クレイジーバックダンサーズ
くれいじーばっくだんさーず
概要
東方Projectに登場する楽曲の一つで、初登場は『東方天空璋』。
作曲者はZUN。
同じく『天空璋』に初登場した丁礼田舞と爾子田里乃の二人のテーマ曲であり、二人が「誰かの背後で踊る」ことで対象の「 潜在能力 」を引き出す「バックダンサー」であることと関連している。
このとき舞は「 生命力 」を、里乃は「 精神力 」を引き出す。
舞と里乃の二人にみる「バックダンサーズ」の要素はテーマ曲だけでなく『天空璋』での二つ名である「危険すぎるバックダンサーズ」にもみられている。
そしてその舞はすべて二人の「 お師匠様 」である摩多羅隠岐奈に捧げられている。
なお、『天空璋』ゲーム中で二人の名前や二つ名が最初に紹介される際の表記では二人をあわせて「 丁礼田 舞&爾子田 里乃 」とも表記される。またステージ中での紹介では舞と里乃の紹介順が、両者の立ち位置の関係からか里乃が先で舞が後の「 爾子田 里乃&丁礼田 舞 」と入れ替わった表記ともなっている。
楽曲
ZUNによれば、本曲は「 不気味に踊り狂っている 」イメージ。
「 不気味さ、軽快さ、強敵感、無邪気さ 」のすべてを込めたうえで、さらに「 中ボスらしさ 」を「 てんこ盛り 」にした楽曲。さらに、舞と里乃のテーマという「 二人分 」の楽曲でもあることから、「 色々と贅沢な曲 」ともしている。
曲の冒頭から繰り広げられる不気味にして力強いものながらもポップな旋律で聞き手を引き込む。同時に終盤には哀愁のあるパートも込められるなど、表情豊かな一曲でもある。
またゲーム中で本曲が登場する一つ前に聴くこととなる『天空璋』5面道中曲である「禁断の扉の向こうは、この世かあの世か」においても、当楽曲を指してか、あるいは同曲が流れる「 後戸の国 」の有り様を指してかZUNは「 東方の中でもかつて無い程に不気味な世界 」と語っており、「クレイジーバックダンサーズ」に至る『天空璋』5面は全体を通して独自の「 不気味さ 」に満ちているステージである。
同じく『天空璋』の「もうドアには入れない」にも「 不気味さ 」の側面も込められており、『天空璋』5面以降、自機の面々が覗き込んだ「 世界 」はこれまでとはまた違った何かが満ち溢れているものでもあった。
このとき、「もうドアには入れない」の「 不気味さ 」と共存しているもう半分は「 優しさ 」。
舞と里乃
本曲をテーマとする舞と里乃の両名は、先述のようにいずれも「誰かの背後で踊る」事で対象の潜在能力を引き出す。
二人は平時は隠岐奈のために踊るが、『天空璋』では例えば舞が矢田寺成美の背後で成美に悟られることなく踊ることで、成美の能力を引き出している。
その影響について成美は自身から「 魔力が溢れる 」様子に驚いており、そんな成美について『天空璋』以前から成美と面識をもち、同作で実際に対峙した霧雨魔理沙は普段の成美と比較して「 普通じゃ無い魔力の溢れ方 」としているなど、通常時以上の能力が発揮されている様子が作中でも描かれている。
『天空璋』における「 四季異変 」は隠岐奈の、舞と里乃に代わり得る人材の探索がその理由であり、潜在能力を引き出して様々な対象の可能性を調べていた。
ただし人材を求めるの理由については隠岐奈の意向と舞・里乃の認識とでズレがあり、「四季異変」で発見できた人材の如何(隠岐奈のお眼鏡にかなう相手の有無)によっては、隠岐奈の「ダンサー」あるいは「バックダンサー」としての舞と里乃の「クレイジーバックダンサーズ」は解散お役御免となる可能性もあった。そして以後別の人物による「クレイジーバックダンサーズ」が生まれていた可能性もまたあった。
なお、隠岐奈達の由来と目される「摩多羅神」の伝承では、摩多羅神は配下として「二童子」を従えており、これが隠岐奈のバックダンサーが舞と里乃の「二名」であるということにも繋がっている。
摩多羅神が従える「二童子」はそれぞれ丁禮多(ていれいた)、爾子多(にした)と呼ばれる。
作中でも里乃は自身らを指して「 障碍神の二童子 」などともしている。
「クレイジー」
