概要
1993年2月20日、テレビ朝日系アニメ『美少女戦士セーラームーン』第45話『セーラー戦士死す! 悲壮なる最終戦』・第46話『うさぎの想いは永遠に! 新しき転生』の放送によって起こった一連の視聴者の反応および、関連事象に対して本項目が定義した呼称。
作中、主人公月野うさぎ(セーラームーン)を除く四人のセーラー戦士(四守護神)が次々と戦死、最終話の第46話ではセーラームーンと地場衛(タキシード仮面)も死亡する衝撃的な展開が放送され、これが原因でショックを受けて熱を出したり拒食症や登校拒否になった子どもが続出した。なお、この回の視聴率は12.7%(Wikipediaから出典)であった。
本作が純粋なシリアス作品ではなく、『お気楽ご気楽』がモットーのコミカルな作風(原作者は不満を持っていたようだが)で製作され、見ていた子供達がいきなりの展開に動揺したことも騒動の要因の一つである。
この頃はまだBPOは存在しない時代で、子どもたちの体調不良や登校拒否に苦慮した一部の保護者が、怒りの投書を新聞の読者投書欄に投稿した。その投稿は即座に掲載されて新聞読者間の議論を巻き起こし、キー局には保護者から猛烈な抗議電話が殺到した。その中には某局のアナウンサーもあり、自らがMCを務める番組内でキー局に苦情を申し入れたことを明かした。
なお月野うさぎ役の声優・三石琴乃は第44話の収録直前に急病で一時降板、最終回放送終了後も復帰を果たせなかった。オーディションの最終選考で三石氏と争った荒木香恵がピンチヒッターとして代役を担当し、三石氏の復活後も音声差し替えは行われなかったが、ドラマCDなどで一部の台詞を収録している。
このこともあってか、後に荒木女史はちびうさのCVを務めることとなる。
注意点
上記の事象(テレビの前の子どもたちが番組を見てショックのあまり体調不良を訴えた)がポケモンショックと似ていることから、ポケモンショックと同じように考えている人もいるが、実は全くそうではないこと(ポケモンショックはあくまでも動画の表現手法の問題だが、本件は女児アニメにおける展開の問題)に注意してほしい。
また、こうした衝撃的展開に「○○ショック」という呼び方を用いるのは近年の出来事であるため、それ以前に起こった本件のリアルタイム放映時には全く用いられていなかった。
実際、今でもファンは「45話・46話」「無印最終決戦」と呼んでいる。なので、この呼称に難色を示す(というか疑問を持っているか嫌っている)ファンも存在する。ショックタグは非常に好き嫌いが分かれるタグなのである(○○ショックも参照)。
内容
第45話 セーラー戦士死す! 悲壮なる最終戦
闇の王国ダーク・キングダムとの戦いでダーク・キングダム四天王を倒したセーラー戦士は、遂に最終決戦を覚悟した。
既に太陽の黒点が広がり、世界各地で災害が頻発していた。遠い昔、月の女王に封じられたダーク・キングダムの支配者クイン・メタリアが復活しかけていた。
最終決戦の直前に月野うさぎは家族に初めてカレー(ただし激マズ)を作り、平和なひと時を過ごす。 そして火野レイの家・火川神社にセーラー戦士が集合するが、うさぎの関心事はレイと熊田雄一郎の恋の進展だった。うさぎが「もしものことがあったら」と口を滑らせる。 木野まことの言葉で「これが終わったら」と恋の話に花を咲かせかけたセーラー戦士は、ルナとアルテミスに伝授されたセーラーテレポートでワープ。
ダークキングダムの本拠・北極点Dポイントを歩くセーラー戦士。セーラームーンとセーラーマーズのいつもの口喧嘩を無視し、セーラーマーキュリーは本拠の入り口を探してチームの先頭を行く。
水晶玉でセーラー戦士を見ていたクイン・ベリルに、直属妖魔の5人組にしてDポイントの守護神・DDガールズが出動を要請した。マーキュリーのポケコンが敵性反応を示し、セーラームーンと四守護神は戦闘態勢を取る。
DDガールズ・青の将が見せる人質状態のタキシード仮面の幻にセーラームーンが翻弄される。同じ罠に何度も引っかかったムーンは仲間に救われ、厳しいマーズに怒られて謝る。
