概要
宋の時代、現在の福建省にあたる地域の小島に住んでいた官吏・林愿の七人目の娘林黙娘が神となった姿。彼女は神になる前も、齢16にして神通力を獲得し、村人の病を癒す等の奇跡を起こした。
その地上における最後には二説あり、一つは28歳の時に父が海難事故で行方不明になった際、自身も船を出すが遭難して溺死したという説。
もう一つは、父を失った悲しみの中、霊山として知られる峨眉山に向かい、その頂で仙人に導かれ、女神と成ったという説がある。
神となった後も人助けを行い、海上にて人々を救ってきたという。
順風耳と千里眼
彼女は悪しき妖怪だった水精「順風耳」と金精「千里眼」を改心させ、自身の活動を補佐させている。
ちなみにこの二体は「将軍」とも呼ばれる存在であり、彼らを調伏させた媽祖の霊力の強さが伺われる。
このためか、後世には時の皇帝たちが「天后」「天妃」「天上聖母」という名を贈った。
信仰
海と縁の深い神であり、漁業や航海の守護神として中国・台湾の人々から今も篤く信仰されている。
沿岸部のような陸地に廟が建てられるだけでなく、船の中でも彼女が祀られた。
関聖帝君と並び、中国海外の華人・華僑コミュニティの居住地によく祀られる。彼女を祭る廟は「媽祖廟」「天妃宮」「天后宮」といい、日本にもある。
日本人によっても信仰されており、徳川光圀が媽祖を水戸の弟橘媛神社の祭神に加えたり、青森県の大間稲荷神社の祭神に「天妃媽祖大権現」が名を連ねている例がある。