概要
- 身長:60m
- 体重:15000t
謎の発光体がアストロボートに噴霧した発光物質から誕生した宇宙怪獣。
まるでUFOのような独特な形状の頭部と、無数の瘤で覆われた太ましい胴体が特徴。
主な餌は電気エネルギーであり、そのため発電所などのエネルギープラントを積極的に狙う。
武器は両腕の赤い長い爪と口から吐く白色の火の玉で、これで航空機を撃ち落とす。
長距離移動の際には自らの体全体を赤い火球に包んで飛行することも可能で、その移動範囲は想像以上に広い。
その身体は並の火器ではほとんどダメージにはならないが、噴霧した物質に含まれているギララニウムが弱点になっており、これによってエネルギーを吸収されると体が縮んでしまい、最終的には元の胞子状の物体に戻ってしまう。
アストロボート「AAB-γ号」が謎の飛行物体と接触後に機体に付着していた胞子状の物体が地球に持ち帰られた後にそれから誕生。誕生直後こそ小型であったが、電気エネルギーを吸収して巨大化を果たし、自身にとっての食料であるエネルギーを求めて日本を蹂躙する。
その由来や正体については最後まで語られず、このギララを生み出す元となった胞子を地球に送りつけた発光体との関係性も不明のままであった。
名前の由来
脚本段階では「デモラ」と仮称されていたが、公開を前に正式名称が「週刊少年マガジン」やポスターによって公募され、210564人の応募(松竹の発表)の中から東京都在住の12歳の女子小学生の案として「ギララ」が採用された。
造形は開米栄三と小田切幸夫によって行われた。
宇宙大怪獣ギララ
1967年(昭和42年)3月25日に公開された松竹が制作した唯一の怪獣映画作品。
製作費は松竹によると当時における1億5千万円。
1960年代においては東宝で「ゴジラシリーズ」が、大映で「ガメラシリーズ」が制作、公開されたことによる“一大怪獣映画ブーム”が起き、それに加えてTVでは円谷監督の興した円谷特技プロダクションによるテレビ番組『ウルトラQ』が放映されたことでさらに怪獣ものコンテンツが活発化、その勢いを乗って日活が『大巨獣ガッパ』を製作し、そしてそれに対抗する形で松竹が制作したのがこの『宇宙大怪獣ギララ』である。
本作は東宝や大映の怪獣映画と差別化を図るため、宇宙を舞台にしたSF作品としての制作を前提にしており、その科学考証にはSF作家の光瀬龍が招かれ、前半部では月面基地や宇宙空間におけるメカニック描写に力が入れられているが、一方で松竹昔ながらの「松竹大船調」の演出も盛り込まれているのも特徴である。
それと同時に本作は海外への輸出も視野に入れて「社団法人・映画輸出振興協会」からの輸出映画産業振興金融措置の融資を受けて製作されている。
登場メカニック
- アストロボート
- 全長:28m
- 全幅:14.5m
- 重量:20t
宇宙探査と宇宙開発を目的にFAFCが新たに開発した新型原子力宇宙船。
正式名称は「Atmic Astro Boat」(AAB)で別名「宇宙船AAB-γ(ガンマ)」
正体不明の発光体に遭遇して消息を断った他の宇宙探査船の捜索中に自身もその発光体に襲われ、後にギララとなる胞子を機体に吹き付けられ、それを地球に持ち込んでしまう。
劇中には他に「アストロボート」を収納する宇宙母艦、月面移動用の「アストロスクーター」が登場した。
また、東宝以外の邦画作品では珍しく架空の兵器として「ミサイル搭載装甲車」と「自走レーザー砲」も登場する。実在の兵器として自衛隊のF-104や61式戦車が登場する。
キャスト
佐野:和崎俊也
リーザ:ペギー・ニール
バーマン博士:フランツ・グルーベル
道子:原田糸子
宮本:柳沢真一
塩田:園井啓介
加藤博士:岡田英次
FAFC技官:穂積隆信
木村:浜田寅彦
月ステーション通信員:藤岡弘
スタッフ
製作総指揮:中島渉
製作補:島田昭彦
監督:二本松嘉瑞
脚本:二本松嘉瑞、元持栄美、石田守良
特撮監督:池田博
特撮監修:川上景司(日本特撮映画株式会社)
撮影:平瀬静雄、大越千虎
美術:重田重盛
編集:杉原よし
音楽:いずみたく
監修:光瀬龍
主題歌
「ギララのロック」
作詞:永六輔 作曲:いずみたく 歌:ボニージャックス セリフ:和崎俊也
「月と星のバラード」
作詞:永六輔 作曲:いずみたく 歌:倍賞千恵子
余談
怪獣としてはどちらかといえばマイナーかつマニアックなギララであったが、2008年には河崎実監督によるこのギララが再登場する『ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発』が公開された。
上記の『宇宙大怪獣ギララ』を現代映画として復活させた作品だが、物語は前作と全く異なっており、第34回主要国首脳会議(サミット)が行われた北海道にギララが現れてタケ魔人なる巨人と戦うというもので、そのタケ魔人役にはあのビートたけしが起用されている。
同じ松竹の映画である『男はつらいよ 寅次郎真実一路』に出演したことがあり(とはいえ、出演シーンは新撮ではなく原作の流用だが)、渥美清の演じる車寅次郎と共演している。
シリーズ恒例の冒頭の夢のシーンで登場、原作同様日本全土を滅茶苦茶に破壊して回るが、最後は総理大臣の説得を受けて立ち上がった寅次郎博士のお守りから発せられた謎の光線を受け、「トラサ~ン……トラサァァァン……」という悲しげな鳴き声を発しながら倒された(と思われる)。
ちなみに、上記のようにマイナーな怪獣であったためなのか、同じ松竹のキャラでありながら、作中の人物からは思いっきり「あ、ゴジラだ!」と言われてしまっている。哀れ。