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概要編集

『過狩り狩り』は吾峠呼世晴氏が第70回(2013年)JUMPトレジャー新人漫画賞に応募して佳作を受賞した作品であり、かつて週刊少年ジャンプ本誌に読み切りとして掲載された漫画。


吾峠呼氏が後に描き、今や日本を代表する大人気作となった『鬼滅の刃』の前身となる漫画であり、更にその「鬼滅の刃」のプロトタイプとなる『鬼殺の流』というネームも、編集からのアドバイスもあって本作をベースに描かれている。

上記の性質から、本記事では関連作品投稿数が少なく、設定で共通部分が多い『鬼殺の流』についてもまとめて解説をする。


物語としては、鬼狩りを生業とする剣士が街に潜む鬼を狩ると言うまさに鬼滅のベースとなった作品だが、ハンデがあっても普通の人より強い剣士を描きたかったという考えから、隻腕の主人公になっている他、着物を着た吸血鬼というものをあまり見ないという発想から、明治・大正時代辺りを描いた本作が生まれたとの事。

後に鬼滅にそのまま継承された設定も見られる一方で、鬼滅とは世界観や設定面で大きく異なる部分も散見されるのが特徴。


設定編集

大まかな流れは「鬼滅の刃」同様に、鬼狩りの剣士が町に潜んでいる鬼を倒すというストーリーになっている。

また、具体的なワードこそ登場しないものの「“惡鬼滅殺”の文字が刻まれた鬼を殺せる刀」「最終選別」「言葉を喋る鴉」等々、後に鬼滅でより肉付けされて掘り下げられた設定の数々が本作で既に断片的だが描かれている。

加えて、キャラクターも鬼滅にそのまま引き継がれたキャラや、鬼滅のキャラのプロトタイプとなったキャラが多く登場している。


一方で、「全集中の呼吸」等の設定は登場しておらず、鬼狩りも鬼も根本的な設定は鬼滅とはかなり異なる。

そして、ある意味での鬼滅との最大の相違点としては、本作では根本的に鍛えぬかれ選び抜かれた鬼狩りの方が鬼より強く、完全に鬼狩り>鬼というパワーバランスになっている事だろう。


鬼狩り編集

劇中では「狩猟者」と呼ばれている。

本作における鬼狩りは、人間の限界を越えた訓練を受けて、ある山で鬼を相手に七日間生き残った者のみがその資格を得る。

そして資格を得た者は、その証として腕に数字を刻まれ、刃元に「惡鬼滅殺」の四文字が刻まれた鬼を殺せる特別な刀を支給され、喋る鴉からの指示に従って各地での任務に赴く。


本作では、鬼殺隊というワードは登場しておらず、具体的な彼等のバックにいる組織の規模や実態は不明だが、腕に刻まれた数字を見せれば事情を把握している者ならば警官でも帯刀を見逃してくれる(事情を把握していない警官もいるので絶対の身分証という訳ではない)。また、詰襟の隊服もないので服装も着物姿である。

作中で、ナガレ以外の鬼狩りは登場していないが、試験に受かっていた人間の数を見てもそれなりの数の鬼狩りがいると思われる。


編集

人を主食とする怪物。

本作の鬼は鬼の血を浴びた人間が変異して生まれる異形の怪物という、まさに吸血鬼ゾンビの如き設定であり、昔から日本だけでなく諸外国にも広く存在している種族である模様。

その為、鬼滅ののように唯一鬼を増やせる一人の始祖によって支配された集団ではなく、力のある鬼が各々の縄張りを持ってバラバラに暮らしており、基本的には仲も悪いらしく相互不干渉でいるらしい。

また、更なる相違点としては再生能力は個体によって差があるらしく、鬼滅の鬼の血鬼術にあたる術も登場するが、これも必ずしも上位の鬼が全て持っている訳ではない。


加えて、前述した通り根本的に本作の日本の鬼狩りは鬼よりも強いので、「狩り過ぎれば狩られる」として日本の鬼達は基本的には目立たないように静かに潜伏して暮らしている者が多い。