卑怯な攻撃に怒って電撃を撃とうとしたセーラージュピターを、DDガールズは古幡元基の幻覚で怯ませ、5人がかりの触手で縛って感電させる。 怪力をもってしても脱せないジュピター。
ムーンとマーズが攻撃しようとするが、DDガールズは付け入る隙を与えない。
「・・・あたしに電撃で勝負をしかけようとは、いい度胸だね!」
意を決したジュピターはシュープリーム・サンダーの落雷を自らに落とし、電撃同士が衝突する爆発に飲み込まれた。 そして爆風から生まれた氷の結晶の中に、DDガールズの2人を道連れに閉じ込められてしまう。ムーンは助けに駆け寄るが、ジュピターは力尽きかけていた・・・
「ダメ。ダメよ!みんな一緒じゃなきゃ!まこちゃんあたしに言ったよ!帰ったら思いっきり恋をするんだって」
「嘘ついたら閻魔様に舌抜かれちゃう」と泣き出したムーンを、ジュピターは優しく諌める。
「泣いてる暇はないよ。プリンセス!さあ・・・元気を出して・・・」
ジュピター死す―――
ジュピターの死に絶叫したセーラームーンは、「こんな思いをするのならクイン・ベリルに幻の銀水晶をあげればよかった」と騒ぎ出す。 普段は優しいマーキュリーがムーンの頬を叩く。
「ごめんなさい。でもわかって。ジュピターの死を無駄にしないで」
ムーンを諭したマーキュリーはDDガールズの接近を感知し、「ここから先は攻撃力の強いあなた達の力が必要になる」と他の3人を先に行かせる。彼女は時間稼ぎに残るつもりだった。 怯えるセーラームーンに、マーキュリーは「私は死んだりしないわ」と笑う。ムーンは仲間に促され、振り返りながらマーキュリーの元を去った。
「私にも、こんな幻を見ることができるのね」
DDガールズは浦和良の幻を見せたがマーキュリーに見破られ、火球の幻で襲いかかる。元々、補助系戦士であるマーキュリーに大した戦闘能力は無い。
実体を持つ幻に驚愕したマーキュリーは必死に幻覚の無効化方法を調査するが、やむを得ずシャボン・スプレーの冷気を浴びて炎の中に入っていく。
しかし、待ち構えたDDガールズの触手に捕まってしまい、火炙りにされたマーキュリーはポケコンを握りしめた。
「これも今日が使い納めかもね・・・」
瀕死のマーキュリーはポケコンを振りかざし、幻覚の源である青の将のティアラの石を叩き割った。そのまま力尽きて氷の結晶に倒れていく。
マーキュリー散る―――
「亜美ちゃん。亜美ちゃんが死んじゃったよ!」
マーキュリーの死を感じたムーンは、しゃがみこんで泣き出してしまう。マーズは「敵は次々と襲ってくる」と叱る。セーラーヴィーナスは何も言えない。
状況は悲しみが癒えるのを待ってくれない。セーラームーンがへたり込んだ氷の下にDDガールズが迫っていた。 察したヴィーナスはムーンを突き飛ばし、身代わりになって地中に引きずられるが、「銀水晶をあげるから美奈子ちゃんを離して」と叫んだムーンを制す。
「そんなことしたら許さないから!」
ヴィーナスはDDガールズに三人がかりで縛られ、地底にくべられた火球の中で火炙りにされる。地の底からDDガールズが「命乞いしても無駄だ。銀水晶は貴様たちを全員始末して頂く」と笑う。
火球はマグマに破裂する。ヴィーナスが意を決し、クレッセントビームを紅の将の額に発射、四散消滅させた。しかし、ビームとマグマがぶつかり合う爆発に飲み込まれ、急速に固まった氷の結晶に閉じ込められてしまう。
ヴィーナス果てる―――
敵は残り2人。そして残ったセーラー戦士もムーンとマーズのみ。
「セーラームーン。喧嘩ばかりだったけど楽しかったわ」
次は自分と覚悟するマーズ。ムーンが「あたしが全部やっつけるからレイちゃんは先に帰ってて」と止めに入る。
「あなたには最後の戦いが残ってるからパワーを蓄えとかないとね・・・やあね。死ぬって決まったわけじゃないでしょ。それじゃレイちゃん、ちゃっちゃっとやっつけてきまーす!」
ムーンを残して戦闘態勢を取るマーズだが、いきなり足元からDDガールズ2人が飛び出し、氷の山の中に埋められて火炙りにされる。 マーズへの止めを青の将に任せた緑の将がムーンを急襲する。
