概要
「人魚の森」とは、高橋留美子による漫画。本来は短編シリーズ3作目の個別作品の題名。
シリーズ作品を単行本化する時に、豪華装丁の単行本「るーみっくわーるど すぺしゃる」という短編集のくくりで発刊されたため、単行本の通例として「収録作の中で最も内容を表すであろう作品の題を短編集のタイトルとして引用する」という編集者判断が行われたために、シリーズ単行本第1巻のタイトルとして採用された。(そのため、シリーズ第2巻の単行本タイトルは「人魚の森2」などの巻数記載ではなく、シリーズ第6作のタイトルである「人魚の傷」になっている)漫画単行本として第20回「星雲賞」を受賞。
ところが、これ(短編集発刊と短編集タイトルでの星雲賞受賞)がアダとなり、後のメディア化において制作各社がシリーズタイトルを「人魚の森」とする事態が多発。結果として高橋留美子による人魚をテーマに置いた読切作品シリーズの総称となった。
が、これでは単に「人魚の森」としてしまうと、高橋留美子短編シリーズ第3作のタイトルなのか、単行本第1巻の事を言っているのか、あるいは人魚シリーズそのものを言っているのか、さらにはOVA第1作人魚の森(1991年)を言っているのか、テレビアニメ高橋留美子劇場人魚の森(2003)を指しているのか、その区別が非常に紛らわしい。そこで近年においては公式側は漫画作品のシリーズの総称に対しては『人魚シリーズ』と呼称するのが通例になっている。
『人魚シリーズ』の呼び名は、おおよそ『舎利姫』『夜叉の瞳』あたりの編集者コメントから使われるようになり、2003年以降に発刊された単行本では完全にシリーズに対しては『人魚シリーズ』と呼称している。当然、単行本の巻数表記も「人魚シリーズ(1) 人魚の森」のように「人魚シリーズ」の側についていて「人魚の森」は巻のサブタイトル(表題作)に落ち着いている。(ちなみに2巻は従来通り「人魚の傷」を表題作としたが、新規単行本となった3巻では「夜叉の瞳」が表題作に採用された)
『人魚シリーズ』としては1984年(昭和59年)から「週刊少年サンデー増刊号」「週刊少年サンデー」に不定期掲載されており、一応は現在も継続中とされている。(『まじっく快斗』辺りと、ほぼ同じ扱い)ただし、現時点で発表全作品が単行本収録されている(=作品としてキリがいい)ので、続けられるかは未知数。実際、現時点で最後の作品である『最後の顔』1994年(平成6年)の発表から30年近くも空いている。
「MFG人魚シリーズ(2014年発行)」掲載の高橋留美子氏インタビューによると『(最終回は)特に想定していません。終われといえば、いつでも終われる話ですが。かといって、じゃあ現在、終わっているのかっていうと、自分の中では終わっていないんです。』『いつかあと一本ぐらい描ける日が来ることを願っております。』とのこと。
アニメ「高橋留美子劇場」の第2クール(高橋留美子劇場 第2シリーズ)において、「高橋留美子劇場 人魚の森」として2003年に放送された。全11話。
テレビ東京でアニメ化されたため余りにもひどい表現規制をされ(裸、流血、妖怪キャラ、台詞等)、全部有料放送やOVAで作り直し(その際に「夜叉の瞳」もアニメ化)を求める声は少なくない。
ストーリー
約500年前、漁師の湧太は仲間と共に浜に流れ着いた人魚の肉を面白半分に食べてしまう。仲間が次々と死んでいくなか湧太だけが生き残り、不老不死の体となってしまった。不老不死の妙薬と呼ばれる人魚の肉は、力が強すぎるために普通の人間にとっては猛毒だったのである。元の人間に戻るために人魚を探す旅を続け、ついに囚われの身の少女真魚と出会うことになる。
