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概要

infinityシリーズの第2作目。正式名称は「Ever17 -the out of infinity-」

2002年8月29日にプレイステーション2版とドリームキャスト版が発売し、追加要素があるプレミアムエディションやリメイクされたXbox360版などが発売された。

2025年3月6日にはXbox360版をベースとしたリマスター版がNintendoSwitch/プレイステーション4/Steamで発売予定。

なお、この記事はクリア済みの既プレイ前提によるネタバレ満載で書かれているため、未プレイやネタバレを知りたくない人は見ない事をおすすめする。

また、キャラクターデザインを担当した滝川悠氏(上記の絵)の作品もネタバレ前提なので注意する事。

物語

西暦2017年5月1日。様々な法律の改正や技術の発展が行われた近未来の日本。

突如、楽しげな歓声を切り裂くようにして耳を劈くような緊急避難警報が響き渡る。折り悪く、施設から逃げそこなった1人の青年と1人の少年。視界には誰も居らず、静まり返るテーマパークに不気味な咆哮が響き渡る。怒涛のごとく襲い掛かる鉄砲水。浸水を防ぐため自分たちごと閉じ込めようとする防水隔壁。深海に造られた海洋テーマパークLeMU、主人公・倉成武とヒロインたちはLeMUの中に閉じ込められてしまう。何とか一命をとりとめ脱出経路を探すうちに、同じ境遇にある生存者たちを発見する。閉じ込められた生存者は、6人。

LeMUの完全圧壊予想時間5日後、閉じ込められた生存者達は地上への脱出の方法を探す。

ゲームの特徴

ゲームは「倉成武」と「記憶喪失の少年」の二人を主人公とし、二つの視点で物語が進行していく。

それぞれのルートで各グッドエンドを見ると、最終ルートが解放される。

登場人物

主人公

ヒロイン

用語

LeMU

海中に宇宙ステーションのような建造物を沈めた巨大海洋テーマパーク。LeMUは全部で4つの階層に分かれており、まず浮島であり入り口でもある地上部分のインゼル・ヌル (Insel Null)。第一階層であり地上への直通部分のエルスト・ボーデン (Erst Boden)。第二階層は種々のアトラクションが存在するツヴァイトシュトック (Zweitstock)。レムリア大陸関連の展示品が並ぶ第三階層、ドリットシュトック (Drittstock) の全4階層である。この施設の主な目的は遊園地としての用途である。LeMUは施設内の気圧を海中の水圧と同じかそれ以上に保つ「飽和潜水仕様」を採用しており、この施設が水圧で潰れたりすることが絶対にないと保障している。またLeMUという名前にもあるように、この施設のモチーフは太古海中に没した人類発祥の地とも謳われる「レムリア大陸」である。海中ゴンドラや浮力エレベータなど、海の中に建造されたことを十二分に生かす構造となっており、作品世界において最も話題になっているテーマパークである。

レムリア

レミュール(キツネザル)が海を隔てて分布する理由を説明するために提唱された架空の大陸。プレートテクトニクスの確立により時代遅れの空論となったが、LeMUはこれをテーマパークのイメージソースとして採用。ドリットシュトックには「レムリア遺跡」コーナーが設けられているほか、マスコットキャラクターの「みゅみゅーん」もレミュールをモチーフとしている。

リメイク版では実際に古代文明の遺跡が発見されており、伝説にあやかって「レムリア文明」と名付けられている。LeMU内には本物の遺物の一部が展示されている。

RSD (Retinal Scanning Display)

原作版における空の投影方法。対象の網膜にレーザー光で画像を描画する。

ミラージュ

リメイク版における空の投影方法。視神経に直接信号を送り込んで映像を認識させる。

ライプリヒ製薬 (Leiblich Medizen)

本社をドイツのフランクフルトに構える日独合弁企業。事業内容は製薬にとどまらず多岐にわたり、各国の公的機関やマスコミに強い影響力を持つ。LeMUの経営母体でもある。

裏では人体実験や拉致監禁、生物兵器開発などの非道な行為に手を染めている。

IBF (イーベーエフ、Institufuer Biologische Forscung)

水深119メートルの海底にある生物研究所。ライプリヒが極秘の研究を行うために建造したもので、そもそもLeMUはこの施設を偽装する目的で真上に造られたものである。

TBウイルス (Tief Blau Virus)

熱水噴出孔から発見された極めて毒性の強いウイルス。この研究のためにIBFが造られ、兵器への転用が研究されていた。

2017年のLeMU崩壊は、TBウイルス漏洩から逃れようとした職員が既定の手順を踏まずに脱出しようとしたことで起きたものである。その後拡散したウイルスは全世界で数千人から数万人規模の犠牲者を出し、その中には優春の母・ゆきえも含まれていた。しかしライプリヒは自らの責任を隠蔽し、真相を闇に葬った。

海月の 虚空に秋涼し 時鳥(うみつきの こくうにすずし ほととぎす)

優春がコンピュータのパスワードに用いている俳句。リメイク版ではレムリア文明の遺物にも同じ句が刻まれている。

この句はアナグラムになっており、かな文字を並べ替えると「ホクトのこすうみ、すぎしときにつうず」となる。また、漢字には登場人物の名前が織り込まれているが、これは優春が仲間たちと娘への思いを込めて詠んだからである。しかし製作者が意図した名前を完全に言い当てたプレイヤーはいなかった[10]。特に「時鳥」が武を意味するというのは難解であり、プレイヤーたちの間では「時を駆ける鳥 = BW」という解釈が生まれた。

