「そう 私は―――……鬼ですが 医者でもあり あの男 鬼舞辻を抹殺したいと思っている」
プロフィール
※直接的な共演は無いが、伊黒小芭内役の鈴村健一は彼女の夫でもある。
概要
災厄・鬼舞辻無惨によって人喰い鬼とされながらも、人心を取り戻し、医師として人を助け、また鬼の首魁たる無惨の滅殺を目指す特異個体。
炭治郎に、同じく人喰い鬼とされてしまった禰豆子を人間に戻すための治療薬という希望を示し、その研究のために無惨からより多く血を与えられた十二鬼月の血を採取するよう依頼する。
女性に疎い炭治郎でも思わず赤面する程の美貌を誇る。
人物
闘争本能が激しく邪悪な鬼でありながら、理知的かつ静謐な自我を有する(あるいは永い時をかけて取り戻したか)。
その知性は非常に高度な医術を修めるほどであり、鬼(自身)の体質を科学的に解析した上で外科手術を含めた手法(本人曰く「弄った」)によって、無惨にかけられた“呪い”を解除し、食人に対する飢餓も定期的な血液の摂取のみで抑えられるよう体質を変化させている。
さらには無惨以外には不可能であるはずの『人間を鬼に変質させる』事に成功した……が、実現できたのは二百年かけて愈史郎一人のみであった。なお『鬼の治療法』の開発を視野に入れる域にまで至っている。
永い時を生きている為か、無惨についても一定以上の情報を把握しており、彼を「臆病者」と評している。当然ながら無惨からも強く警戒されており、多くの鬼に"逃れ者"として捕縛を高い優先事項として命じられている。
その一方で逆に、無惨滅殺の目的を同じくする鬼殺隊の方では、現当主の産屋敷耀哉を初めとした歴代の産屋敷家側が、無惨に敵対する鬼としてその存在を把握していた為に、討伐する対象とはされていなかった。しかし、彼女の方は鬼殺隊の事も鬼と同様に警戒して関わらないように行動しており、浅草での一件を経てようやく彼女の居場所を特定できた産屋敷からの提案で、遂に鬼殺隊と手を組む事になる。
また、炭治郎が鬼(珠世と愈史郎)を倒す為に降り立った浅草において、鬼となった者にも「人」という言葉を使い助けようとした炭治郎に好感を持ち、援助しようと愈史郎と共に姿を現す(明言はされていないが、炭治郎がある剣士と同じ耳飾りをしていた為という可能性も高い)。炭治郎から「長期間人間の血肉を食していないにも拘わらず、凶暴化も飢餓状態にもなっていない」禰豆子の事情を聞き、これを“奇跡”と捉えて、炭治郎に鬼の治療薬の開発への協力を依頼する(この時点では鬼殺隊ではなく、あくまで炭治郎個人との協力関係であった)。
直後に襲来した無惨からの刺客を退けた後、鬼殺隊である炭治郎とは別行動を取る為、鬼の採血に必要な装備を託して新たな拠点へ発った。
能力
身体能力・体質
食人は行わないが人喰い鬼としての特性自体は有している。すなわち日光と日輪刀以外には不死で、頭部を破砕されてもすぐに治癒する超再生力を備えている。
長期間にわたって食人を絶っている為か、身体能力・強度面においては弱いが、それでも常人を大きく凌駕する。
無惨が全ての鬼にかけている呪いを、史上初めて解除する事に成功した個体であり(2番目が禰豆子)、幻惑系の血鬼術と高度な医療技術を駆使する。
彼女の目的の為には医療設備が必須であり、無惨と遭遇した場合は必滅が避けられない為に、愈史郎の目隠しの術のサポートを受けながら拠点を転々としている。
食人衝動が最小限となるよう体質を変質させており、医者として市井に紛れる中で、金銭に余裕のない者から輸血と称して血を購入して摂取しているという。
それでも鬼と勘づく人はいるらしく、その都度転々としていた模様。
血鬼術『惑血(わくち)』
自らの血を媒介として発動する、幻惑系の異能。匂いが及ぶ範囲なら無差別に影響し、様々な効果を選択できるが、強風などで匂いが拡散すると効力を失う欠点も有している。
ただし、当然ながら珠世はその欠点を熟知した上で戦術を組み立てる。
