概要
ヨーロッパの伝説に登場する幻獣で、父はライオンで母は蟻である。
その姿は頭部がライオン、身体が蟻、もしくは上半身がライオン、下半身が蟻といわれる。
中世の寓話ではその奇妙な姿から二重人格にたとえられ、ライオンは肉を貪り食うが、草食(中世の認識)の蟻の身体では消化できずに、長くは生きられない存在として語られた。また蟻の卵から生まれるため、生まれた瞬間に土中で窒息し、その多くは地上にさえ出られずに死んでしまうともいわれていた。
飢えのためにさらに貪欲に貪り食い、結局最後には身を滅ぼすことから、欲望で身を滅ぼすことの戒めの説教の題材にもされた。
正体
その奇妙な存在の正体は『聖書』の誤訳によって生じた言葉であるといわれている。
『旧約聖書ヨブ記』の4章11節の「雄獅子」をギリシャ語に翻訳する前段階で、「アラビアの獅子」ミュルメクス・ライオンとなり、ギリシャ語ではミュルメクスは蟻なので、直訳の結果「蟻ライオン」という言葉になってしまったらしい。
なお英訳すると「アントライオン」になり、生物学の発達とともに非現実的な幻獣ではなく、砂中に潜み蟻を貪り食う「アリジゴク」のことを示すようになった。
創作での扱い
ファイナルファンタジーシリーズ
『ファイナルファンタジー3』で、コウモリの羽根とサソリの尾を持つ人面獣「マンティコア」の色違いモンスターとして登場した。
女神転生シリーズ
初出は『真・女神転生デビルサマナー』で、”妖虫”の上位悪魔として登場した。『ストレンジジャーニー』では”妖獣”に種族が変わり、『女神異聞録ペルソナ』では平仮名表記の誤読から生じたスキル「せつなさみだれうち」(刹那五月雨撃ち⇔切なさ乱れ撃ち)を持つというセルフパロディがあった。