キュレイウイルス

前作『Never7』に登場した「キュレイシンドローム」の要素を継ぐ物語の鍵。キュレイ (Curé) とはフランス語で司祭を意味する。

原作版ではレトロウイルスの一種。これによって遺伝子情報を書き換えられた感染者は、治癒力が向上し老化も停止するため、半ば不死のような存在「キュレイ種」となる。その反面紫外線には弱くなるが、赤外線視力も獲得するため暗所での活動にも困らない。

リメイク版では特にレトロウイルスという言及はなく、代わりに強固に結びつく未知の炭素原子を含むとされる。日光への脆弱性が原作版より強調されているほか、「強い意志によって肉体を変容させる」という特性が加えられた。赤外線視力はつぐみ個人が獲得した形質であり、キュレイ種共通の能力ではない。

ウイルスは体外に排出される細胞には関与しないため、生殖細胞から発生する子供はキュレイ種にはならない。ただし書き換わった遺伝子情報は受け継がれるため、つぐみの子であるホクトと沙羅は赤外線視力を有している。

キュレイウイルス自体が希少な存在であるが、つぐみは全身の遺伝子が完全に書き換わったこの世に唯一の例である。そのため彼女はライプリヒ製薬に監禁され、実験漬けの日々を送ることになったのである。

劇中、武編の終盤でTBウイルスに感染したため、つぐみが自らの体内で生成した抗体を投与した。そのため武たちはキュレイ種となり、優と少年は遺伝子が書き換わる間の5年ほど加齢した後に老化を停止するが、人工冬眠下にあった武とココは容姿の変化がない。

第3視点

打越鋼太郎がピョートル・ウスペンスキーの著作『ターシャム・オルガヌム』から発案した概念。同書には「n次元の世界を認識するにはn+1次元の視点が必要」という記述がある。

3次元上に存在する者は2次元的視覚しか持ちえないが、空間内を移動することで3次元自体を知覚する。人間は両目を用いることで2次元的視覚を2つ得て、擬似的に3次元を見ている(立体視)。すなわち、4次元時空を自由に移動できる存在ならば3次元的な視覚を有しているということであり、両目にもうひとつ「第3の眼」が加われば擬似的に4次元を見て時を越えた知覚が可能になるという仮説が成り立つ。

劇中の「第3視点」という言葉には2種類の用法がある。ひとつは、文字通り3次元空間を俯瞰できる高次元からの視点のこと。そしてもうひとつは、そのような視点を有する高次元の存在である。この存在のことを劇中ではブリックヴィンケル (Blick Winkel, BW) と呼んでいる。BWはゲーム世界の出来事を時系列に縛られずに俯瞰できるメタフィクション的な存在であり、いわばプレイヤーそのものに近い。『Ever17』の初期案ではより直截的に「BW = プレイヤー」という表現だったが、「プレイ中に自分の顔が見えたら気持ちが萎えてしまうのではないか」という指摘があり、最終的にはプレイヤーであるとも高次元の住人であるとも取れるあいまいな表現に落ち着いている。

登場人物の何人かはBWと交信し、その視点を借りることで時間を超越した知覚が可能である。ココがその代表で、しばしば不可解な発言するのは未来を知っているからである。またホクトは少年編からココ編に至るまでBWと意識を共有しており、それが原因で記憶喪失になった。BWはホクトとの融合時に初めて劇中世界に現れたわけであり、その世界の中では新たに誕生したも等しいから記憶が白紙状態なのである。そのほか武や桑古木にも第3視点能力の素質がある。原作版では優春もBWと会話しているが、リメイク版の彼女にはBWの声が聞こえなかったため、BWは古代までさかのぼって当時の能力者の力を借り、遺跡に優春向けのメッセージを残すという壮大に迂遠な方法で情報を伝えるしかなかった。

第3視点発現計画

BWのメッセージを受け取った2017年の優春は、武とココがIBFに取り残されていることを知る。しかしすぐに救出に向かえば「2034年に現れたBWが武たちの状況を知り、過去に知らせに来る」という未来もなくなり、タイムパラドックスが発生する。そのため優春は、再建されたLeMUでBWに聞かされた通りの2034年の出来事を再現するため、遠大な計画を遂行することになる。

まず優春は、娘の優秋が2017年の自分と同じ行動をとるように誘導して育てた。計画の実行時期が迫るとつぐみ・沙羅・ホクト向けに「LeMUに来れば家族に会える」という情報を流して呼び寄せ、計画が開始されると桑古木は武の偽物を演じた。こうして2017年をそっくりなぞるかのように2034年の事件が起きたのである。

原作版では、2つの時代を1つだと錯覚させることで劇中世界にBWを召喚している。たとえば3次元空間の視点と2次元平面に描かれた図形を結んでも、でき上がるのは3次元の立体(錐体)であり、2次元の者には干渉できない。しかし2次元に描かれたのが直線であれば、3次元の視点と結ぶことで完成するのは「平面」であり、3次元視点はその一部として取り込まれている。同様の理屈で、高次元に位置するBWを劇中の3次元世界の一部として取り込めるように、異なる時間をひとつに重ねたかのように見せたのである。

リメイク版でのBWの召喚は、BW自身がもたらしたオーバーテクノロジーによる装置で行われている。BWがホクトと同化し、劇中世界の人間としてエミュレートするために両時代を混同させる手順が必要だったとされている。

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