「かつて、デジタルワールドを救った十闘士の伝説が今、甦る…」
(byアバンナレーション)
概要
アニメ『デジモンシリーズ』の4作目。
これまで製作されたデジモンシリーズ作品とは異なり「パートナーデジモンはおらず、子供たち自身がデジモンに変身をする」という『スーパー戦隊シリーズ』の要素を取り入れた斬新な内容となっている。(なお人間の合体は前作でも見られていた。)ファンの間では、略して「風呂」などと呼ばれたりする。
シリーズでは唯一となる和田光司がOP・ED・挿入歌を担当した作品でもある(後期挿入歌のみ異なる他、EDはAiMとのデュエット)。
物語の内容は第1作『デジモンアドベンチャー』に立ち返った冒険ものであり、悩みを越えて成長し進化する、主人公が一旦家に帰るなど、初代のキモは抑えている。また、グレイモンやガルルモンの名を冠する進化が存在するなど、原点回帰という意味で第1作に大きく寄った形で作られた作品である。
もちろん、デジモンアナライザーも今作で復活している(前作はテイマーがデジモンをディーアークで解析するという体裁で解説が行われた)。
その他
なお、デジモン4部作で劇伴音楽を担当していた有澤孝紀は、デジモンフロンティア放送後の2年後となる2005年11月26日に癌により死去したため、有澤が担当したデジモンの劇伴音楽はこれが最後となった。
時代設定については過去3作品とは異なり、公式から特に明言・設定されてはいない(そもそも本作の舞台はほとんどデジタルワールドであるため、人間世界の描写がかなり少ない)。
しかし街の風景などはリアルタイム放送年である2002年当時とかなり似通っているため、おそらく2002年前後と考えるのが自然だろう。
(※ちなみに2002年は2作目『デジモンアドベンチャー02』の劇中で描かれた出来事が起きた年でもある。)
ドラマCD『デジモンフロンティア_オリジナルストーリー_伝えたいこと』では最終回後、Blu-rayBOX付属のドラマCD『デジモンフロンティア_希望という名の電車』では高校生になった拓也達の姿が描かれた。
ストーリー
現実世界の東京に住む小学生の神原拓也は、ある日携帯に「未来を決めるゲーム」という謎のメールが届き、興味本位で指示された渋谷駅の地下へ向かう。
そこには現実離れした巨大ステーションが存在し、自分のように呼ばれた多くの子供が謎の列車・トレイルモンに乗って出発する所だった。
自身も乗り込んだ拓也は、別の便に乗った源輝二、同じ便に乗った織本泉、氷見友樹、柴山純平らと出会い、共に未知の世界デジタルワールドへ辿り着く。
到着早々、ボコモン&ネーモンが敵性デジモンに襲われる所に巻き込まれた拓也だったが、その駅町に隠されていた伝説の十闘士の1人・アグニモンのスピリットと巡り合い、自らがソレに進化して事態を切り抜ける。
そしてボコモンから、今この世界は闇に堕ちた大天使・ケルビモンとその配下によって荒らされており、伝説の十闘士の復活こそ、デジタルワールドを救うカギなのだと聴かされる。
当然急な話に困惑する子供たちだったが、元の世界に帰る術を探すためにも仕方なく承諾し、十のスピリットを探しケルビモンを打倒する長い冒険が幕を開けた。
キャラクター一覧
主題歌
オープニングテーマ
- 「FIRE!!」
作詞:山田ひろし/作曲・編曲:太田美知彦/歌:和田光司
声優陣によるカバーバージョンも存在。
歌詞の終わり部分が、偶然にも次回作『デジモンセイバーズ』の1期OP『強ing!Going!My Soul!!』と繋がっている。
また、『月曜から夜ふかし』にて『西川口の治安について調べてみた件』というコーナーを収録していた際に男性が口ずさんでいた様子が偶然にも撮れてしまった事から西川口のイメージが一部で定着している。
この楽曲のアンサーソングに当たるのが「re-fly」という曲である。