だが、緑の将は攻撃される我が身を省みずにマーズが放ったファイヤー・ソウルの火の玉で焼き尽くされた。 残る青の将がマーズを焼き、ムーンをも始末しようとするが、次の瞬間、触手を瀕死だったマーズに掴み取られた。
青の将も触手越しのファイヤー・ソウルで焼き払われる。 DDガールズを全滅させたマーズは爆風に巻き込まれ、氷の結晶の上に倒れる。
「やっぱりうさぎの言う通り・・・雄一郎にキスしとけばよかった・・・ね」
マーズ、尽きる―――
北極の地に一人残されたセーラームーンは、膝を抱えて泣いていた。
「亜美ちゃん、まこちゃん、美奈子ちゃん、レイちゃん・・・そっか。これは夢だ。朝起きたらみんなおはようって。レイちゃんはあたしのこと、ドジうさぎって・・・」
現実から逃れようとしたムーンの肩に何かが触れる。それは死んだはずのジュピターの幻だった。驚いたムーンの前にマーキュリー、ヴィーナス、そしてマーズの幻も出現し、順番に彼女を激励した。
『いつも私達は一緒よ』
仲間の思いを受け、一人ではないと知った少女は立ち上がる。そして最後の戦いに向かってダーク・キングダムの城へと走るのだった。
第46話 うさぎの想いは永遠に! 新しき転生
クイン・ベリルの居城を前にしたセーラームーン。ベリルは彼女をあえて自らの元へと招き入れる。
ベリルの前に転送されたセーラームーンが見たのは、プリンス・エンディミオンの姿となった地場衛が、クイン・ベリルの手に忠誠の接吻を捧げる姿。
プリンセス・セレニティの記憶に目覚めていたセーラームーンにとって、それは恋人が他の女に忠誠を誓う衝撃的な光景だった。
「エンディミオン。プリンセスを殺せ」
空虚な傀儡と化したエンディミオンは、ベリルの命令によってセーラームーンに剣を向ける。
セーラームーンは幻の銀水晶の光で彼を救おうとしたが、月の王女に目覚めたばかりの彼女には銀水晶を扱い切れず、剣の傷を受けてしまう。
「セーラームーン。死ね」
ムーンを助けてくれていたタキシード仮面の赤いバラは黒く染まり、彼女を縛って感電させる。
(『お団子頭』) 「衛さん・・・」
倒れたムーンはエンディミオンの良心に訴えるが、泣き落としも通用しない。情け容赦なく蹴り飛ばされてしまう。 前世からの恋敵の惨めな姿に高笑いするベリル。冷酷な猛攻撃を浴び続けたムーンはムーンスティックを手放して倒れ、エンディミオンの剣に捉えられる。
「エンディミオン。プリンセスの首を落とせ」
ムーンは身を守ろうとムーンスティックに手を伸ばす。しかし届かない。
「無駄だ!銀水晶はこの世をメタリア様の暗黒のエナジーで満たすため使われるであろう。お前達のしてきた事は全て無意味だったのだ」
ベリルの非情な言葉が響く。脳裏に仲間の最期をよぎらせたムーンは涙をこぼしてティアラを光らせ、ムーン・ティアラ・アクションでエンディミオンを戦闘不能にした。 しかし、彼の体に注がれた暗黒のエナジーはムーンを討つまで休息を許さない。ティアラも手放して防御の術を断たれたムーンを、エンディミオンが襲う。 万事休すかーーー
「私、セレニティです。遠い昔、あなたと愛を誓い合った月の王国のセレニティです。あなたは悪いエナジーに操られているの。元の優しい心に戻って・・・」
咄嗟にセーラームーンは、タキシード仮面に譲られた星のオルゴールを差し出す。
それは前世から今世までを貫く二人の愛の象徴だった。その輝きに導かれ、エンディミオンは自らの洗脳を振りほどき、咄嗟に寄り添ったムーンの腕の中に倒れた。衛がムーンに「ありがとう」と告げる。
「許さんぞプリンセス。また私からエンディミオンを奪おうとする」
エンディミオンを奪われたクイン・ベリルは、ムーンを水晶で刺そうとする。ベリルの凶行を察知した衛は、赤いバラで水晶を破壊してベリルの胸を貫くが、ムーンを庇って水晶の破片を浴びてしまう。
バラを胸に受けたベリルは、「何故その小娘を庇う。私と結婚すればこの世界の王になれたものを」と衛を眺めていたが、バラの清浄な光によって胸をひび割れさせた。
「エナジーか!?エンディミオンの小娘を思う気持ちが、私の体を滅ぼすというのか!?認めん!認めんぞ。そんなことは!」