つまりこいつ、“呪い”の解除、高い知性、血鬼術の三つをもってして『物理的な強弱』という尺度を超越しているのである。
- 視覚夢幻の香(しかくむげんのこう)
匂いを嗅いだ者の視覚に不可思議な紋様が現れ、身動きを取れなくする。
- 白日の魔香(はくじつのまこう)
自白剤のようなもの。脳の機能を低下させる為に、虚偽を述べたり秘密を守る事が不可能となる。
いかに珠世でも鬼に変わりはないためか、人体に対してもかなり有害らしい。
- 融通無碍の香(ゆうずうむげのこう)
ジャンプGIGAに掲載された番外編の四コマで使用。対象者に冗談かと思うような効果が現れる(ただし失敗している)。
使い猫
茶々丸という名の雄の三毛猫。珠世の命により採血の短刀を運搬する。
愈史郎の術により、鳴き声を出す事で姿を消したり現したりできる為に、隠密に役目を果たしている。
過去
無惨襲来の際、人間だった頃は病で余命幾許もなかった事、子供が大人になるのを見届けたい一心で無惨の誘いに乗って鬼と化してしまい、結果として夫と子供を喰い殺してしまった事、その後は自暴自棄になり更に大勢の人間を殺してしまった事など、彼女が鬼になった経緯が断片的に明かされている。
「そんなことがわかっていれば私は鬼になどならなかった!!」
「病で死にたくないと言ったのは!!子供が大人になるのを見届けたかったからだ……!!」
その後は戦国時代、継国縁壱に無惨が追い詰められた局面でその場にいた事が判明する。当時は既に無惨に対する憎悪と人としての理性を取り戻していたらしいが、呪いによる支配もあって無惨に従う事を強いられていた(無惨の側に置かれていた事から、今でいう鳴女に近いポジションだったのかもしれない)。縁壱に追い詰められた末に逃げ出すというあまりに生き汚い姿を晒す無惨に遂に激昂し、まだ無惨の支配下にあったにも関わらず無惨の名前を口に出して罵ったが、無惨は縁壱に絶命寸前まで追い詰められたせいで著しく弱体化しており、偶々近くにいた彼女に対する呪いが解けていた為に死なずに済んだ。
それ以降は「無惨はあなたが生きている間は姿を現さない」と言いつつ、無惨を倒す為に行動する事を誓い、彼女の無惨を倒したいという強い意思を汲んだ縁壱によって見逃された。
つまり、この回想で珠世は少なくとも400歳以上の鬼である事が判明したのである(上弦の鬼最古参である黒死牟よりも歳上であり、現存する鬼の中でも無惨本人を除けば、最も長い年月を生きている鬼である)。
縁壱と別れてからは、動物や人間の死骸を喰らう事で何とか生き延び、食人衝動に襲われても縁壱の己への信頼の言葉を思い出しながら苦しみに耐え抜いて、そして無惨が弱体化している間にこれまで培った医療技術の全てを総動員して無惨の支配を完全に解除して身を隠し、人を喰わなくても生きられるように自身の身体を改造していった。
なおその後、彼女の事は縁壱が当時のお館様に伝えていたらしく、その為に産屋敷一族は「無惨と敵対する珠世という名の鬼」の存在を把握していた。
余談
吾峠呼世晴氏のデビュー作でもあり、『鬼滅の刃』の原型ともなった読み切り『過狩り狩り』にも、愈史郎と共に登場している。
ファンブックによれば、好きなものは読書と紅茶。鬼は本来は通常の飲食を行えないが、体質を改造して変化させた後は紅茶だけは飲めるようになったとの事。
関連イラスト
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『無限城決戦編』にて(ネタバレ注意)
無惨が人間に戻る薬を分解する為の繭のようなものの中に籠っている間、無惨を抑え込んでいた珠世もまたその内部に取り込まれてしまい、遂に180話で無惨は薬の分解を終えて回復してしまう。
その時点で珠世は既にほぼ崩れかけた頚だけの状態にされており、
「お前……は……今日……必ず……地獄に堕ち……る……」
「私の……夫……と……子供を……かえ……せ……」
