概説
文字通り「魔」の力が宿る弾丸。
発祥はドイツで、【Freikugel】(自在の弾丸)または【Zauberkugel】(奇術の弾丸)と云われる。
銃火器発祥のことから実しやかに囁かれてきたもので、これを1730年にオットー・フォン・グラーベン・ツム・シュタインが説話としてまとめ上げ、さらにそれを1811年にヨハン・アウグスト・アーペルとフリードリヒ・ラウンの二人が幽霊譚として派生させる。
そして1811年版を下敷きに、カール・マリア・フォン・ウェーバー作曲、ヨハン・フリードリヒ・キント脚本による歌劇『魔弾の射手』(原題『Der FreiSchütz』)として発表・公演され、一躍有名となった。
性能
その効果は百発百中。
単純明快にして、恐るべき威力を持つ。
邪魔が入ろうと、途中に遮蔽物が闖入しようと、弾丸は射手が一度狙った標的に必中する。
歌劇版では“悪魔が魔術で造った弾丸”として登場し、全弾で7発が精造された。
うち6発は射手の意のままに命中するが、最後の一発は悪魔が意図した標的に着弾するという契約の下に製造されており、必ず悲劇を生む結果となる。
歌劇では主人公マックスが、悪魔と契約して魔弾を得ている狩人仲間のカスパールに唆されて使用し、射撃大会で好成績を得るも、最後の一発が恋人のアガーテに当たりそうになる。
原典ではそのままアガーテが死亡、歌劇では白薔薇の冠がお守りとなって弾丸を逸らし、マックスを唆したカスパールに命中することになった。
後世への影響
のちに比喩的表現、創作上の“禁断のアイテム”の代表格として浸透していく。
ドイツ語では【Zauberkugel】とした場合、“特効薬”の意味にもなる。
また銃社会の発達ととともに、“絶対的に不可能か角度から標的を射抜いた弾丸”を比喩的に魔弾と呼ぶ。
特に第35代目アメリカ大統領ジョン・F・ケネディの暗殺事件において放たれた銃弾(証拠物件399)が、比喩表現としてこれに喩えられる。
誘導能力を持つ砲弾や銃弾などがSFのガジェットでなくなりつつあるため、このような弾の登場や研究等が発表された際に比喩表現として挙げられることもある。
関連タグ
関連ワード
- リップヴァーン・ウィンクル
- T.M.Revolution
- 楽曲に上述の歌劇をモデルとした『魔弾~Der Fireischutz~』がある。
- タスラム
- イタクァ
- 新宿のアーチャー
- 『Fate/GrandOrder』に登場するサーヴァント。巨大な棺桶型ランチャーに「魔弾」の伝承の因子を組み込んでいる。