「早く、ここから逃げろ・・・そして普通の女の子に戻って、かっこいい彼氏でも見つけろ」
瀕死の衛がムーンを逃がそうとするが、ムーンは「衛さんが一番かっこいい」と答える。見つめ合う瞳。そのまま息絶えた衛を抱きしめ、号泣するムーン。
セーラームーンは衛に最初で最後のキスをしようとするが、途中で思い留まる。
「ごめん・・・キス、できない。レイちゃんも亜美ちゃんもまこちゃんも美奈子ちゃんも、みんな好きな男の子とキスもできずに死んじゃったの」
「だから、私一人だけ幸せな気持ちにひたることはできない。ごめんね、衛さん。私逃げない。まだやらなくちゃいけないことがあるの。見てて。頑張るから」
こうして覚悟を決めたうさぎ=セーラームーンは、衛を崩れる城に残して歩き去る。
打倒セーラームーンに燃えるクイン・ベリルは、クイン・メタリアと同化して暗黒の花の巨人スーパー・ベリルに変身し、世界征服に動き出した。
うさぎもプリンセス・セレニティに変身し、氷の柱に立って銀水晶の力を完全解放。北極の地で銀水晶の愛と希望のエナジーと、スーパー・ベリルの憎しみと絶望のエナジーが衝突する。
「何故そうまでして私に逆らう?美しい未来を夢見るお前もやがては気付くであろう。この世界は既に醜く汚れ切っていることを!」
「信じてる!みんなが守ろうとしたこの世界を信じてる!」
ベリルは「この腐り切った世界に信じられるものなどない」と嘲り、憎しみのエナジーでうさぎを圧倒する。 うさぎは銀水晶に願いをかけ、仲間との記憶を蘇らせた。一時はベリルを圧倒するが、また押し返されたうさぎは苦しみながら仲間の魂を呼ぶ。
「お願いみんな・・・!あたしに力を・・・貸して!」
声に応え、うさぎの手の中のムーンスティックを四つの手がゆっくりと握りしめていく。マーズ、マーキュリー、ジュピター、ヴィーナスの魂がうさぎを守るように立った。
五人揃ったセーラーチームは一人ずつ呪文を唱え、最後のムーンの呪文で5つの光が銀水晶に収束、銀水晶から聖なる光が飛び出してスーパー・ベリルを消し去った。
だが、銀水晶の力は持ち主のエナジーを消費する諸刃の刃。四人のセーラー戦士の魂は消え、エナジーを使い果たしたうさぎも「ありがとう」と告げて力尽きた。
銀水晶の光は氷の柱を崩して広がり、朝焼けにも似た光でうさぎ達の体を次々と照らし、溶かしてゆくーーー
朝、目覚めると真っ白なレースのカーテンが風にそよいでる・・・
部屋の鳩時計が7時を告げて、いつまでも寝てると遅刻するわよって、ママの声。私はまどろみながら、もう3分だけ寝かせてえなんて思うの
毎日同じように遅刻して、先生に廊下に立たされて、テストで赤点なんかとっちゃう
学校帰りにみんなで食べるクレープ。ショーウィンドウに飾られたパーティードレスにうっとりして、ちょっとしたことが楽しくて嬉しい
そんな、そんな普通の生活に戻りたい・・・戻りたい・・・
太陽の暗黒に包まれた地球も銀水晶の光に救われ、朝が来た。 遅刻だと叫んで起きたうさぎは、母親に抗議して朝ご飯も食べずに学校に行く。
平穏に暮らすレイ、まこと、美奈子、亜美ともすれ違った。
うさぎの哀切な願いに反応した銀水晶は、神秘の力で世界を再構築させた。リセットされた世界では今までの1年間の戦いが全てなかったことになってしまった。
戦いも辛い記憶もなく、みんなが生きている世界。しかし同時に誰もセーラー戦士に目覚めず、仲間として知り合うこともなかった世界であった。 かわいそうだと落ち込むルナに、アルテミスはまたみんなが巡り会えばいいと希望を語る。
その言葉通り、親友の大阪なると下校していたうさぎは、母親に見られる前に捨てようとした30点のテストを衛に見られ、また腐れ縁が始まる。
うさぎはなるに衛を「かっこいい」と言われて抗議する。
「えーやめてよー。あたしにはちゃーんと夢があるんだから」
「夢?」
「そう!どんな時もあたしを助けてくれる、かっこいい彼氏を見つけるっていう夢よ!」
その後 こうして物語は幕を閉じるのだが、次週で続編『美少女戦士セーラームーンR』が始まる。
