「面倒くさい」
「自分を制御できなければ いつか取り返しのつかないことになる」
概要
CV:竹本英史
帝国陸軍北海道第七師団歩兵第27聯隊に所属する軍人。通称通り階級は軍曹。
灰汁の強い第七師団の中で貴重な常識人なのだがそれ故苦労人となっている。
尾形曰く、風呂が長いらしい。
人物
目頭から降りる真っ直ぐなしわと、異様に低い鼻という変わった風貌の持ち主。鼻は母親譲り。
真面目な性格で、命令に忠実に従う典型的な軍人でありながら、冷静な判断力と大胆な行動力を併せ持つ。小柄ながらも肉体は鍛え抜かれており戦闘力は高い。尾形百之助からも「屈強な兵士」と評されている。
鶴見中尉の任務を命をかけて順守する一方で、彼の蛮行に動揺したり、中尉の最終目標が「戦争中毒」に他ならないと考えているなど、盲目的に中尉を崇拝している訳ではなく、真っ当な常識を持ち合わせている。また、江渡貝の護衛をしていた際、同じく護衛であった前山が尾形に射殺された時は激昂しており、戦友に対する仲間意識も強いようだ。
江渡貝弥作の監視、モルヒネ中毒の二階堂浩平の世話、鯉登少尉の補佐など狂人奇人の相手ばかりをさせられており、気が休まらない苦労人と化している。
特に、鯉登少尉は鶴見中尉の前では緊張から早口の薩摩弁になってしまうため、彼の通訳にもなっている。
後述の過去からロシア語を話すことができる。
作中での活躍
鶴見中尉の片腕として働く中で、刺青人皮の偽物を作ることになった剥製職人江渡貝弥作のお目付け役として監視の任に就く。
鶴見中尉の企みに気づいた尾形や杉元らから江渡貝と刺青人皮(及びその偽物)を守る為に交戦。大規模な炭鉱事故に巻き込まれ江渡貝は守りきれなかったが、命からがら帰還を果たし、刺青人皮の偽物5枚を鶴見の元に持ち帰ることに成功した。
その後は旭川での任を解かれ囚人狩りに加わる鯉登少尉の補佐役も務めることになる。内心彼の奇行を面倒くさいと思いながら真顔でフォローしている。
網走監獄襲撃にも出撃し、武装した看守、囚人たちと激戦を繰り広げるも生還する。
襲撃後は鶴見中尉の命にて杉元・鯉登・谷垣らと共に先遣隊として樺太へ渡りキロランケらを追うこととなったのだが、だだでさえ鯉登という問題児に手を焼いている中で、お守りの対象が更に二人増えてしまい、その苦労は倍増している。
過去
第七師団の良心とも言える男だが、かつては尊属殺人で死刑を求刑されていた(明治時代の法律では、自分の親を殺す「尊属殺人」は無期懲役あるいは死刑のみが規定されていた。日本では1973年に事実上、撤廃された。現代も、フランスや中国などでは、尊属殺の規定を残す国もある)。
父親が黒い噂の絶えない人物だったことで、月島も「人殺しの息子」「悪童」などと呼ばれる荒くれ者だった。
唯一彼を名前で呼んでいたのはいご草(エゴノリ)に似た癖毛の少女、通称いご草ちゃんだけで、彼女とは日清戦争帰還後の駆け落ちを約束していた。
だが「息子の戦死」の虚言を月島の父が広め、いご草ちゃんは海岸に履き物を残して行方不明に。これまでの怒りもあって月島は父親を撲殺し死刑が確定。しかし鶴見中尉の策略で来るロシアとの戦争に必要な人材としてロシア語を猛勉強させられ、最終的に釈放される。
鶴見中尉はいご草ちゃんの行方と真実について
「いご草ちゃんの両親が、彼女を気に入った財閥幹部の息子へ嫁がせるために、月島の父親に金を渡してデマを広めさせ、いご草ちゃんに月島を諦めさせた。いご草ちゃんの死は偽装で、本人と両親は嫁ぎ先の東京にいる。」
と語っている。
だが、月島と同郷だと語る兵士から
「月島の父の自宅床下からいご草ちゃんの遺体が見つかった。」
と鶴見中尉の言を覆す事実が語られる。
鶴見中尉は更なる事実として
「月島の死刑を回避するため、素行の悪い父親に婚約者を殺されたという虚偽を造り、軍部と島民に信じこませ父親殺しを正当化した。」
と、同じ新潟県出身で信頼できる優秀な戦友の死刑を惜しんでの工作であったことを告げる。
度重なる事実に翻弄されもはや真実を追求する気力を失っていた月島は、救われた命を鶴見中尉と死んでいった者たちのために使うことを決意。鶴見中尉に加担し金塊争奪戦に身を置くことになった。
一方で、同郷だと語った兵士の不自然な描写や、月島の忠誠の意思に鶴見中尉がほくそ笑む姿もあり、全て月島を引き込むための策略だったのか、いご草ちゃんは本当に生きているのか、真実は不明のままである。
鶴見中尉との関係
上述の過去からもわかるように、基本的に鶴見中尉に対しては強い忠誠心を持つが、それは彼の心理操作によるものであり、カリスマ性への心服ではない。
それは月島軍曹自身が強く実感しており、鶴見中尉への忠誠は自分の人生などどうでもよいという、半ば捨て鉢な感情によるものである。
その一方で、鶴見中尉の信じる正義について行けば、自分の人生が戦友の為に使われた意義のあるものだったという『救い』を与えられるとも考えており、それ故に、鶴見中尉への忠誠心は、鯉登少尉の熱狂的な忠義とは違い、半ば狂気じみたものとなっている。
その為、一度は金塊探しに無関係となった谷垣源次郎とインカラマッの二人と、その子供すらも殺そうとしたこともある。
しかし、精神的に成長を遂げ、自身の信じる正義のために鶴見中尉について行くと誓い、それ故に鶴見中尉にも疑いの眼差しを持つようになった鯉登と共に、徐々に鶴見中尉との関係に対しても変化を見せていくようになる。
余談
名前(名字のみ)が判明し本格的に活動するのは8巻からだが、登場は2巻からと早期から活動している。鶴見中尉の傍らに度々登場する人物は月島であり、和田大尉を殺害したのも彼である。
本編開始の10年前に開戦した日清戦争にも出征している。日清戦争時は仙台第二師団(東北地方と新潟県、北海道の一部が対象)に所属していたが、鶴見中尉と共に第七師団へと移動している。
そのストイックさから人気があり、人気投票では一位の杉元、二位の尾形から離されてしまうものの堂々の三位にランクインした。
前述したように鶴見中尉の部隊では常識人なのだが、周りが色物すぎて読者や視聴者からは「月島さんの方がおかしいのでは?」だの「あの状況で正気なのは逆におかしいのでは?」と散々に言われている。
……まあこの評価は色物の中にいる常識人にはよく言われることではあるが。
和田大尉を上官の命令とはいえ真顔で射殺してたりもするし……。