法螺貝とは、巻貝の一種である。
概説
フジツボガイ科・ホラガイ目に属する巻貝。
一抱えほどにまで成長する、かなり大型の貝。
紀伊半島から南方の、温かい海域に生息する。
内臓は貝毒が強いため、そこを取り除いて食用にできる。加熱・生食のどちらも可能。
ただし、かなり筋力の強い貝のため、貝殻を傷つけずに取り出すのは難しいとされる。
サンゴの天敵で知られるオニヒトデを捕食するという、なかなかインパクトのある生態をしている。
楽器としての法螺貝
加工して楽器にしたものが日本、東南アジア、オセアニアで見られる。
日本では合戦時に景気付けに鳴らしたり、山伏の持ち物として知られている。
「ホラをふく」のホラとは法螺貝のこと。
仏教では釈迦の説法の比喩「獅子吼(ししく)」に通じるとされ、その音で邪気を祓い、空間を清めることが出来るとしている。
貝殻の天辺を切り落として吹き口を付け、螺緒(かいのお)と飛ばれる籠目編みの網に入れて携行する。
なおリードは唇簧(リップリード)に分類される。
かつては東日本以北では産出しないため、竹や木で造られた代用品も用いられていた。
インド神話にはヴィシュヌのように法螺貝を持物とする神がいる。
この法螺貝はパンチャジャナと呼ばれ、サガラ王の暴虐な息子アマランジャが化けたものでクリシュナに退治された後、加工されたものである。
叙事詩『マハーバーラタ』の合戦を描いた場面では、後世の日本と同じ塩梅で戦士たちが法螺貝を吹いている。
実際、ギリシャ神話ではトリトンの法螺貝は、海の波風を操作する神器として登場している。
保護対象生物
日本では環境省の指針で、保護対象として無許可での捕獲が禁止されている。
理由は、楽器として加工されることから乱獲を防ぐため、そしてオニヒトデを捕食する生態からサンゴの保護のために一定数を確保しておきたいねらいがあるため。
現在、楽器に加工された法螺貝の多くは、海外産の法螺貝を加工したものである。