概要
聖悠紀原作のSF漫画。永遠の命を持つ超能力者・ロックが宇宙を股にかけて活躍する物語である。
初出は1967年の同人誌で、商業誌連載は1977年から始まり、現在も様々な物語が生まれている。同人誌時代も含めれば連載から43年以上経っており、連載期間だけならゴルゴ13以上である。
1つのエピソードは単行本数巻で完結するくらいの規模で、エピソード単位の繋がりは薄く、どれから読み始めても問題はない。このあたりはそれこそゴルゴ13と同じようなものである。
主人公のロックは不老不死であるために、宇宙の歴史のどの時代でも物語の舞台になりうる。ただしジャンルとしては「宇宙船やレーザーガンが飛び交うスペースオペラもの」が強く意識されているため、人類が宇宙進出をするよりも前の時代を舞台にしたエピソードは現時点では作られていない。
単行本の巻末にはそれまでの超人ロックのエピソードが宇宙の歴史上でどのあたりになるかについて時間軸ごとに並べた宇宙年表が付属されることもある。
そう言った関係上もあって、ノミネートには完結作品である事が前提である星雲賞にも、50周年トリビュート企画が自由部門にノミネートされた。
ただ、掲載誌がころころ変わるため権利関係はややこしい。中には単行本の絶版で今では読めなくなってしまったエピソードもあるため、全話読むのは至難の業である。アニメ化された際のオマケとして描かれた短編群は、その最たるものであろう。
単行本は複数の出版社から発売されたが、描き直しが加わったり、それがなかったことにされたりと些末な変更がある。
- 「新世界戦隊」は同じ題名でストーリーが異なるものが存在する。本編世界内の歴史で大きな事件が起きたエピソードであり、これを読んでいないとそれより後の時代を舞台にしたエピソード全般で多少だが理解不能な部分がでてしまう。にもかかわらず、どちらも現在は(2014/3/17時点)絶版・入手困難であり、なぜか単行本が他社から再版されることもない。(2つの作品の内1つはアマゾンのKindleストアで購入できる電子書籍に収録された)
- 同人誌時代の諸作品は近年リメイクされ、設定・ストーリー・登場人物などが変更された。(当然ながら一部のファンからは「変更前の方が良かった」という意見も・・・)これらの作品もKindleで購入できるようになった。
- 長期間にわたって作られたシリーズのため、中には作風が異なる物がある。
- 「探偵編」と呼ばれるシリーズ諸作品は、今後、他のストーリーと整合性を保つ事が難しくなる可能性が出てきた為、宇宙年表の記載からは外された。「パラレルワールドという設定に変更された」と、早合点するファンもいるが、作者はそのような事は一言も言及していない。
登場人物
ロック
永遠の命を持つエスパー。不可能を可能にするほどの強大な力を持っているため、絶えずその力を利用しようとする者との戦いを強いられている。性格は物静かで理知的。
相手の技や能力を自らの物とする「ラーニング」能力を持っている。
しかし実際のところどんな超能力を持っているかやスペックなどは詳細な設定はされていない。これは「超能力でできること」を明記してしまうと「できないこと」も同時に可視化されてしまうため、作者としてはそれを避けているのである。
なお、敵と戦った時のロックの強さはエピソードによってまちまちで、場合によってはあっさり他者の力の影響下に置かれる事もある。
ロックは肉体の老化が超能力でも誤魔化しきれないようになった時、自分自身の時間を逆行させることで人生をリセットする(=赤ん坊に戻ってもう一度成長する)ことを繰り返している。なのでスペックがエピソード単位でコロコロ変わるのもある意味では当然である。
あれこれ
“超能力者”像
1970年代から1990年代前半にかけての、日本の創作物における“超能力者”の像、テンプレートを確定した作品と言ってよく、当時まだ一般に超能力の概念が浸透していなかったため、ESP(超知覚)とCy(物理的超能力)の区別もなく“超能力に目覚めた人はこのようなことが出来る万能者である”という誤解した像を植え付けた。
ロックの“超能力者”像を引き継いだ著名作品としては『エスパー魔美』が挙げられるが、同時期の超能力者を主人公にした作品というのはだいたいこんなものである。
2000年代に入ると、Webの普及により、より掘り込んだ超能力の設定をした創作作品が登場し始める。例としては『ゼロの使い魔』、『とある魔術の禁書目録』シリーズ、などである。
ロックのような万能超能力者キャラも登場しているが、主人公よりも“主人公に寄り添いつつ導く存在”が多くなっている(『涼宮ハルヒの憂鬱』シリーズの長門有希、『GATE 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』のロゥリィ・マーキュリーなど)。
超人ロック最大の超能力?
「作品が掲載された雑誌は、ことごとく休刊する」「いや、出版社ごとつぶれる」
というジンクスがあると言われる。
だがこれは長期作品にはよく見られる現象であり、けっしてロックのせいではないはずである。
正直なところ、『超人ロック』は一般層への知名度や人気のある作品では無い。いわゆるところの「マニア向け作品」である。ただ、根強いファンがついておりロックを追いかけ続けている。なのでロックを掲載する雑誌というのは、その「手堅い固定ファン」を目当てにしている。
端的にいえば、ロックが雑誌を潰しているのではなく、潰れることがほぼ確定状況にある雑誌が最後のあがきでロックにすがりついたが、やっぱり数年すれば潰れた…というのが実情なのかもしれない。
但し最初に潰れた雑誌は別の大ブレイク作品にあぐらをかいた結果のザマだったりするが。