概要
乗り物(特に航空機や宇宙船)に異常事態が発生した時、乗員(或いは乗客)を脱出させるための装置。
一般的には射出座席などの「乗員を機外に放り出す装置」を指すが、旅客機の非常脱出用シュートとか或いは原始的な手法といえるパラシュートも広義の脱出装置に含まれる。
また、船舶に積まれている救命ボートや浮き輪も脱出装置の一種と言えるかも知れない。
地上の乗り物においては自動車や鉄道車両に積むことがある(窓ガラスを割るための)緊急脱出用ハンマーも、ある種の脱出装置といえる。
SF世界においては宇宙船の事故時に脱出するための「カプセル型の小型宇宙船」的な脱出装置がおなじみ。肝心の脱出装置が作動しなくてピンチに陥る、残された脱出装置を奪いある、或いは「俺はここに残る、お前は脱出しろ」と主人公がパートナー共々押し込められる、脱出したのはいいがそのまま異次元や遠い宇宙を漂流してしまう、脱出カプセルで地球に流れ着いた・或いは地球人に救助された異星人の子供が「地球人の子供」として育てられる…など使い道は様々。
脱出装置の形態
主に航空機用のものに関して記述する。
最もポピュラーな脱出装置の形。座席を火薬ロケットや圧縮空気などで打ち出し、パラシュートで降下する。オメガ11の友。
- モジュール式脱出装置
コクピットなどの機体の(居住・搭乗用スペースとなっている)一部分を切り離し、そのまま脱出装置として使用するもの。高高度を飛行する・或いは極超音速で航行するなどの過酷な条件で運用される航空機に主に採用される。フィクションではR-TYPEシリーズに登場するR戦闘機・R-9Cがキャノピー部分を切り離すことによりモジュール式脱出装置の体裁を取る、機動戦士ガンダムにおいてRX-78が「コアファイター」という形で一種のモジュール式脱出装置を採用している…などの例がある。
- 脱出用シュート
旅客機における脱出装置といえばこちら。
出入口(非常口)に空気で膨らむ滑り台を展開させ、乗客を脱出させる。
万が一、使用する事になった際にはハイヒールなどのシュートを破ってしまう可能性のある履物は脱ぎ捨てるべし。
- 救命ボート
船でいう脱出装置はこれ。「小型ボート」の形状をしているものや、ゴムボートの体裁をとっているものがある(ゴムボートタイプのものは不使用時は円筒形のカプセルに格納されている)。
船内には非常食や無線機、信号の発信機、サメよけグッズなどが積まれている。
- 緊急脱出用ハンマー
自動車で言う脱出装置に相当するもので、最もメジャーなものの一つはこれ。
水没や横転時など、ドアを開けるのが難しい状況に追い込まれた際に使う最後の手段。
窓ガラスを割りやすいように先端が尖っており、またシートベルトを切除するためのカッターを備えているものもある。
ちなみにオーストラリアの特急列車「ティルト・トレイン」には、標準装備。
某国のビックリドッキリ脱出装置
一風変わったモノを作ることで定評のあるイギリスであるが、(航空機用の)脱出装置に関してもイギリス的な独自のセンスが発揮されることもある。
以下、そんなイギリスのあまりに個性的な脱出装置(の一例)を挙げる。
- スイングアーム式脱出装置
射出座席の大家、マーチン・ベイカー社がかつて大まじめに考案した脱出装置。
機体にクレーンのような脱出用アームを装備し、非常時にアームを使って機外にパイロットをぶん投げる。
- ボールトンポール P.100の脱出装置
デファイアントでお馴染みのボールトンポール社が考案した軽戦闘機・P.100で採用予定だった脱出装置。
P.100は「イギリス版震電」というべきデザインの、カナード翼・推進式プロペラの軽戦闘機である。が、通常の脱出装置では後部のプロペラにパイロットが巻き込まれてしまう。
…というわけで、機首の下半分が口のように開いてパイロットを機外に放り出すというもはやギャグ漫画並みの脱出装置を採用する予定だった。
- ハンドレページ・ヴィクターの脱出装置
3バカ、じゃなかった3Vボマーの一角をなすハンドレページ・ヴィクター。
この機体の乗員は、パイロットは通常の射出座席を使うが…後ろ向きに着座している残りの乗員は、二酸化炭素のカプセルを爆発させて機外に飛び出すという個性的にも程がある脱出装置を用いている。尚、成功例はない。