『R』第1話「ムーン復活! 謎のエイリアン出現」でセーラー戦士が運命的に巡り合う。そして新たな敵の出現でセーラームーンが記憶を取り戻すが、ルナはアルテミスがやられかけるギリギリまでうさぎの記憶を戻さなかった。
仲間と恋人を死なせた事はうさぎのトラウマになり、ルナとアルテミスに仲間の記憶を戻さないように頼んでいたが、第2話「愛と正義ゆえ! セーラー戦士ふたたび」で全員分の記憶を戻されてしまった。
仲間の支えによって立ち上がるうさぎの成長は、『R』ED『乙女のポリシー』の歩いていたうさぎが走り出す映像にも反映された。
そして『R』第22話「ちびうさを守れ! 10戦士の大激戦」で紅のルベウスからちびうさを守るためにセーラームーンが立ち上がり、挿入歌『愛の戦士』のサビ「やっぱり私やるっきゃないね 叩きつぶしてやるわこの手で悪を」がかかるシーンにも続いていく。 初の劇場版『劇場版R』では、銀水晶の力で彗星を押し返すうさぎに協力するセーラー戦士の図に衛も加わっている。
関連する人達
第45話の演出。後のアニメ『ONE PIECE』シリーズ初代SD。ただし、この時はまだ演出職に就いて間も無く、また最終回直前回でもあったため『セーラームーン』初代SDであった佐藤の補助を貰っている。
ちなみにセラムン無印で宇田が演出を行った回は、この第45話のみである。
第46話(最終回)の演出担当にして、セラムンファンにはお馴染み「ぶっ壊レイちゃん」の生みの親である、のち(R以降)の2代目SD。ある意味で本シリーズにおける公式が病気・公式が最大手の権化。花をあしらった演出は劇場版Rや百合界のカリスマにも繋がっていく。
該当回である第45話脚本。富田から渡されたバトンを安定の職人芸で繋げた人。とはいえセラムン無印脚本においてはシリーズ構成の富田と同クラスレベルで主要脚本を上げている人物。
なお柳川の着手した無印の脚本は第2・5・7・11・14・18・23・25・29・32・37・43・45話で、全46話中13話分を担当している(余談だが、柳川の次点が12話分を執筆した隅沢克之、最後が6話分を執筆した杉原めぐみ)。
直前である第44話および該当回である第46話(さらに劇場版)の脚本家。そしてシリーズ構成。つまり、このヒトとシリーズディレクター(監督)が「こうしましょう」とGoサインを出さないとこの展開は無い。
富田の担当脚本は全46話中15話分とトップ。まさにシリーズ構成。
ちなみに『ビックリマン(無印)』、「皆殺しの富野」で知られる『伝説巨神イデオン』『聖戦士ダンバイン』のメイン脚本でもある。特に『ダンバイン』とは「全滅」「再転生」などの共通要素が見られるのでファンから冗談半分に主犯扱いされる事も多い。
なお『セーラームーン』を離れた後に別の局で作った競合後継作では、逆にクライマックスでメインヒロインが死んで仲間達が取り残される展開(ただし覚醒イベントで即復活する)を用いている。
富田と共に本展開の了承を行った、セーラームーンアニメシリーズの初代シリーズディレクター。すなわち総監督。おまけに第45話では宇田の補佐を行って状況に拍車をかけた。つまりは富田とともに全ての黒幕。
ちなみに『セーラームーン』シリーズの後継作品プリキュアシリーズの『HUGっと!プリキュア』では座古明史とともにシリーズディレクターを務めており、そちらでも主人公に急接近した敵幹部の衝撃のメカバレ回をやらかしている。
なお佐藤が絡んだ『おジャ魔女どれみ』シリーズ2期『おジャ魔女どれみ♯』でも似たような全滅展開を扱っている。ただし、これの主犯は2期担当SDの山内重保およびシリーズ共同SD五十嵐卓哉、そしてシリーズ構成の山田隆司(栗山緑)なので、実は1期で『どれみ』から離れた佐藤は無関係である(もっとも、全員が佐藤あるいは富田と密接に仕事をしたことがあり彼らからイロイロと学んでた可能性のある人物だ、というのはあるのだが「それはともかく」としておく方がよいかもしれない)。
内部太陽系戦士の声優さんたち。該当話では、うさぎ役の三石琴乃が病欠(代役は上述の通り荒木香恵)であったため、その穴を埋めるためにも全力の演技を誓い、セーラー戦士たちの断末魔はリアルに壮絶なものとなった。つまり、本事象は実は声優の本気の結果でもあったとも言える。