エンディングテーマ
- 「イノセント〜無邪気なままで〜」(1話〜26話)
作詞:松木悠/作曲:千綿偉功/編曲:渡部チェル/歌:和田光司
声優陣によるカバーバージョンも存在。
- 「an Endless tale」(27-50話)
作詞:山田ひろし/作曲・編曲:太田美知彦/歌:和田光司&AiM
挿入歌
- 「With the Will」
作詞:大森祥子/作曲・編曲:渡部チェル/歌:和田光司
歴代の挿入歌の中で唯一、レギュラーキャストによるカバー版(『デジモンフロンティアクリスマススマイル』に収録)が存在する。2番の歌詞がED2曲の一部歌詞とリンクしているかのような部分がある(作詞家が違うので、おそらくは偶然だと思われるが)。
作詞:山田ひろし /作曲・編曲:渡部チェル/歌:アユミ
- 「Say,yes!~友樹のテーマ~」(7話)
作詞:大森祥子/作曲・編曲:高橋ひろ/歌:氷見友(渡辺久美子)
- 「サラマンダー~拓也のテーマ~」(18話)
作詞:山田ひろし/作曲・編曲:太田美知彦/歌:神原拓也(竹内順子)
- 「レクイエム」(28話)
作曲:有澤孝紀/歌:東京少年少女合唱隊
- 「折れた翼で-With Broken Wings-~輝一のテーマ~」(30・33・36話)
作詞:halta/作曲・編曲:halta/歌:木村輝一(鈴村健一)
歌唱中に鈴村氏が突然奇妙な笑い声を上げるが、これは歌詞通りの演出であり、ネタではない。
- 「Blader~ダスクモンのテーマ~」(33話)
作詞:山田ひろし/作曲・編曲:太田美知彦/歌:ダスクモン(鈴村健一)
- 「遥かな贈りもの」(50話)
作詞:大森祥子/作曲:千綿偉功/編曲:渡部チェル/歌:和田光司&AiM
劇中未使用曲
- 「スピリット大作戦~ボコモン&ネーモンのテーマ~」
作詞:松井京子/作曲:太田美知彦/歌:ボコモン(杉山佳寿子)・ネーモン(菊池正美)
- 「スパーク!!~純平のテーマ~」
作詞:松井京子/作曲:江川裕史/歌:柴山純平(天田真人)
- 「風のしずく~泉のテーマ~」
作詞:泉川そら/作曲:泉川そら/歌:織本泉(石毛佐和)
- 「in the blue~輝二のテーマ~」
作詞:halta/作曲:halta/歌:源輝二(神谷浩史)
- 「More More Happy Christmas」
作詞:大森祥子/作曲:渡部チェル/編曲:渡部チェル/歌:スピリットシンカーズ
- 「Christmas Night」
作詞:和田光司/作曲:halta/歌:和田光司
各話リスト
話数 | サブタイトル |
---|---|
第1話 | 伝説の闘士! 炎のアグニモン |
第2話 | 光のヴォルフモン 地下迷宮の戦い! |
第3話 | いじめは許さない! 氷のチャックモン進化 |
第4話 | 私のキックは痛いわよ! 女闘士フェアリモン |
第5話 | 大地を揺るがす雷パワー ブリッツモン! |
第6話 | 伝説の五闘士VS新たなる闘士! |
第7話 | 空に浮かぶ街! トイアグモンのおもちゃの国 |
第8話 | みんなを救え! 進化するんだツノモン |
第9話 | 敵はチャックモン!? 謎のテレビの森 |
第10話 | ビーストスピリットは制御不能!? ガルムモン進化! |
第11話 | 俺を倒せ! 伝説の闘士ヴリトラモン暴走 |
第12話 | ほえろヴリトラモン! 倒せギガスモン! |
第13話 | 目覚めよセラフィモン! 十闘士の秘密 |
第14話 | 雷よ! 岩をも砕け! ボルグモン決死のチャレンジ |
第15話 | イカしたビースト進化! カルマーラモン |
第16話 | 強いだけじゃだめなのよ! 美しき闘士シューツモン |
第17話 | ブリザーモン 吹けよ雪、呼べよ氷河! |
第18話 | チキチキ! トレイルモン猛レース |
第19話 | バーガモンを救え! 友樹のピュアな心 |