「クレイジー」は多様な意味と用法を持つ語であるが、本楽曲における「クレイジー」は舞や里乃に重ねて語られている「 踊り狂う 」などの意味合いから「常軌を逸した」の意味と思われる。実際に隠岐奈に捧げられる二人の踊りは「 常軌を逸したもの 」とされている(『天空璋』)。
また「クレイジー」における一般的な意味である「狂気」「狂う」といったニュアンスと捉える場合、東方Projectには様々な「狂気」が登場している。
例えば「狂気」をそのキャラクター性の周辺にもつキャラクターとしては、鈴仙・優曇華院・イナバ(テーマ曲や能力名、二つ名)やクラウンピース(二つ名や能力名)などがある。
舞と里乃は摩多羅の元で「 楽しく踊り狂っている 」とされており、クラウンピースなども相手を狂わせることを楽しんでいたりするなど、本人たちはそれぞれの狂気を楽しんでいたりもする。
スペルカードにおいて直接的に「狂気」の語を含むものを所持するキャラクターとしては純狐(<「純粋なる狂気」>)や宇佐見菫子(<*幻視せよ! 異世界の狂気を*>)などがある。
また月の都など世界観全体が「 ルナティック 」(Lunatic。「狂気の」の意。『東方紺珠伝』では「 ルナティックキングダム 」とも)として語られるものもあるなど、東方Projectには様々な形でそれぞれの「狂気」が揺蕩っている。
「複数人」のテーマ曲
先述のように本曲は舞と里乃二人のテーマであるが、東方Projectにおいて同様に「二名」のテーマ曲とされる楽曲として「時代親父とハイカラ少女」(雲居一輪と雲山。雲居一輪&雲山)や「幻想浄瑠璃」(九十九弁々、九十九八橋)、「綿月のスペルカード ~ Lunatic Blue」(綿月豊姫・綿月依姫)などがある。
二名ではなく三名のテーマ曲としてはプリズムリバー三姉妹(ルナサ・プリズムリバー、メルラン・プリズムリバー、リリカ・プリズムリバー)のテーマ曲である「幽霊楽団 ~ Phantom Ensemble」などがある。
また、本来は特定の一名のテーマ曲ではあるものの、「ネクロファンタジア」や「デザイアドライブ」など、実際のそれぞれのゲームでは当該の曲が流れるステージで関係者など本人以外の誰かが同時に登場し、二名以上を相手取るシーンとなるケースもある。
「 これって二人で攻撃している様な気もするが、気の所為だよな。 」
(魔理沙、紫のスペルカードの<式神「八雲藍」>について。『グリモワールオブマリサ』)
「妖精大戦争 ~ Faily Wars」もまたゲームとしての『妖精大戦争』中ではサニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアの三名と同時に対決する際の楽曲でもあり、『東方心綺楼』作中で「亡失のエモーション」をそのBGMとする、とある特定の場面では、義憤に燃える秦こころが博麗霊夢、聖白蓮、豊聡耳神子の三名に同時に立ち向かうこととなったりもする。
通称「東方旧作」におけるマイとユキの二人も、ステージ中においていずれかを撃破するまでは「禁断の魔法 ~ Forbidden Magic」の楽曲が流れる。
あるいは弾幕戦中に本人が二人になるスペルカードと対峙することにもなる際に流れる楽曲として「緑眼のジェラシー」(水橋パルスィ)や、「クレイジーバックダンサーズ」と同じく『天空璋』が初登場の「一対の神獣」(高麗野あうん)などもあり、それぞれのテーマ曲にまつわるゲーム作中での場面は一対一とは限らない多彩さをもつ。
あるいは四人になったり、首が増えたり、大量の人形が襲い掛かってきたりと、それぞれのプレイヤーが体験した「複数」の相手によるトラウマ的弾幕シーンもまた、音楽を聴くことでもきっと脳裏によみがえってきたりするだろう。
この他、広く上海アリス幻樂団作品における「二人」のテーマ曲としては「ZUN's Music Collection」に登場する宇佐見蓮子とマエリベリー・ハーンの二人のテーマ曲である「月の妖鳥、化猫の幻」があるなど、「クレイジーバックダンサーズ」のように一つの音楽で二人以上を象徴するといった様子は上海アリス幻樂団作品では様々に見られている。