こちらはDDガールズの声優さん達。内部の方々の気合に応えて、こちらも声優の本気を見せた。ちなみに数名どっかで聞く名があるが、セーラームーン無印では珍しい事では無いので気にしてはいけない。
おなじみ原作者。この結末を見た時には呆然としたという。いわく「あたしも(内部たちをドラマチックに一人ずつ)殺りたかった! 」と。
そう。実は武内自身もセーラー戦士の戦死を第一候補として考えていながら担当おさぶに止められてボツにされたという、いわくつきの展開だったのである。本件における子供達の反応を見れば「担当GJ」なのであろうが、原作者側としてはフラストレーションの溜まる結果となった。そして、アニメ側(富田)がこのラストを選び取ったことで原作者は自信を深め、彼女がこの時に抱いたフラストレーションは第2部や最終章において「アニメだってやったじゃん」と出版社というリミッターをぶっ壊して一気にがっつり強制発散させられていく。
議論と影響
それは製制作側の配慮欠如か、それとも家庭教育の怠慢か?
第45話のサブタイトルは、予告の時点から同話の展開にショックを受けることに対して準備を促す事を告知するための、あえてのネタバレサブタイである。ゆえに、展開は予想できて然るべきで、その点では制作側の配慮が不足しているとも言い難い部分ではある。一方でこれをして親(家庭)による番組と子供に対するケアが行き届かなかったがゆえの家庭の問題だったのではなかろうか、と指摘される事もある。
実際、ショックをほとんど受けなかった子、受けても第45話視聴(特にビデオへの予約録画した子)に対して事前の親との話し合いを行いその結果で軽微で済んで納得した子、何らかの偶然(というか明らかに親の配慮)で第45話を視聴できなかった(むしろあえてしなかった・せずにすんだ・親から視聴を禁止された)子、またこれを克服して立ち直った子も、また多かったのだ。そのため作品・スタッフの擁護派からは「本来、家庭が行うべき子どもへのケアの放棄(家庭教育の放棄・怠慢)をしておきながら、その責任を番組やスタッフ・テレビ局へ全面的に転化させるのは無理矢理に過剰責任を負わせているタチの悪い開き直り(単なるモンペ行動)に過ぎないのではないか」と苦言が呈される事がある。
とはいえ実際に多くの子供達が心を痛めたがゆえに、苦情が巻き起こった事は確かであった。提供側の配慮欠如を叫ぶ者は「共働きも増えて機能が変質した90年代以降の家庭では、子供との関わりには時間的にも親側の余裕の点でも限界があり、どれだけ配慮されてもその閾値を越えられてはどうしようもない(から、その閾値を越えるような事は最初からすべきではない)」「どんな配慮をしていたとしても、この結果を呼び込んだ以上は配慮不足でしかない」という声も多い。
「ご都合主義」への苦言
当時からの苦言の一つに、「銀水晶の奇跡で悲劇をなかったことにしたという死ぬ死ぬ詐欺はいかがなものか」というものがある。一連の流れは現代の視点で見ると典型的な「リセットオチ(取りようによっては夢オチ)」の茶番劇と言わざるをえず、令和の時代に同じことをやっても小さな子供でも納得しづらい、と指摘されている。
昭和における東映などの子供向け番組では「苦難に直面した主人公の強い想いがあり得ないような奇跡を起こす(ご都合主義はキャラクターの苦難によって導かれた必然のご褒美だ)」という展開は定番であり、『セーラームーン』の先駆的存在にあたる『聖闘士星矢』もその流れを汲んでいる。
平成に入ってまだ数年の当時でも、「現実は努力や想いだけで変えられなくて当然なのに、それを易々と奇跡の力で乗り越えるのは子供達に大ウソを教える事に他ならない」と批判されてきた。またキャラクターの死よりも、銀水晶によるリセットで全てを帳消しにしたにこそ、「死というものを軽く扱いすぎている」という大人からの意見もあった。
ただし、この銀水晶の奇跡では辛い記憶と痛みだけではなく、セーラー戦士の出会いもリセットされている。ただし、今度は普通の女の子として巡り会う希望を感じさせるエンディングでもあるため、ビターエンドと言える。
