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富田祐弘

とみたすけひろ

日本の脚本家、漫画原作者、ラノベ作家。『美少女戦士セーラームーン』旧アニメシリーズの初代シリーズ構成およびメイン脚本として同作の方向性を確定させた事で知られ、後に『愛天使伝説ウェディングピーチ』を作り上げてアニメにおける「美少女戦士物」の「ジャンル化」に寄与した「バトルヒロインの父」のひとり。
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1948年4月14日生まれ。埼玉県出身。


来歴編集

日本大学芸術学部卒。当初は実写映画のスタッフ(照明職人)を目指していたが、在学中に大学の状況(当時は大学紛争の真っ只中でマトモに勉学ができなかった)を皮肉った学生運動家激怒モノの戯曲を上げて上演させ、一般学生から多大な支持を得た事をきっかけに脚本家になる事を志望する。


大学卒業後、脚本家を抱える芸能事務所へ就職するが、事務方および営業方の人手不足から脚本家の仕事を回して貰えずに芸能マネージャーとしてタレントを売り込む鬱屈した日々を過ごす。が、富田の脚本の腕を知っていた東映動画のスタッフから一喝されて一念発起。当時、様々な人気作品を手掛けていた同事務所付きの脚本家であった田村多津夫(『アタックNo.1』『快傑ライオン丸』『愛の戦士レインボーマン』『メガロマン』などの主要脚本を担当していた人物)に師事する。また『激走!ルーベンカイザー』『魔女っ子チックル』『5年3組魔法組』『メガロマン』では師である田村と共にサブ脚本家として参加している。

デビュー以降、目をかけてくれた東映動画および東映を中心に、アニメ脚本家として活躍。同時に手掛けた作品のノベライズやコミカライズ原作を引き受けるようになる。


ちなみに富士見ファンタジア文庫の創刊メンバー(ファンタジア文庫創刊6大作家)のひとりとして、田中芳樹竹河聖寺田憲史武上純希松枝蔵人と共にラノベ界の歴史に名を並べ刻んでいる作家でもある。


近年は祥伝社を中心に歴史小説を片手間に執筆しつつ、日本脚本家連盟の主催するスクールで講師をするとともにゼミを受け持ち、執筆活動よりも後進の育成と指導に注力している。


しかし2021年6月、養成した教え子たちと共に長年の沈黙を破り、ついにゲーム小説配信サイト「TapNovel」から、ノベルゲーム『愛天使世紀ウェディングアップル』を発表&始動させた。


作風編集

一言で言えばやりすぎる人。


現代的に言うならば(本人がそれを意図していたかどうかはともかくとして)「キャラ立ち」を重視し、いわゆるキャラや展開における文芸上の「お約束」を丁寧に描写することを好み、さらに物語そのもののライブ感(いわゆるノリと勢い)を重要視し、その後に設定やストーリーがついてくるタイプの脚本家。というか、そのタイプの脚本家の「はしり」の一人である。

田村門下であるため理屈よりも精神感情論が優先される物語、特に熱血系作品やコメディおよびヒーローものは間違いなく本領。これが後述するバトルヒロインジャンルとの親和性の高さに結びついている。また、それゆえにマクロスシリーズとも相性が良かったものと見られている。


また音楽好きである事でも知られ、言葉(や言葉の語感自体が織り成すリズム)に対する独特のこだわりに関しては、群を抜いている事でも知られる。

設定構築の時には複数言語の辞書を引きまくり(富田がメイン活躍していた時代に複数言語の同時対応辞書など存在しておらず、あったとしても学術機関が研究予算で買うようなトンでもなく高価な専門書である)キャラ名や用語に対して様々な言語の複合を用いていた事でも知られる……が、そのこだわりが強くなりすぎるとたま~に登場人物の使う名乗りや口上、呪文や技名などが冗長(いわゆる語り)になったり、作内で語られる伝説(劇中劇・過去編)などが本編以上に気合いが入りすぎたりする。


芯の入った物語や登場人物の心情描写(人間ドラマ)は見事に描ききるが、やりすぎる展開や登場人物のアツさを優先させたあげくに物理法則すら無視して設定を踏み倒す事もしばしば。

