概要
主に自衛用や室内や車両における取り回しと威力を両立させることを目的に開発された火器。
このカテゴリが誕生して間もない事と開発に高い技術力を必要とされる為に数多くの種類が作られているわけでなく、一般知名度は低い。
しかし実績は高く、法執行機関や民間軍事企業を中心に採用されている。
1986年にフォートベニング陸軍訓練基地で発行されたD/296文書によると、従来のM1カービンのようなPDWと違い、
- レベルIIIaのボディアーマーを貫通する弾薬
- 小型の高速小口径弾
- 短機関銃並のコンパクトさ
の条件を兼ね備えている新機軸銃がAdvanced Personal Defence Weaponとされている。
もっとも、定義はされているものの、基本的に開発者の主張まかせである。
なお、PDW(個人防衛火器)という名称自体は幅広い範囲の名称となっており、場合によっては個人に支給される自衛用の銃火器全般(拳銃や突撃銃、短機関銃等)、戦闘機などのパイロットや戦車兵等が機体から脱出した際に使用するAR7のような自衛火器、等の様々なものを含む言葉となっている場合もある。
開発経緯
軍におけるボディアーマーの普及により、後方へと侵入してきた敵部隊に対抗するには後方部隊での拳銃やサブマシンガンといった自衛火器では威力不足であり、アサルトライフルといった主力火器では携行するには嵩張りすぎるという問題があった。
こういった事態からアサルトライフル並の貫通力を持つサブマシンガン、もしくはサブマシンガン並の取り回しが出来るアサルトライフルといった銃が求められ、その他の様々な要求を満たす形でPDWは生まれる。
冷戦が終結した近年においては対テロ部隊において進化しハイテク化していくテロリスト、特に高性能な防弾チョッキが入手しやすくなっており、サブマシンガンでは威力不足となっており、このPDWが再び注目された。
アサルトライフルと違い車両やヘリの乗降りの際、狭い室内で邪魔にならない事は一つのアドバンテージでもあった。
しかしその先駆け的存在であるMP7A1やP90が登場当初「サブマシンガン」であるとされるなど、出てきてみればあまりウケは良くなく、「サブマシンガンでいい」「アサルトライフルでいい」「弾丸が共用できないとか何なの」といった意見がよく聞かれた。
だがその後もPDWは増え続け、徐々に兵器の1カテゴリーを占めるようになり、またその有用性も再度認識されるようになってきている。
その一方で、更に短銃身化し、ストックを折りたたみ可能にしたり、さらに短く縮めることを可能としたショートカービンをPDWとして売りだしているメーカーもある。
基本的には既存の銃火器と共通のため、新規設計弾薬を使用しているものは少なく、既存の銃火器のアップデートの範囲といった形となっている。
PDWとして開発された銃
過去
後方部隊の個人用の防衛火器として開発された初めての銃。
現行の(A)PDWとは別扱いとなる。
現在
APDWの持つ特徴を備えたコンセプトで開発された世界初の銃。
採用国も多くPDWの代名詞となっている。
かつては後方部隊の個人防衛火器として開発されていたが、冷戦の終了とともに対テロ用として運用されるようになった。
特殊な構造のマガジンと5.7x28mmの専用の弾薬を使用する。
P90に対抗する形でH&K社が開発したPDW。
APDWとしての設計はされておらず、戦車兵や航空機のパイロットなどが脱出時に使う自衛用SMGであり、拳銃弾を使用するMP5Kに折りたたみ式のストックを付けただけ、といった代物である。
PDWというカテゴリの基で作られた最初の銃。
UZIやMAC10と同じくマガジンをグリップ内に収納し、P90にたいしてトラディショナルなデザインとなっている。
開発名がPDWだった。
4.6x30mmの専用の弾薬を使用する。
サブマシンガン扱いされるのは主に名前が悪い(マシーネンピストーレ7=7号機関拳銃)
新型弾薬を使用するナイツアーマメント社が実験的に開発したPDW。
M4カービンを一回り小さくしたような見た目。
6x35mmの専用の弾薬を使用する。
ロアレシーバーがほぼM16/M4系と同じであるなど、既存の銃と操作の共通化やアサルトライフルを小型化するという発想で作られていると言える。
ナイツアーマメントが開発したPDW。
前身となるKAC PDWと違い、M4カービン等AR-15のコンバージョンキットとなっている。
6x35mmの専用の弾薬を使用する。
他のPDWと異なり、5.56x45mm NATO弾を使用する。
AR-15等の西側諸国のアサルトライフルに使われているSTANAG マガジンを使用する。
HK53のようにサブマシンガンでアサルトライフルの弾を使用するという発想。
P90やAUGのようなトリガーコントロールセレクタ、F2000のように直接排出しない排莢口など、様々な銃の良い所取りのようなPDWとなっている。
コンセプトモデル登場以降の動きはエアソフトガン版が発売された以外は無く、開発中止になったと思われる。
ロシアのKBP社が開発したPDW。
使用弾薬は拳銃と同じ9mmx19だが、新規に開発された9mmAP弾7N31を使用する事でボディーアーマーに対抗することが可能となっている。
7N31弾はメーカーの発表によると距離30mで8mm厚のスチールプレートを貫通できるとの事。
MP7と同じく樹脂を多用した外見となっており、グリップ内にマガジンを収納するスタイルとなっている。
折りたたみ式ストックを装着していない場合、マガジンを本体後部に差し込むことでストック代わりに出来るという機構を持つ。
CBJ-MS
スウェーデンのサーブ・ボフォース・ダイナミクス社とCBJ Tech社が開発したPDW。
新規開発された6.5x25CBJ弾を使用するが、9mmx19弾の使用も可能。
MP7と同じくグリップ内にマガジンを収めるスタイルだが、外装にポリマーなどが使用されていない旧世代のSMG的なスタイルとなっている。
開発中止となっており、サーブは別の銃を開発しているが、CBJ Techは開発を継続している。
AAC Honey Badger PDW
アメリカのAdvanced Armament Corporationが開発したPDW。
AR-15をベースとしており、取り外し可能なサウンドサプレッサーを搭載している。
.300 AAC Blackout(7.62mmx35)弾を使用し、サブソニック弾を使用した際には非常に静かな音で発砲が出来る。
親会社のレミントンを傘下に置くフリーダム・グループによって設計者が解雇されたことで2011年に開発は凍結、2015年に開発が再開された模様。
余談ながらHoney Badger(ハニーバジャー)は「ミツアナグマ」を意味し、怖いもの知らずとしてギネスにも載っている動物でもある。
MCX
シグザウエル社で開発が進められているハニーバジャーと同コンセプトのPDW。
AR-15ベースで、使用弾薬は5.56mmNATO弾、7.62x39mm Russian、.300 AAC Blackoutのマルチキャリバー。
AACを解雇されたケビン・ブリティンガムが開発を主導している。
Troy M7A1 PDW
Troy Defense社が販売しているAR-15を銃身を7.5インチに短くし、NEA社のストックを使用してレシーバーエクステンション(バッファーチューブ)の短縮化を行ったもの。
既存の5.56mmNATO弾を使用し、構造もM4カービンなどと同様のため、混在しての使用に問題が起き難いという利点がある。