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テジャスの編集履歴

2016-02-07 17:18:54 バージョン

テジャス

てじゃす

1985年より開発が始まったインド国産の戦闘機。技術的困難もさることながら、国内の政治的事情により開発が難航した。2001年に初飛行し、初期作戦能力を取得したものの実戦能力には程遠く、2015年現在でも作戦能力は備えていない。今後も開発は続けられるようだが、最終的な着地点はいまだ不明。

「火」

1985年、当時のインド首相インディラ・ガンジー(かのマハートマー・ガンジーとは同姓なだけで血縁なし)により、新型戦闘機することが発表された。HF-24「マルート」開発から約30年ごしの計画で、最新技術への不安はアメリカ企業と共同開発する方式を採って解決することとした。


開発はインド側でHAL(ヒンドスタン航空機)やADA(インド航空開発局)、DRDO(インド国防研究開発機構)が行い、機体設計でロッキード(当時)、エンジンにはゼネラル・エレクトリック(GE)が関わることになった。


「火」⇒「炎上」

が、開発は難航し、さらに政治サイドによる要求仕様の変遷も拍車をかけて迷走し、1993年初飛行の予定はズルズルと延長されることになった。中でもDRDOは問題で、とくに納期の点では全くアテにできない程と分析されている。


さらに1998年には、核実験への制裁としてアメリカ企業は軒並み撤退し、以降はエンジン開発にSNECMAを頼るなど、開発はさらに難航した。こうして開発は絶賛長期化中であり、開発費は56億ルピーが250億ルピーへと増大(インフレ分は考慮せず)し、こうした遅れからMiG-21bisonへの近代化にも約210億ルピーを費やすことになってしまった。

おかしいな。インド人は数学に強いんじゃなかったのか?


「炎上」⇒「大炎上」

21世紀に入っても苦難は続く。

2001年になってやっと試作機が初飛行。

量産型は2007年に登場し、2011年にやっとこさ初期作戦能力(事実上の名目だけ)を獲得。


そんな中で、世界の最先端は軒並み第4世代から第4.5世代・第5世代へと変遷していったが、未だ配備されない第4世代の価値はどれほどのものだろうか。いや、元をただせばMiG-21の後継で、この任務や役割を受け継ぐ戦闘機なら、それで良かったはずである。


なのに、なのに、それなのに。

2013年、MiG-21FL最後の飛行隊が解散となり、テジャスは間に合わなかった。MiG-21bisは現役に留まるものの、こちらも更なる開発遅延への対処として、延命化改修が行われることになった。

テジャスの完全な作戦能力を獲得するのは2016年の予定で、最初の飛行隊が編成されるのはさらに2017~18年の予定となっている。ただし、これまで「予定」というものを次々に更新し続けたテジャスである。果たして配備できるかどうかすら・・・


実際、空軍内部ですら『せっかく開発したんだし、このまま配備しよう派』と『遅れまくりだし、いいかげん見切りをつけて新型機を輸入しよう派』の2派閥に分かれており、おかげでテジャス開発費を捻出する一方で、ラファールを導入して国内でも生産しようとしたり、PAK-FA開発にも資金提供して共同開発の体裁をとる等、次期戦闘機事業は迷走しているようである。あっちこっちどれもつかず、このままじゃ全てがゼロに・・・いや、そもそもゼロはインドで生まれました。日本の発明品じゃありません


思い返せば、HF-24「マルート」だって核兵器保有による制裁で開発が頓挫した機である。インド国産戦闘機の夢は、いつだって延期と頓挫&破綻の多段コンボからは逃れられないのだろうか・・・


「光り輝く」

とはいえ、テジャスはインドの必要に対しては十分な機とも思われる。

テジャスは空軍機型と海軍機型が要求されていて、近年では新型空母「ヴィクラント」、魔改造ミンスク級「ヴィクラマーディティヤ」が完成したことにより、海軍機型のテストは報道されるところにもなっている。


テジャスはミラージュ2000より一回り小さく、主翼はビゲンのように外翼側の後退角が鋭くなったダブルデルタ翼となっている。胴体下に1か所(他センサー用にも1か所)、主翼下には左右3か所ずつのハードポイントを備え、もちろん爆装も可能で最大搭載量は4tほど。機銃には扱いなれたロシア製のGsh-23Lを備える。これはMiG-21MiG-23と同型のもの。