一方で、人間ドラマを描ききるウィットに富んだ作風は、それとはまったく逆となる、心理描写を敢えて抑えつけて無情を描ききる(ジャンルとしては戦争ものにおける群像劇のような作品)「乾いたドラマ」あるいは特に「むせるドラマ」では不利に働く事もある。これに関して『機甲創世記モスピーダ』の企画に参画していた(『ガルフォース』の原作者でもある)アートミック柿沼秀樹は「富田さんたちは(人情ものを主眼に置く)西部劇(ホースオペラ)世代だから(ゆえに本来「ノルマンディー上陸作戦」的なドライで乾いたものが好きな自分たちが求める脚本とはズレが生じた)」と評しており、一説にはこれが本来メカニックデザイナーであった柿沼氏がアニメーターから脚本家・小説家へ転向するきっかけになったとか。(もっとも柿沼の言う「たち」には、アートミック社長である鈴木敏充や、共同企画であるタツノコプロ・アニメフレンド側の岩田弘も含まれる。彼らも富田とおおよそ同じ世代であり富田の脚本を良しとしていたので、これに関しては当時のアートミック上層部と若手のジェネレーションギャップも大きく影響しており、その矛先が外部の富田へと向かってしまっただけ、ともとれる。そもそも『モスピーダ』に関しては、いちメカデザである柿沼の意向を富田が斟酌する理由はあまり無い。ただし『ガルフォース』に関しては柿沼は原作であるため、これに関してはフォローは難しい)

独特の言葉へのこだわりに関しても、読み方や受け取り方の次第では物語の認識的な流れをぶった切るケースも出るため賛否が分かれやすい。ただし叙情的あるいは情緒的な表現を要する作品では親和性が高く有利に働く事も多い。

そのため、80年代においては重厚なSF(科学)設定を重視させたSFアニメマニアや、あるいは今に言うところの硬派厨を激怒を通り越して呆れさせ、当時は「脱力させられたら富田脚本」なる迷言すら生まれたと言われる。


まさに「80年代SFアニメの富田祐弘」と言えば「平成ライダー第一期米村正二」と同義と言って差し支えない。

ただし、この件は80年代のSFアニメブーム(SFバブルと言ってもいい)の中で「SFアニメ以外は作りづらかった当時の業界の実情」に対しても考察が必要で、富田一人の責任とも言い難い部分もある。


ただし、そこまでアツい作品を描ける人物に支持者(ファン)がつかないワケがない。また、その気になればバランスの良い脚本も書ける(もっとも、そうなると物語がパワーダウンしがちになる)ため、やはり業界でも重宝される脚本家の部類に入る。


時にサービス精神旺盛で作品のカラーによってはタチの悪いパロディすら辞さない。実際に、それが行き過ぎて現在で言う公式が病気を乱発した事もある。この方向性で有名になった(なってしまった)のが、あの『ゲンジ通信あげだま』だったりする。

正直、軽いトコロでタイムシフト&ポーズから月に代わってお仕置きする美少女戦士全く同一の変身手法を取るヒロイン(しかも中の人同じ)とか、ライバル記憶喪失になった挙句真っ黒のワンピースに赤いリボンの姿主人公とラブコメ繰り広げ、それを探す某祖父の姿がオートジャイロ乗り回すロリコン伯爵のコスプレとか、そのサービスっぷりは見ている方が不安になるレベルであった。(あげだまの脚本そのものには1話分しか関わっていないが、原作者として名義を出し内容のブラッシュアップに関わっている以上、まったく関係ないとは言い難い。ちなみにメインの共犯者は、おなじみ栗山田であるが、どっちが主犯かは判明していない)


また、そのライブ感の勢いとサービス精神ゆえにイデオンダンバインVガンダムあたりで皆殺しの富野の片棒を担いでしまったこともある。

そのため後にシリーズ構成として参加した『美少女戦士セーラームーン』の無印における内部太陽系戦士結末や『ビックリマン(無印)』の最終回における神帝たちの末路も「もしかしたら?」と(ネタ的に)言われてしまう事も。

(ただし後述するように『セーラームーン』における同話の脚本を上げたのは富田ではない。シリーズ構成として監督とともに展開を了承して、直後の最終回を挙げたのは富田ではあるが。そして『ビックリマン』に関しては原作の再現であるため富田の責任とも言い難い)


