基本情報技術者試験
きほんじょうほうぎじゅつしゃしけん
概要
平成13年度(2001年度)より実施されている情報処理技術者試験の区分の一つ。
経済産業省所管の独立行政法人である情報処理推進機構(IPA)が実施している。
英語名はFundamental Information Technology Engineer Examinationで、略号はFE。
IPAが定めた試験制度のスキルレベル2に相当する区分である。(最高ランクはレベル4。ちなみに上位区分の応用情報技術者試験はレベル3、下位区分のITパスポート試験はレベル1。情報セキュリティマネジメント試験は基本情報技術者と同じレベル2。)
1970年(昭和45年)から2000年(平成12年)まで実施された第二種情報処理技術者試験の後継の区分であり、プログラマーやシステムエンジニアへの登竜門として昔から有名な国家試験である。
試験は4月第3日曜日と10月第3日曜日の年2回行われる。受験資格は特に設定されておらず、誰でも受験できる。年間の受験者数は10万人を超え、人気の資格試験である。
試験に合格することで基本情報技術者の資格を取得できる。更新制度および有効期限はない(一生有効)。
ただし、取得しても特に独占業務(これがないとできない仕事)は発生しないので、厳密な意味での国家資格(免許)ではない。この点は注意が必要である。(簡単に言えば、日商簿記検定やTOEICなど能力認定試験の類に近い。)
ただ、だからといって全く無意味なわけではなく、ITエンジニアとして働く上で必要な知識、スキルが身に付いていることを客観的に証明するためには非常に有用な資格ではある。
この試験に合格すると、
など、大きなメリットを得られることも多い。
また、公共機関(警察、都道府県庁、市役所など)のIT関連職種では、基本情報技術者試験などの合格者しか採用しないケースが少なくない。
ただ言ってしまえば「応募にあたって基本情報技術者の資格が必要」と同意義であり、特別有利になるような話ではない。他の受験者と同じく各自治体が実施する公務員採用試験に合格する必要がある。
試験の難易度
「基本」という名前が含まれているので簡単な試験じゃね?
…と誤解する人が多いが、実際には難関国家試験の一つ。合格率は例年20%台と低い(ちなみにこれでもだいぶやさしくなったらしく、昔は10%台だったという。)
下位区分のITパスポート試験が合格率40〜50%であることを考慮すると、だいぶ難易度が高い試験といえる。
この試験を難しくしている理由は、
などがあげられる。
情報系や電子系の学生ならともかく、ITとの関りが薄い学生や社会人が合格できたら正直すごい。
商業高校や工業高校では在学中にこの試験に合格できたら、学校内では「割と勉強できるキャラ」と言われることも多い。
ただし、一般人から見たら難関というだけであり、あくまでスキルレベル2の試験であるため、現役のITエンジニアから見たら基本中の基本というような内容しか出題されていない。
(むしろ現役のITエンジニアが基本情報技術者試験に合格できなかったら適性を疑われてしまうレベル)
一流のエンジニアとして評価されないのであれば、応用情報技術者などもっと上位の資格や、海外の資格の取得も視野に入れておいたほうが良い。
ちなみに他の分野の資格試験と比較すると、不動産業界の宅地建物取引士(宅建)や、経理の日商簿記検定2級などが基本情報技術者試験と同じくらいの難易度と言われることが多い。
なお、基本情報技術者と同じスキルレベル2の区分として情報セキュリティマネジメント試験(セキュマネ)というのがあるが、こちらは(ITエンジニア向けの基本情報技術者と異なり)あくまで一般ユーザー向けの試験であり、出題範囲が狭く、情報技術や開発の知識はほとんど問われないため、実際の難易度は基本情報技術者より低い。セキュマネは合格率も例年50%以上である。
セキュマネでは一般ユーザーとして最低限身に付けておくべきセキュリティ管理の知識が求められる。
試験形式
午前、午後の2科目で構成される。
両方とも60%以上の正解率で合格となり、基本情報技術者の資格が得られる。
逆に言えば「午前で100点満点だったが午後が59点以下だった」というような場合は不合格なので注意!
午前
試験時間150分(2時間30分)。問題数は全80問で、すべて必須解答。4択のマークシート形式。48問以上正解で午前突破となる。
ハードウェア・ソフトウェア、セキュリティ、ネットワーク、データベース、開発技術、マネジメントなどIT全般について幅広い知識が要求される。近年はセキュリティ分野からの出題が多くなっている(全80問中10問程度)。
また、確率論や統計学、線形代数学など高校基礎レベルの数学の問題も出題される他、2009年(平成21年)からは所謂ストラテジと呼ばれる、一見ITと関係なさそうなビジネス系の問題(経営戦略、簿記・会計など)も出題される。
午前はそれほど難易度が高いわけではないが、とにかく範囲が広いため根性が必要。ストラテジの配点割合が結構大きいため(全80問中20問)、人によってはむしろ午後よりキツいと言われることもある。
4択なのでわからない問題でも何かしら埋めておけば正解できるかもしれないので、決して解答用紙に空欄を作らないこと!
また、なぜか過去問の使い回しが多いことで有名(ただし直近の試験からは出題されない。)。丸暗記でも午前は何とか突破できなくもないのだが、知識の定着の観点からあまりオススメできない。
ちなみに学生の場合、通っている学校によっては午前科目を免除することができる場合がある(事前に講座を受講して修了試験に合格する必要がある)。
この制度を利用できれば試験本番は午後対策に集中できるため非常に有利になる。午前免除の有効期間は1年間(本番2回分)である。
対象ではない学生や社会人が午前免除の講習を受講する場合、各種民間の講座などを受けた上で試験を受けなければならないため受験料とは別に費用がかかってしまうため注意。
午後
試験時間150分(2時間30分)。素点方式で採点され、60点以上で合格。
午前と同じくマークシートだが(ちなみに応用情報技術者などもっと上位の試験は記述式)、午前と異なり、長文形式の大問を複数解く形式となっている。
午前を知識科目とするならば、午後は技能、応用力が問われる科目である。長文問題のため国語力が必要。
セキュリティ、アルゴリズム、プログラミングは必須問題で、残りは選択問題数問を解答する。セキュリティは2014年(平成26年)から選択問題から必須問題に昇格している。
特にアルゴリズムとプログラミングは鬼門であり難易度が高いので十分な練習が必要。
プログラミングについて
午後試験のプログラミング言語はC言語、Java、Python、アセンブラ言語(CASL)、表計算ソフトの5つの中から1つ選択して解答する。
Pythonは2020年(令和2年)度の試験から選択科目に追加される。2019年(平成31年、令和元年)まではCOBOLが選択可能だったが、Pythonと入れ替わる形で廃止された。
プログラミング初心者はアセンブラか表計算がオススメである。
表計算は2009年(平成21年)4月から選択問題として追加された。
実際の関数や機能はMicrosoftのExcelのものにかなり近いのだが、国家試験であるため、特定の製品について出題することができないことから、表向きは試験専用のオリジナルソフトウェアとされている。
プログラミング初心者向けの言語ではあるが、関数および機能の問題だけでなく、マクロ(アルゴリズム)に関する内容も出題されるため、難易度は決して低くはない。
※表計算は元々は初級システムアドミニストレータ試験(初級シスアド)という別の区分に出題されていた。ITエンジニア向けではなく一般ユーザー向けの試験で、2009年(平成21年)4月の試験を最後に廃止された。
アセンブラ言語は試験専用のオリジナル言語であるCASLが出題される。そもそも架空の言語であるため、言語仕様は試験中にも示されるが、もちろん予習しておいたほうが良い。