第20話 | 闇にひそむ謎の闘士ダスクモン! |
第21話 | 五闘士全滅!? 恐るべき闇のパワー! |
第22話 | 我が家へ! 拓也たった一人の帰還 |
第23話 | 感じろデジモンの力! 拓也渾身の作戦 |
第24話 | 対決ボルケーモン! 純平、過去との激闘 |
第25話 | 友樹の孤独な戦い アシュラモンの罠 |
第26話 | ラーナモンの執念! 女デジモン一騎撃ち |
第27話 | 奇跡のダブルスピリット! ベオウルフモン誕生 |
第28話 | 拓也の融合進化 アルダモン技炸裂! |
第29話 | 逃走! 変幻自在セフィロトモン |
第30話 | 飛翔! 闇の闘士ベルグモン |
第31話 | 闇に眠るトレイルモンの墓場 |
第32話 | 明かされた過去! ダスクモンの秘密 |
第33話 | 新たなる闇の闘士! レーベモン&カイザーレオモン |
第34話 | 決戦! バラの明星 オファニモン救出作戦 |
第35話 | スピリットを一つに! 拓也と輝二の究極進化 |
第36話 | 勝利への飛翔! 対決ケルビモンの城 |
第37話 | 決戦! 命ある限り デジタルワールドを取り戻せ |
第38話 | 終わらない死闘! ルーチェモン復活の序曲 |
第39話 | これがデジタルワールド!? 月からの脱出 |
第40話 | 選ばれし者!? エンジェモンを操る少年! |
第41話 | スキャンさせるな! 友情の豆の木 |
第42話 | デジタマを守れ! 消えゆく命の奇跡 |
第43話 | 故郷(ふるさと)消滅! 地獄の使者スカルサタモン |
第44話 | 共に戦え! ゴツモンと輝二の誓い |
第45話 | データかく乱作戦! アキバマーケットを防衛せよ |
第46話 | デジタルワールド消滅!? ルーチェモン暗黒支配 |
第47話 | ロイヤルナイツ散る そして…!! |
第48話 | 光と闇を一つに! 輝一最後の願い |
第49話 | 戦えスサノオモン ルーチェモン人間界到達!! |
第50話 | 時を越えて! 新たな伝説の始まり |
評価・功績
上記にあるように「子供たち自身がデジモンに変身をする」というパートナーデジモンがいないというこれまでのデジモンシリーズの根底を覆す要素は、旧来のデジモンファンから大きな反発を受けてしまった。さらに前作から続いていた視聴率低迷やグッズの売り上げ不調も重なり、1999年初放送の『デジモンアドベンチャー』から約4年間続いたデジモンアニメシリーズ枠に終止符が打たれることとなった(奇しくも、後番組は人間と魔物がパートナー関係になる物語の『金色のガッシュベル!』)。シリーズ化は途絶えたものの、約3年後には『デジモンセイバーズ』が放送され、以降も不定期にデジモンアニメが制作されている。
物語上においても、全編通して主人公達が同じ敵相手に敗北と撤退を繰り返す展開は良くも悪くもネタにされやすい。ソフトや配信では2時間程度で見られる長さながら、放送当時は最悪1ヶ月間まるまるすっきり勝利する回がないという、リアルタイムで視聴している子供からすればかなりフラストレーションの溜まる展開も悪い意味で目立ってしまった(この件で今なお、グロットモン及びギガスモンやメルキューレモンを非常に嫌う人も多い)。
よって挿入歌として評価の高い「The last element」も負けフラグBGMとしても名を馳せてしまうことに(もちろん格好良く勝利する際にも使用されているが)。
また、レギュラー間の格差が他作品より激しいことも問題の一つに挙げられ、完全体~究極体相応の戦力を持てたのは拓也と輝二の二名のみ。特に後者は残り4人が戦闘自体出来なくなるリスクがあった為余計に目立った。
本来は輝かしい正義の集団であるロイヤルナイツを悪役に採用した悪影響も大きく、次作『デジモンセイバーズ』でも二連続で同じ立ち位置にされた事で、『悪の親玉の手下であるロクでもない連中』というレッテルを貼られ、古くからのファンから非難が出てしまった。
