いの末に倒す。
青山は傷付いた体を押し、実は黒幕であった島村の待つ河原に殴り込むも、シュヴァリエである島村にはダメージを与えられず敗れる。
だが、そこに小夜が駆け付け、後を託して息絶える。
小夜は他人を虫けらのように扱う島村に激怒し、式市での最後の戦いに挑む。
(1周目)
しかし勝利した直後に小夜は気を失い、「OMORO」の店先で目を覚ます。
カイとリクによると小夜はずっと寝言を言っていたという。
小夜は恥ずかしがりつつ、今まで見ていた夢を思い出として残しておく。
(2周目)
島村を倒した小夜はもう動かない青山とキスを交わし、そして気を失う。
「OMORO」の店先で目を覚ました小夜は「リーゼントのおっさんとキスしちゃった」と言い出し、カイは卒倒する。
そしてあの河原にて青山は目を覚まし、小夜との出会いと自分が無駄死にではなかったという事実に満足しながら、しかしやはり死にたくはないという本音も漏らしつつ光となって消えていく。
主要人物
原作『BLOOD+』の主人公で、本作の主人公の一人。沖縄のコザ商業高校に通う高校生。翼手を掃討する決意のもと、式東高校に編入生としてやってきた。刀を振るって翼手と戦う。
ゲームオリジナルキャラクターで、本作のもう一人の主人公。
公安の特殊広域捜査を担当する刑事だが長いリーゼント頭にサングラスという容貌や、その破天荒な行動からおおよそ刑事には見えないが正義感は強く、悪を許さない熱い心を持つ。
数年前より、頻発する不可解な事件を担当。パートナーの紅を化物(翼手)に殺されており、その際に自身も半殺しにされている。
化物の出現情報を独自に入手し、式ニュータウンへやってくる。
小夜とは別視点から謎を追う。
用語
翼手
人間にデルタ67を投与することによって生まれる怪物。
小夜の血が体内に入ると体が結晶化し、崩れてしまう。
式市の翼手は佐分利エレクトロニクスがデルタ67を改変して独自に研究開発を行い、
それによって変異させられたものであり、沖縄で小夜が遭遇した翼手とは異なる性質を持つ。
いずれも人間の頃の原型を全く留めていない。
デヴィッド曰く「不完全な翼手」であり、個体差が大きく能力差も激しい。
よほど強力な個体でなければ重火器で瀕死に追い込むことも可能であり、普通の人間である青山でも戦闘で勝てるようになっている。
いずれも大なり小なり心に暗部を抱えており、救いを求めて翼手となった者も少なくないが、翼手化によってその暗部は狂気を帯びるようになっている。
佐分利エレクトロニクス
式市の財政を支え、牛耳る巨大企業。
母体は半導体事業。
ニュータウンの住人の7割が関係者であり、警察ですら頭が上がらない。
前年に新規の事業部が立ち上がったがその内容は不明で、
しかしエース級の従業員が配属され、収益も隠蔽されている。
「赤い盾」はこれを翼手関連であると睨み、赤間を通じて青山に捜査させている。
新事業の実態は翼手の研究であり、薬害実験で多くの市民を汚染している。