概要
鬼に似て眼光鋭く、歯噛みする音は雷の如く響くと言う。
一度出現して標的を驚かせ、その後相手の不意をついてもう一度驚かす、所謂「再度の怪」と呼ばれる妖怪のひとつ。最悪の場合、驚かされた側はショックで死んでしまう。
資料によっては「朱の盤」「首の番」と表記していずれも「しゅのばん」と読み、此方が本来の呼び名だった可能性がある。
諏訪(長野県)にも登場し、こちらは舌が異様に長い老婆の妖怪「舌長婆」が宿に泊まりに来た二人の旅人を襲おうと、寝ている者の顔を嘗めていた所「舌長婆、舌長婆、諏訪の朱の盆じゃ。捗らなければ俺が手伝ってやろう」と扉を打ち破って朱の盆が登場する。こちらは顔の長さが2mもある赤い大坊主である。起きていた旅人が刀で切りつけると朱の盆は消えたが、もう一人の寝ていた方は舌長婆に連れ去られた。同時に泊まっていたボロ屋も消え、残された旅人は仕方なく大木に腰掛けて夜を過ごした。翌朝、あたりを見回すと連れ去られた者は骨だけになって横たわっていたという。
伝承で別々の妖怪が協力して人を襲うというのは珍しいケースである。
創作での扱い
ゲゲゲの鬼太郎
CV:小林通孝(3期)、郷里大輔(4期)、小西克幸(5期)、チョー(6期)
元々それほどメジャーな妖怪では無かったが、水木しげるの漫画作品『ゲゲゲの鬼太郎』で敵方妖怪の総大将・ぬらりひょんの手下として描かれてから、少しずつではあるが一般にその名が知られるようになった。
元ネタでは人を驚かせたり、場合によっては命も奪う恐ろしい妖怪だが、鬼太郎シリーズでは一貫して「ぬらりひょんの腰巾着」「間抜けでどこか憎めない小悪党」といった姿で描かれている。妖怪同士での戦闘もほとんどなく、いざ戦いになったとしても自分の力で勝利した事は皆無に等しい程の弱小妖怪(さすがに人間相手だと負ける事はないので最低限の力はある模様)。
- 3期
本来小心者の妖怪だったが、一人前の悪党妖怪になるためにぬらりひょんの子分となった。
初登場時は人間に化けてディスコで踊り、正体を露にして人間達を驚かせるという前述の伝承のような演出があった。ぬらりひょんからは無能者と蔑まれていたが根気強く従っていた。
だが天童ユメコの優しさに触れて改心し、ぬらりひょんへの義理もあって「あんたはオイラが居ないと誰も悲しまないから、せめて一緒に地獄へ行きましょう」と道連れにして、鬼太郎たちを守る最期を選び消息を絶った。
- 4期
歴代で一番巨漢で怪力の持ち主であるが、呑気でお人よしな性格。ぬらりひょんの食事を作ったり身の回りの世話をするなど、子分というより使用人のような立場にある。
悪い事に協力させられている自覚に乏しく、凄まじいまでのオトボケぶりで、主人のぬらりひょんからもツッコミを入れられる時があったほど。
- 5期
ぬらりひょんの最古参の部下であり、ぬらりひょんから悪行の手ほどきを受けるなど弟子のような立場にある。ぬらりひょんも彼を憎からず思っている節がある。
だが5期のぬらりひょん一味には朱の盆以外にも有能な部下が大勢いるため、贔屓するわけにもいかずぬらりひょんから辛く当たられる事も多かった。
妖怪城覚醒のため各地から家鳴りを集めるもうまくいかず、鬼太郎達との交戦中に苦労してやっと1体捕まえて報告に来るも、無能ぶりにウンザリしたぬらりひょんに見放されてしまう(他の部下の手前、朱の盆に甘くするわけにはいかなかった)が、ショックに泣きながら駆け出した矢先に次々と戦闘に巻き込まれてボコボコにされた(あまりの想定外ぶりに敵味方双方から「ごめん」と謝られている)。ところがそれが家鳴り達に大ウケし、結果やる気を出させて妖怪城を覚醒させることに見事成功した。さすがにぬらりひょんも想定外ではあったが、まさに「天が味方した」としか言いようのない偶然力が働いた功績に手のひら返しで称賛している(本音では朱の盆を呼び戻す口実ができたと喜んでいたと思われる)。
- 6期[[[pixivimage:82344003]リンク先記事名]]
ぬらりひょんの使い走りとして妖怪との連絡調整や人間の悪徳政治家に賄賂を送り届けるなど、秘書のような立場にある。大逆の四将の封印が解けた際に、地獄の最下層で赤い顔の妖怪が目撃されたことから四将の封印を解いた犯人は彼だと思われたが、実際は真犯人の手がかり的存在であることが発覚する。
今作においても間抜けな面は健在だが、戦闘力においては歴代でもトップクラスを誇り、鬼太郎のリモコン下駄を弾き、髪の毛針も「ちょっと痛いけど特に問題はない」と言い、多くの妖怪にダメージを与えたちゃんちゃんこでの打撃攻撃も難なく防ぎ逆に捕まえて殴り返すなど、ぬらりひょんの側近として恥じぬ実力を見せた。
更に第94話では、鬼太郎たちですら弱点を突かなければ太刀打ちできなかった狼男ヴォルフガングの攻撃を止めるなど、かなり強力な妖怪となっている。
第95話では、ぬらりひょんを乗せた車を運転したり、武装した隊員たちをガトリング銃で射殺するなど、機械の操縦もできるようだ。
最終回ではぬらりひょんが鬼太郎たちの前で自害したため独り寂しくしている。
天守物語(泉鏡花の戯曲)
舌長姥と共に、猪苗代城の女怪・亀姫の眷属として、主人公・富姫が住まう姫路城を訪れる。「大山伏の扮装(いでたち)、頭に犀のごとき角一つあり、眼円かに面の色朱よりも赤く、手と脚、瓜に似て青し」と表され、自らは「岩代国会津郡十文字ヶ原青五輪のあたりに罷在る、奥州変化の先達、允殿館のあるじ朱の盤坊」と名乗る。
到着早々、女童をおどかすが「いやなおじさん」「怖くはありませんよ」と涼しく返されて苦笑い。全体的にコミカルな役どころではあるが、土産に持参したのが血まみれの男の生首である辺りは流石に妖怪である。