あと、某ファンタジーロボアニメにおいて、監督またおっちゃんな王様を出そうとしながら、監督自身が自分で趣味に偏り過ぎてしまう事を悩んでしまった事を見かね「ならもう、このキャラは女の子にしちゃいましょうよ」などと、よりにもよってどっかの社長のようなを1980年代に提案したという逸話がある。ちなみにそうやって誕生した姫君はスタッフおよびファンに気に入られる人気キャラと化し、某作にてオマージュキャラまで登場する程の事態となった。この逸話から女性キャラ好きと言われる事もある。


またVガンダムでは第10話の担当者でもある。この事からシュラク隊の産みの親扱いされる事も多い。前述のサービス精神旺盛な性格と女性キャラ好きを、スポンサーや制作会社の上層部から上手く利用されてしまった結果だ、とも言われるが真偽は不明(あくまでネタ)である。ちなみに同作での富田の担当回は8、10、13、18、21の5話分。


現代バトルヒロインの父編集

実は少女向け作品においても前述の『魔女っ子チックル』や『魔法の妖精ペルシャ』(ぴえろ魔法少女シリーズ)などに参加しており「戦う少女」系の作品においても『魔物ハンター妖子』(OVA第1作)に参加していた。


その経歴もあり美少女戦士セーラームーン初代アニメシリーズのシリーズ構成を無印から3期(美少女戦士セーラームーンS)まで手掛けている。そのため同作アニメの初代シリーズ構成としても有名。記念すべき無印の1話および最終回はもちろん、あのネフなる神回となる無印24話を上げたのも富田である。

また、そんな立場なので当たり前と言えば当たり前なのかもしれないが、2020年10月にNHKBSプレミアムで行われた『全セーラームーン投票エピソード部門においては、富田の手掛けた脚本が1位(劇場版R)と3位(無印24話)に入るダブルフィニッシュの栄冠に輝いている。(ちなみに2位は柳川茂が手掛けた第45話)

もっと言えば、この投票(全セーラームーン投票エピソード部門)におけるTop10のうち半数(5話分)が富田脚本である。内訳は前述の劇場版R(1位)、無印24話(3位)の他に、無印最終回(46話・5位)、劇場版S(6位)、S20話(9位)の5話分。まさに初代シリーズ構成としての威厳と存在感を示した。


そのかわり同作と原作との乖離に関してはまこちゃん連続失恋佐藤順一ぶっ壊レイちゃん幾原邦彦みんなのトラウマDDガールズ製造者 柳川茂に並ぶ主犯の一人扱いにされてしまっているフシもある。


『セーラームーン』のシリーズ構成を3期の途中で自主降板した後、同じく『セーラームーン』から離れた只野和子とともに新作の発表を準備。その過程で小学館から谷沢直を紹介されるとともに、テレビ側では湯山邦彦とタッグを組み、以前より腹案を持っていた『愛天使伝説ウェディングピーチ』を手掛けた。

この事により『セーラームーン』以外には存在しえなかった「少女向けの戦闘美少女チームを主題としたアニメ」を複数作り上げ、このジャンルを「単に1作品のみに引っ張られない、ひとつのジャンルとして確立させた」事に寄与したと言われる。


そもそも、ウェディングピーチが作られた背景として、同作スポンサーのトミーや小学館に端を発する各種業界の「そろそろ(女の子たちにとっての)セーラームーン以外の選択肢があってもいいはずだ」「競合作品があった方が業界にとっても健全な切磋琢磨を誘発できてプラスになるはずだ」という考えがあった事による。つまりウェディングピーチのスタッフたちは単に一作品のみの話では収まらない、後の歴史に繋がるもっと大きなものを見ていた事になる。


とはいえ、この時期はセーラームーンシリーズの最大全盛期。セーラームーンの一部のファンは困った事に、同ジャンル別作に流れた富田の事を同じく同作に関わった只野和子共々、彼らを裏切り者と罵った事すらあったと言われている。


ただ、その後の東京ミュウミュウプリキュアシリーズの発生も、富田による「ジャンル確立」という足跡の延長線上にあると見れば、彼の同ジャンルにおける役割は非常に大きいものであったとも言え、現在ではこれに関して再評価する動きもある。


そのため、これらの業績の再評価層からは「現代(少女向け)バトルヒロインの父」と称される事もある。


主な作品編集

※代表作多数であるため、主だったものを挙げる。








他、多数


関連タグ編集

脚本家 東映アニメーション バトルヒロイン

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