特にロードナイトモンは今作でのイメージが後続作品でも用いられており『ロイヤルナイツの負の象徴』『ロイヤルナイツの名を穢した面汚し』と言う人までいる程。
こうした状況から劇場版に至っては(東映アニメフェア自体が低迷期にあったとはいえ)、公開初日でガラ空きという無惨な事態にまで追い込まれてしまった。
とはいえこれらが一概に批判を受けていたわけではない。負けを繰り返すからこそ憎き宿敵を倒す場面の爽快感が生まれたりするのは一つの見所となっている(ヴリトラモンやボルグモン、アルダモンの初陣は特に挙げられる)。
また「それぞれの大きな欠点を認知し、克服していく子供達の成長を描く」という観点でみると、シリーズ随一に力を入れている作品である。序盤では印象の薄い柴山純平が、後半ではその縁の下の力持ちキャラのブレなさから好印象になる点が顕著と言えるだろう。
また、ヒーローものの変身シーンとシリーズ特有の進化シーンを上手く融合させた非常に凝った進化バンクなどは評価が高い。
時代の変化に伴い当時から本作を好んでいたファンもネットで発言できるようになり、それを切っ掛けに新規の後発視聴者や見方を改めた再視聴者も現れ、それによりBlu-ray化がなされるなど、放送当時に比べれば、その独自性の強い作劇は受け入れられるようになっている。
特にルーチェモンはラスボスとして十二分な存在感を発揮した事もあり、現在でもシリーズ内における知名度は高い。
ハイブリッド体を始めとする本作特有の設定面がゲームシリーズとの相性が悪いからか、そちらへの出演はかなり控えめで、フィギュアなどの大人向け玩具展開もされていないなど、シリーズにおいては本作以降のデジモン作品と同様に不遇な扱いを受けていた。
2020年から多くの媒体で扱われるようになり、20周年企画や商品などが展開され、前作テイマーズとほぼ変わらない扱いを受けるようになった。
余談
- パートナーデジモンがいないことが特徴とされる本作だが、各スピリットには十闘士の意思が宿っていたため、実際にはパートナーデジモンに相当するデジモンはいたのである。(作中でもスピリットがデジヴァイスを通して子供達に語りかけているような描写は何度か存在する。)
- 古代の十闘士は本編ではOPにも見られるシルエットのみでの登場で、過去の戦いもその一枚絵が動くだけの、実質的に設定のみの存在になっている。劇場版ではエンシェントグレイモンとエンシェントガルルモンが登場し、戦闘を行った。
- また、ハイブリッド体のうち、融合形態も火と光の闘士を除いて本編には未登場。主役関連デジモンではシリーズ屈指の未登場数を誇る作品となった。
- 本作固有のカテゴライズとして人型デジモンを指す「ヒューマンデジモン」と獣型デジモンを指す「ビーストデジモン」という呼称が存在する。
- 4作目かつデジタルワールドが主な舞台なので当時は屈指のデジモンの登場数を誇る作品であり、歴代デジモンがモブとして登場する。
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デジモン四部作 - 「デジモンアドベンチャー」からから本作までの4作を指す通称
ディースキャナ / Dスキャナ 伝説の十闘士 スピリットエボリューション ビースト進化
ロッテリア:本作を最後にタイアップが終了。『デジモンクロスウォーズ』ではマクドナルドがスポンサーとなった。
劇場版「デジモンフロンティア 古代デジモン復活‼」
他作品
スマイルプリキュア!:10年後に放送されていた東映アニメ。メンバーが5人いて、しかも属性が同じである。
ポケットモンスターReBURST:同じく人間がモンスターに進化するというコンセプトを持つ。
他言語表記