概要
中国の儒教および道教で信仰されている最高神である。その語源は周の最高神であった天空の神「天」が殷の最高神であった卜占の神「帝」の概念を吸収して成立したと考えられている(三田村泰助『黄土を拓いた人びと』)。儒教では天子のみが祀ることを許された存在であり、天帝より受ける「天命」によってその人物は皇帝となって王朝を起こし、天命が変われば新しい皇帝が前の王朝を倒す「革命」となる。皇帝が善政を行えば五穀豊穣をもたらし、鳳凰や麒麟、龍、霊亀といった瑞獣を送って称賛する。逆に皇帝が悪政を行えば、彗星や天変地異といった凶兆で警告し、ついには反乱者に天命を与えて支援し、革命を起こして皇帝を滅ぼしてしまう。
道教では具体的な姿は表現されず、天地の森羅万象を司る絶対的存在であり、仙人や天人、神獣と関わりが深い。七夕の話でも織姫の父として登場する。道教の最高神は太上老君(老子)、元始天尊と時代によって変わってきた(中国神話を参照)。宋代辺りから天帝と同一視された玉皇上帝が実質的な道教の最高神となる。元始天尊との関係は、その化身であるとか、宇宙神である元始天尊の指揮下で実際に世界を治めているとか、いくつかの解釈がある。光厳妙楽国の王子の出身で、善政に努め道術を学び、ついに死後に神に昇ったという。
この天帝は「玉皇大帝」「玉帝」等別名が多いが、その一つに「天皇大帝」とも表現される。この名称が日本の「天皇」号の由来とも言われている。ただし、天皇大帝は天帝ではなく北辰(北極星あるいは天の北極のこと)を神格化した神であるともいう。
仏教では、インドラ神すなわち帝釈天を現世を治める最高神とみなしていた。これが中国の信仰と結びつくことで、帝釈天は天帝と同一視されるようになっていく。
現在の中国大陸では、儒教・道教と近代化運動や共産党との対立が続いた歴史を経て天帝信仰も衰退している。それでもなお天帝は、各地の道観(道教寺院)で祀られて根強く信仰されているようだ。また、宗教禁圧が緩い台湾や海外の華僑社会ではより多くの信仰を集めている。その他、絶対的力や存在感を持った人物が自称したり、異名として呼ばれたりする。
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