と最後の力を振り絞って吐き捨てるが、「ならばすぐさま死んで 己が殺した身内の元へ行くがいい」と言い放った無惨によって喰い殺された。
珠世が投薬した人間に戻る薬を無惨は分解、覚醒したと思われたが、実は薬は四種類投薬されており、無惨が白髪となったのはその効果で老化した為だという事が分かった。
薬の効果と種類は、
1.人間に戻る
2.1分で肉体を50年加齢させる
3.分裂阻害
4.細胞を破壊する
というものである。1の薬を主軸とし、1が分解された時に2から4の薬の効果が出るように開発された。
これは胡蝶しのぶと共同研究で作られたものであり、上記の四種類を組み込むという発案をしたのも彼女である。鬼である珠世に対する憎悪が抑えきれないしのぶと、それを察知してしのぶに殺意を向ける愈史郎の板挟みに遭い、居心地が悪そうにしていたが、しのぶの発想には素直に感心しており、薬の開発自体には問題はなかったようである。
しのぶもまた、禰豆子に使う分が足りなかった時の為に、こちらも珠世との共同で藤の花から鬼を人間に戻す薬を万が一に備えて作っていたが、それをカナヲに預けた際に、「鬼を人間に戻す薬は珠世さんが3つも作ってくださったので、これはもう必要なかった」「あの人は……すごい方です 尊敬します」と、鬼である珠世を「人」と呼んで称賛の言葉を漏らしていた(この3つの薬はそれぞれ禰豆子用、無惨用、浅草で鬼にされた一般男性用の物である)。
上述通り、無惨が白髪となったのは覚醒したからではなく老化した為であったのだが、人間に戻る薬だけを分解するのに注力して多くの力を使った無惨は、当初は自身の疲労や消耗はその為だと勘違いして気付いていなかった。当然ながらこれらは全て珠世の計画通りであり、人間に戻す薬が分解される事は最初から想定済みで、あくまで他の3つの薬の効能を隠す為のカムフラージュに過ぎなかったのである。その後無惨は、消耗した炭治郎が自身の攻撃を回避し続けた事で、自身の身体の異変に漸く気付いて、薬について吸収した珠世に問いただしている。
しかし珠世は薬について話すのを激しく拒絶しており、「無駄に増やした脳味噌を使って考えたらどうだ?」などと怒りと恨みを晴らすような言動で挑発している。
その姿は正に鬼の形相であり、外面似菩薩内心如夜叉(普段の表の顔は菩薩のように優しいが、内心は夜叉のように険悪で恐ろしいの意)であった。彼女が今まで無惨をどれだけ憎んでいたのかが窺え、薬学以外の内心を隠して表面上は穏やかに、冷静に見えるように努めていたという所もしのぶとは共通している(仏のような穏やかな顔の裏に、無惨への凄まじい憎悪を隠していたのは産屋敷とも同様)。
しかもこれらの薬は、しのぶが使っていた藤の花の毒とも全く異なる物であり、加えてそれぞれの薬同士も異なる物である。その為に、無惨ですら最初の人間に戻す薬の分解だけでも相当な時間が掛かり、その上でそれぞれ異なる3つもの薬を毎分力を削られ続ける状態で、さらに力を消耗しながら、それ以上の時間を掛けて分解しなければならないという完全な悪循環に陥らせてしまうのである。つまり薬を取り込んでしまった時点で、無惨の敗けはほぼ確定していたと言える(ただしこれらの薬も無惨は時間をかければ分解し、肉体も再生してしまうため、夜明けまで戦い抜けるだけの者ももちろん必要だった。)。
投薬により、無惨が分裂して逃走するのを防ぎ、さらに縁壱のように無惨より強い存在にならなくても戦えるように無惨を徹底的に弱体化させ続けた。これらの事からしのぶと珠世は、影の最大の功労者として相応しい存在と言えよう。この2人の薬が無ければ無惨討伐はまず不可能だった。
なお薬の効果が表れる前に、猫の茶々丸(詳細は下記)から珠世が作った血清が柱達に届けられている。それによって細胞破壊を一時的にではあるが、緩和する事もできた。
その直後に茶々丸は無惨にバラバラに斬り刻まれてしまうが、決戦直前に鬼に変わっていた為に生存が発覚した。