概要
泰山王とは、中国仏教の神「太山府君」の、十王信仰における名称である。
この神は焔摩天の眷属たる十二天の一人とされるが、インド由来の仏典には登場せず、中国で誕生した偽経や儀式書に現れる。
本地としては薬師如来(十王信仰)、地蔵菩薩(赤山明神信仰)説がある。
中国での信仰
仏典注釈書『金光明経疏』では二十人の護法神が紹介されているが、中国ではさらに四人が追加され、「二十四天」とされる、
太山府君はその追加メンバー四柱の一人である。ちなみに他の三名は緊那羅王、紫微大帝、雷祖天尊。
道教の冥府神「東嶽大帝」ゆかりの聖地・秦山の信仰の影響を受け、「秦山府君」「秦山王」と呼ばれるようになる。道教と仏教との影響は相互的なものであり、秦山が冥府に関係するようになったのも、仏典にある「太山地獄」が秦山の地下にあるとされた事による。
中国において太山府君は東嶽大帝と習合している。
日本での信仰
日本では陰陽道で重要な位置を占める。陰陽師・安倍晴明が「秦山府君の法」を用いて、瀕死の僧侶を救ったエピソードは有名。
生死の境にあった人物を救った事、そして秦山府君が冥府と縁のある神である事からか、後世の創作では「秦山府君の法」が死者蘇生の秘術として扱われる事もある。
日本仏教では赤山大明神の名でも知られ、京都にある天台宗の寺院「赤山禅院」の本尊である。