エンジンは当初GTRE(ガスタービン研究所)のGTX-35VS「カヴェリ」が予定されていたが、こちらも開発難航のために断念されているようで、現在のところF/A-18と同系統のF404/F414が採用されている。レーダーFCSも国産の装備が採用される予定だったが、これも開発難航によりIAIのEL/M-2032が搭載された。


主翼はよく似ているミラージュ2000がピュアデルタであるのに対し、テジャスはダブルデルタ翼を採用している。これは外翼の後退角が深くなっているビゲンに似たもので、見ようによっては「カナードの無くなったビゲン」のようにも見える。


飛行性能について明らかになってる部分は多くない(そもそもテスト中だから当然でもある)ようだが、航続距離は850kmとなっており、これはMiG-21の3分の2程度となっている。最大速度はマッハ1.7とも1.8ともいわれており、超音速巡航はおそらく不可能といわれている。


ただし、尾翼の無いピュアデルタには、翼端に近くなる(重心から離れる)ほど重量物を搭載しにくい欠点があり、実際には航続能力の低さも相まって、センターラインと主翼内側には増加タンク(計3個)を装備するだろうから、実戦では短射程AAM2基+中射程AAM2基or爆弾・ロケット弾ポッド2個と、比較的軽武装になると思われる。


テジャスの可能性

インド特有の国際的なバランス感覚というか、要は優柔不断に振り回されている。

現在、インド空軍はMiG-21bison(MiG-21bisの近代化モデル)に加えてSu-30MiG-29ミラージュ2000を配備しており、将来的にはMiG-21やミラージュ2000をラファールPAK-FAで置き換えることも考えているようだ。


インドへのラファール売り込みは当初126機(MiG-21の置き換え)が予定されていたが、インド生産分にもダッソーによる品質保証(=きっちり同じ製品を作れるよう指導してくれ)を求めたために交渉は難航。結局36機はダッソー生産分を導入することになったものの、その後の機をどうするかは決まっていない。オランド大統領はインドを説得しようとし、モディ首相もダッソー社を訪問する等、おたがい歩み寄る姿勢こそ見せているものの、未来はまったく不透明なままである。


一方、HAL・ADA自身もテジャスの経験を生かして、新たな次世代戦闘機計画を、ってどう見てもテジャスの大型化です本当にありがとうございました。エンジン等はテジャスで使われる予定だったものを搭載するようで、解決していない現状のテジャスの問題も含めて、果たしてどうする気なのだろうか・・・


このように、長期化するごとに暗雲が垂れ込めて、もはや青い空が見たいよ!と叫びだしたいほどになってしまったテジャスである。現状で良いところと言ったら、やはり猛々しいというよりも可愛らしい容姿だろうか。インドで求められる性能を備えた、手頃な大きさの戦闘機であり、愛嬌のあるダブルデルタ翼を備えている。


各国で開発されている戦闘機を比べて見れば瞭然であるが、やはり戦闘機とはその国ごとに違った要件を求められるものであり、また生産にも工業発展の粋が問われるものである。つまり戦闘機が工業力や国防政策の指標とも考えられる訳で、インドが自主生産(できれば設計も)にこだわるのも無理なからぬところ、という訳である。それが現状で「火」どころか「水子」に終わってしまいそうな戦闘機なのだが。


果たしてミグやミラージュを刻んでマサラを加え、カリ(汁物)にしたような戦闘機は完成するのだろうか。これからもDRDOの仕事は問われている。


隣国のライバル

国境を接し、過去に数度の紛争を経験した隣国パキスタンでは、中国JF-17FC-1とも)を共同開発した。こちらは中国版MiG-21ことJ-7をベースにしたと言いつつも、実際にはF-16F-20を足して2で割ったような外観で、要するに見る影もなくなっている。


テジャスと比較して若干大きく、尾翼のあるテイルドデルタで、空虚重量でも1tほど重くなっている。エンジンはロシア製のクリモフRD-93を搭載し、これはF404とほぼ同等~やや上程度の性能のエンジンである。こちらもMiG-21(あるいは自国製J-7)やF-5の後継を目的に開発され、他にもアゼルバイジャンスーダン等が注目しているようだ。


もちろんパキスタンでは続々と配備されているようで、近い将来、パキスタン空軍の主力はこれに換えられるものと思われる。またパキスタン仕様は多くの場合、中国本国仕様と違ってエンジンや電子機器を適せんロシア製・EU製の機器に入れ替えており、実用性という点ではテジャスの上を行っている可能性もある。

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