概説
1977年(実際には刊行スケジュールの都合上その前年の1976年12月)から少年漫画雑誌『マンガくん(のち、少年ビッグコミック。最終的にヤングサンデーに至った)』(小学館)に連載された藤子・F・不二雄の漫画作品。同誌創刊作のひとつである。
しかし『マンガくん』そのものが紆余曲折の迷走(少年向け→中高生向け→青年雑誌)を続けたゆえに一定したカラーを持てなかった雑誌であったため本作の連載も翌年には定期連載陣からは外れ、不定期掲載に切り替わる事となった。(親雑誌であるサンデーにおけるアレやコレと同じ扱い)
ラストエピソードの掲載は1983年。
1987年4月にテレビ朝日のアニメコンプレックス枠である藤子不二雄ワイドにてアニメ化。これに伴いコロコロコミックにて再録連載が行われた。そのため「エスパー魔美はコロコロ(が初連載)の漫画」と勘違いしている人がかなりいる。(アニメに関しては、のちほど詳述)
2002年の冬季クール(1月~3月)にNHK教育の『ドラマ愛の詩』枠にてドラマ化されている。
前身作品
本作には原型となる短編作品が存在する。1974年に週刊少女コミック50号に掲載された「赤毛のアン子」という作品がそれ(単行本収録時に「アン子、大いに怒る」と改題)で、主人公が超能力を持つ赤毛の少女、ペットを飼っている、父親が画家(作中では娘をヌードモデルにしていないが、単行本収録の際、室内に置かれたキャンバスにアン子の裸体が加筆されているコマがある)、主人公の先祖が魔女、高畑によく似たクラスメートが登場するなどの共通点がある。
アン子の場合は母方が「アメリカのセイラム(魔女裁判で有名)に居たギリシャのテッサリア系移民(魔女と言ったらこの辺の巫女)」の子孫で、魔女狩りを避けて来日した」という濃い設定である。
ストーリー
ある日、クラスメイトの男子生徒・高畑が不良に絡まれている現場を目撃した魔美は、無意識の内に高畑をテレポートさせてしまう。その後も不思議な現象が身の回りで起きていき、魔美は自分の中に超能力が宿っていることに気がつく。超能力が宿っているのは自分ではなく、魔美の方であったことに気がつき落胆する高畑だったが、気を取り直して彼女の超能力を育成するコーチとして、協力を申し出た。
高畑のサポートの下、自身の超能力を磨きながら、魔美は中学校生活と、超能力で人助けをする正義のエスパーとしての二重生活に奔走するのであった。
父(父の祖母がフランス系で、魔女の末裔という設定)が画家であり、魔美は小遣い稼ぎとしてモデルをしているのだが、ヌードモデルなので頻繁に裸体が登場することでも有名。これは当時、自分の作品に色気がないと自覚した作者の新しい作風への挑戦の意味もあったらしい。実写ドラマ版ではさすがにヌードは拙いので、モデルの際はレオタードを着ている。
基本的にはコメディなのだが、『地下道おじさん』『最終バスジャック』等、シリアスな欝展開や社会風刺が盛り込まれることもある奥の深い作品である。
ドラえもんをはじめ、他の藤子作品とも世界観を共有しており、ドラえもんの秘密道具「なんでも空港」をスネ夫とジャイアンが使用したためにQ太郎に続いてパーマン達(漫画では怪物太郎)やウメ星デンカと共に無理やり着陸させられた他、魔美のいたずらが原因で起きたかまいたち騒動のウワサをスネ夫がのび太達と話ているのを魔美が困惑しながら横切るシーンがある。
登場キャラクター
CVはアニメ版、演はドラマ版。
- 佐倉魔美(CV:よこざわけい子/演:笹岡莉紗)
- 高畑和夫(CV:柴本広之/演:上條誠)
- コンポコ(CV:小粥よう子)
- 佐倉十朗(CV:増岡弘/演:草刈正雄)
- 佐倉菜穂子(CV:榊原良子/演:涼風真世)
- 竹長悟(CV:佐々木望)
- 間宮幸子(CV:江森浩子/演:井端珠里)※ドラマ版の姓は『相原』。
- 桃井のり子(CV:渕崎ゆり子)
- 番野兆治(CV:塩屋翼)
- 富山高志(CV:平野義和)
- 有原成宏(CV:鈴置洋孝)
- 黒沢庄平(CV:飛田展男)
- 藤野沙織(CV:三浦雅子)
- 陰木さん(CV:京田尚子)
- 細矢さん(CV:中谷ゆみ)
- 黒田赤太郎(CV:佐藤正治)
- 黒雪妙子(CV:鶴ひろみ)
アニメ
1987年4月から1989年10月まで全120話が放送された。
第27話までは『忍者ハットリくん』と入れ替わる形で『藤子不二雄ワイド』枠内で『パーマン』や『プロゴルファー猿』と共に放送。第28話から独立枠で放送されるようになる。27話からはアニメオリジナルエピソードが次第に多くなり、第95話から完全オリジナルのみになるが、原作回に遜色ない作風となっている。
1988年3月に劇場版『星空のダンシングドール』が『ドラえもん のび太のパラレル西遊記』と『ウルトラB ブラックホールからの独裁者B・B』と同時公開された。
テレビアニメ、劇場版映画、ともに制作はシンエイ動画。監督(チーフディレクター)は双方共通で原恵一が担当。原監督の監督デビュー作(演出そのもののデビューはドラえもんから)である。
テレビアニメのシリーズ構成はシンエイ動画文芸部所属(本作で独立した)の桶谷顕が務めたが、ほとんどの重要脚本(事実上のメイン脚本)は富田祐弘が担当している(アニメ第1話やワイド枠最終となる第27話『星空のランデブー』、劇場版『星空のダンシングドール』の脚本も富田)。特に藤子不二雄ワイド時代の脚本は富田ともとひら了による実質上の二枚看板状態であり、シリーズ構成の桶谷が本格参戦したのは枠独立後の第38話(最終バスジャック)から。それ以降は脚本家陣に水出弘一も加わり富田・もとひらの二枚看板状態からは脱している。
主題歌
オープニングテーマ
『テレポーテーション–恋の未確認–』
作詞:松本一起 作曲・編曲:奥慶一 歌:橋本潮
『S・O・S』
作詞:松本一起 作曲:清岡千穂 編曲:田中公平 歌:橋本潮、SHINES
エンディングテーマ
『不思議 Angel』
作詞:松本一起 作曲・編曲:奥慶一 歌:橋本潮
『I Like YouからI Love You』
作詞:松本一起 作曲:池毅 編曲:田中公平 歌:橋本潮