登場人物(CVは人魚シリーズ第二弾)
人魚は笑わない
1984年 『週刊少年サンデー増刊』 8-9月号
闘魚の里
1985年 『週刊少年サンデー増刊』 9-10月号
人魚の森
1987年 『週刊少年サンデー』 22-23号
夢の終わり
1988年 『週刊少年サンデー』 23号
約束の明日
1990年 『週刊少年サンデー』 45-46号
人魚の傷
1992年 『週刊少年サンデー』 5-6号
舎利姫
1992年 『週刊少年サンデー』6月増刊号
夜叉の瞳
1993年 『週刊少年サンデー』 5-6号
最後の顔
1994年 『週刊少年サンデー』 7-8号
主題歌
オープニングテーマ
「Like an angel」
作詞・作曲・歌 - 石川知亜紀 / 編曲 - 加藤みちあき
エンディングテーマ
「水たまり」
作詞・歌 - kayoko / 作曲 - kayoko&小宮山伸介 / 編曲 - 小宮山伸介
本作における人魚の設定
・獣じみた醜い容姿をしている。具体的には、人間に似た上半身に魚のような下半身を持つが、目は魚のように真ん丸で瞼がなく、鼻の頭がなく鼻孔のみ、口には牙が、指先には鋭い爪が生えている。この姿のときは人間との会話が不可能で、行動にも理性がない。
・人魚の中には、人間に擬態する者もいる。この場合、人間と同等の理性を持ち意思疎通も可能。擬態には、二本足が生えた人間そのものの姿と、西洋の人魚姫のように上半身は人間(の女性)で下半身が魚の姿がある。人間に擬態する具体的な方法は不明だが、人間そのものに擬態した人魚は、水に入ることで下半身が魚の姿に変化している。
・人魚は若返るために定期的に人間を捕らえて人魚の肉を食べさせて不老不死の人間を造り、その人間の肉を食べる。その際人魚の顔は喰らった人間の顔と同じになる。もし、食べられなければ理性を失い、二度と人の形に戻ることはできない。この時に使う人魚の肉は、仲間内で一番長く生きた者を殺して使う。
・人魚は生命力が強い。たとえミイラ化しても頭がついていれば、飢餓状態で数十年たとうと生きのびることができる。
・人魚には「陸の人魚」と「海の人魚」が存在しており、陸の人魚にとって海の人魚は捕食対象であり子を産むときの滋養とされる。また妊娠期間も3年以上と長い。
また「人魚の肉を食べると不老不死になれる」との伝承が広く伝わっているが、作中では実際に人魚の肉を食べた人間について以下のような設定がある。
・人魚の肉を食べた人間のうち人の形を保ったまま永続的な不老不死になれる者はごく少数しかいない。多くは体の変化に耐えられず死亡し、かろうじて一命を保っても「なりそこない」と呼ばれる化物と化すことが多い。また体の一部のみ「なりそこない」となる場合もある。人の形を保ったまま不老不死になってもその効力に限界がある者もおり時間と共に傷の治りが遅くなり死ぬ場合もある。
・「なりそこない」は完全に人間性を失う者もいるが、多少人間性を残す者もいる。
・人魚の肉を食べて不老不死になった者は後述の方法でないと死ぬ事はできず、元の体に戻ることは出来ない。
・人魚の肉を食べた者は不死になった者・なりそこないであるに関わらず、首を切り落とすか、人魚の肉を腐らせて作った毒薬で死ぬ。
余談
人魚シリーズ第一弾のアニメOVA版では人魚の森が1991年8月、人魚の傷が1993年9月に発売された。
関連タグ
人魚シリーズ - 表記揺れ。というか公式側が近年、区別のために使うようになったシリーズへの呼称。
るーみっくわーるど/るーみっく - 当初はこのシリーズの特別版という扱いだった。高橋留美子のキャラクター同士のクロスオーバーにも使用される。
外部リンク
TVアニメ公式サイト(現在は削除)