概要
古今東西の神話・伝承などに伝わる、様々な幻獣を収集・掲載した辞典の体裁の書籍。
この名の書物としてはアルゼンチン出身の作家、小説家、詩人であるホルヘ・ルイス ボルヘスとマルガリータ・ゲレロによって1957年に発表され、1969年に増補改訂版が発刊された文学作品が有名である。
ボルヘスの『幻獣辞典』は神話の幻獣の紹介が主ではあるが、古典文学や同時代の文学作品に登場する言葉遊びなどで生まれた怪物や、ボルヘス自身が創造したオリジナルの幻獣がそれとなく紛れ込ませてある。
また同作者の出身地である、南米の伝承に登場するマイナーな幻獣もいくつか掲載されているため、貴重な資料であるといえる。
この作品で紹介されている幻獣は、ゲーム文化黎明期のTRPGの古典である『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に登場するモンスターに多くが採用され、後のファンタジーRPGに登場するモンスターの方向性を決定づけた。
日本においては昭和時代に出版された、怪奇作家佐藤有文や中岡俊哉らによる児童向けの『世界妖怪図鑑』や、澁澤龍彦や荒俣宏の著作などに大きな影響を与えたと考えられる。
なお水木しげる御大も『水木しげるの世界幻獣事典』を、弟子の森野達弥氏も『怪物幻想画集』という幻獣辞典を発表している。