植物のわさび
アブラナ科ワサビ属の植物。日本原産。渓流の脇などに生息する。正確な植物種名は「ワサビ」(動植物名は片仮名表記で書くのが一般的な為)。
漢字では「山葵」と書く。葉っぱの形が葵(アオイ)に似ている事に由来する。
独特の辛さがあり、香辛料として利用される。野生種が稀少になってしまっているため、栽培も広く行われている。
主に茎をすりおろしたものを使うが、実は捨てるところのない植物。
葉や茎は天麩羅にしたり醤油で煮て食す(ちなみにコチラも辛い)。根や茎を粕漬けにしたモノが「わさび漬け」である。
高い殺菌効果もあり、刺身や握り寿司にワサビを使うのはその為である。すり下ろしたものを巻き寿司にすることもあり、ナミダ巻きと呼ばれる(ナミダ=寿司屋の符帳でワサビの事)。
ちなみに現在一般に広まっている練りわさびやわさびチューブは、殆どがホースラディッシュとマスタードを混ぜ、その中に僅かばかりの本わさびの細根や葉を入れた「偽わさび」とでも呼ぶべきものである。海外に至っては緑色に着色しただけで本わさび成分すら入っていないものが大半である。
本物のワサビはあまり辛くないとよく言われている。辛さとほろ苦さの中に独特の匂いが突き抜け、練りわさびとは似ても似つかないとか。
わさびは、江戸時代からしばしばご禁制になるほどの贅沢品であった。
その理由は、葉っぱ。その葉っぱの成り方が、将軍(徳川)家の家紋に非常に似ている事から将軍家への献上品としてもっぱら用いられ、農民はもちろんの事平民の口に入る事もなかったとか。
なお、元々は平民のグルメだった握り寿司には練り辛子が用いられていた。
近年は海外への寿司の普及もあってワサビ一本あたりの値段は高騰し続けており、時々スーパーで見かける1000円程の物はまだ安い方で、太い根になると一本5000円を下らないこともしばしば。相変わらず庶民には手の届かない代物なのである。
後述の栽培の難しさから未だに大量生産には至っていないのが現状である。
栽培においては、畑に水を流す独特の栽培法で知られ、このため栽培場はわさび田と呼ばれる。
ワサビは常に根からアリルイソチオシアネートを分泌しており、これによって周囲の土壌を殺菌し縄張りを確保する特性を持っているが、このアリルイソチオシアネートによって自家中毒も起こしており、そのままでは成長に悪影響を及ぼすため、これを洗い流す必要があるためである。
ちなみに陸にも植えられるがこの自家中毒のせいで根茎は殆ど育たない。この場合もっぱら葉(わさび菜)の採取を目的に植えられる。
特に肥料などを必要としないものの、環境の変化に敏感で、その栽培条件は極めて厳しい。
まず、ワサビの種は容易に発芽しない。発芽の条件が整うまで種を冷暗所に保管する必要がある。
冷涼かつある程度の標高を持った、大量の湧き水が流れる土地を必要とする。年間を通して常に8℃~18℃程度までの水温を保つ必要がある。
ワサビは透水性の高い土壌に植えねばならず、泥を洗い流すため数年に一度砂利を総入れ替えする必要がある。
また日陰で育つ植物なので、夏の直射日光を避けるため、広大なカバーが必要になることもある。
そしてやっとこれだけの環境を揃えても、根が出荷できる大きさになるまで2~3年を要する。
このため、特に栽培の難しい植物と言われている。
主な生産地としては、静岡県の伊豆半島や長野県の安曇野などが知られている。まだごく一部だが、海外でもワサビの栽培に適した土地を探して栽培が試みられている。
ワサビといえば・・・
ワサビは辛さはともかく、あのツーンとくる刺激も特徴であるが、実は回避方法がある。
それは、ワサビを口にした時に呼吸する場合に鼻から息を吸い込み、口から息を吐く事であのツーンとくるアレを回避する事ができる。
表記揺れ
関連タグ
カプサイシン:わさびはこれを全く含まないため、スコヴィル値はゼロ。