この辺りはとっても誤解されやすい事だが、記憶の集団リセットは「辛い記憶を忘れて皆で日常に帰りたい」といううさぎの無意識がもたらした物で、セーラー戦士になってからの辛い事と楽しい事は表裏一体であり切り離せないためである。現実で言う所ではPTSDの催眠治療が近いのではないだろうか。
『R』の1話のうさぎは記憶の復活を拒み、取り戻した後も「せっかく普通の女の子に戻れたのに、また戦うしかない」という葛藤を抱え、一度死なせてしまった四人の仲間を再び危機に晒すことを恐れて一人の戦いを決意する。が、第2話でルナに四人の記憶を強制復帰させられて単独行動は終了した。大人の事情とかいう奴である。魔界樹編終盤まで記憶を忘れっぱなしの衛には、別の恋人ができるかもしれない危機感によって早く思い出して欲しいとアピールしまくったがそれはそれである。
ちなみにセーラームーンの旧アニメシリーズは、当初は無印のみで終わる予定だった企画であり、全29話での完結も視野に入れて制作されていた(噂によれば原作漫画と違う中盤までの月野うさぎ・水野亜美・火野レイの三人体制、そして原作者に苦言を呈されたレイの性格改変もそれに関連付けられ、ダーク・キングダム四天王のネフライトが銀水晶の秘密に近づいたのは短期終了の伏線でもあるらしい)。 しかしムーンスティックの爆売れによって放送延長され、仮に一年で終了した場合は後番組として魔夜峰央の漫画『妖怪始末人トラウマ』をアニメ化する予定だったという。
以降の続編(特に無印直後作であるR魔界樹編)はスポンサーのゴリ押しによって「大慌ての突貫仮設工事」とすら言える場当たり作業で急遽設定された(=マトモな企画案の成立に必要な制作時間を与えられないままの)場繋ぎのための時間稼ぎ編ではあるが、「ストーリーの構成事情や制作事情から考えれば(無印とR以降のシリーズは)切り離して当然」とする意見もある。
しかし、それらを踏まえてRと切り離して無印のみで評価した場合においても「リセット化する事で(セーラー戦士達の)全ての努力を無駄にした」(努力が無駄、というメッセージになるため、子どもに示すものとしては相応しくない)として意見される部分がある事も事実である。
最終的な影響として
結果として、この一件をきっかけに、その後に製作された幼年および少女向けのバトルヒロイン作品(例として挙げるなら『プリキュアシリーズ』など)全般においては、これを反面教師として、最終決戦においては物語を盛り上げるためだけに無駄死にはさせない、死んだように見せかけて実は生きていたとする場合は御都合主義がすぎないように納得できる伏線を事前に貼っておく、などの演出を取り入れている事が多い。
また、この時のスポンサーのゴリ押しに拠る延長が結果として、作品におけるスポンサーの主導権を増す事になり、作品によっては製作プロがスポンサーの傀儡になる事態も起きており、セラムンの場合、当時の局戦略とスポンサーと雑誌社との思惑と利害が一致したのもある意味不運だった。
余談
第45話で四人のセーラー戦士の魂がセーラームーンを励ますシーンのBGMには、前期ED『HEART MOVING』のインストゥルメンタル版が使用された。
第46話の最終決戦ではOP『ムーンライト伝説』の二番が挿入歌に使用され、ムーンスティックに四戦士の魂が触れてセーラーチームが再集結する場面ではサビの「不思議な奇跡クロスして何度も巡り会う」が流れる。 うさぎ達が転生したエピローグの挿入歌には、セレニティとエンディミオンのキャラクターソング『You7re Just My Love』が使われた。
『劇場版R』はこのラストバトルのオマージュでアンサー的作品である。
声優の種﨑敦美はこの回を視聴したことが声優を目指すきっかけになったという。
2024年9月8日セーラージュピター役の篠原恵美が亡くなったことが二日後の9月10日に明かされた。最初に戦死したセーラージュピター役の人がセーラー5戦士の声優で最初に亡くなるというのは皮肉な偶然である。