その為、海外鬼曰く日本人は全体的に鬼に対する畏怖の念が薄いらしく、そもそも鬼滅同様に鬼自体の認知度も低いのだが、それでも鬼達は下手に目立って鬼狩りを呼び寄せてしまう事を何よりも恐れており、それ故に縄張りを荒らされる事を嫌っている。

ちなみにその関係もあって、本作の事件や海外鬼との戦いは基本的に鬼側の珠世や時川らの視点で描かれている。


登場人物編集

鬼狩りの関係者編集

  • 流(ながれ)

本作の主人公。メインイラストの人物。

本作では名前は明かされていないが、後に「鬼殺の流」で「伴田流(ばんだながれ)」というフルネームが明かされている。

元は親に捨てられた孤児であり、後述する伴田左近次という男性に拾われて彼の下で厳しい修練を受け、鬼狩りになる為の試験に挑んだが、その中で一人で七体の鬼を相手にした結果、片腕と視力を失った。これらの過去は断片的な回想で描かれている。

その後は、傷が回復した後に改めて試験を受けて鬼狩りとなったらしく、腕に「ウ-拾壱号」という数字を刻まれた。


性格は基本的には無口であり、物語が短編なのもあって具体的なキャラが掴み難い部分もあるが、自分を育てた伴田を気遣って病を患っているらしい彼を心配する様子を見せる等、基本的には後述する鬼殺の流の流と同じく情に溢れた人物である。

戦闘力は凄まじく、海外鬼を特に苦も無く一方的に蹂躙して倒した他、上位の鬼らしい珠世と時川が2人がかりでも逃げに徹するしかない程。動きの全てが鬼の反応速度を遥かに凌駕しており、鬼からも「本当に人間なのか?」と絶句されている。


その外見や言動や雰囲気といい、背景や物語で初めて登場した鬼狩りという立ち位置といい、鬼滅の水柱・冨岡義勇のプロトタイプとなったキャラクターである。同時に盲目で最強の剣士という設定は岩柱・悲鳴嶼行冥にも引き継がれている。


  • 流の師匠

流を拾って育てた師匠にして育ての親である老齢の男性。

本作では名前は不明で、後の鬼殺の流で「伴田左近次(ばんださこんじ)」という名前が明かされた。加えて本作では素顔は描かれていない。


性格は、厳しいが同時に流の実力を誰よりも理解していた人物であり、流に厳しい鍛練を課して鬼狩りとして育て、彼を試験に導いた張本人。

試験で片腕と両目を失った流を必死で手当てし、鬼に変わる前に殺すべきだとする試験官に、彼が誰よりも才能があり、手と目を失ってようやく今回合格した全員で釣り合えるレベルだという事を訴えていた。

また、どうやら肺を患っているらしく、吐血して咳き込みながら、自身を気遣う流に早く任務に向かうように促していた。


その名前といい流の育ての親で師匠というポジションといい、鬼滅の鱗滝左近次のプロトタイプとなったキャラなのだが、外見や言動からはあまり鱗滝の要素は見られない。ただ共通点を挙げるなら回想で彼が流に課していた修行内容やトラップは、鬼滅で鱗滝が竈門炭治郎に対して課していたそれと同じである。


  • 試験官

鬼狩りの試験を統括していた試験官。

当時の軍人か役人のような制服姿であり、立場や詳細は不明だが鬼狩りとなる為の入隊試験を監督する立場の人物である。

鬼滅における産屋敷耀哉の子供達の役割をしていたのだが、彼等と違って重傷を負った流を鬼化の危険もあるとして早々にトドメを刺そうとする等、参加者に対する態度は淡白である。


鬼狩りに任務の指示と伝令を行う言葉を喋る鴉。

後に鬼滅で登場する鎹鴉のプロトタイプであるが、鎹鴉に比べるとカナカナ交じりのやや要領の得ない言葉を喋る。


編集

本作の鬼の有力者の一人。

言うまでもなく鬼滅に登場する珠世のプロトタイプであり、基本的には外見も言動も鬼滅に登場する珠世そのまま。

ただし、本作では自らの縄張りを構える力のある鬼の一人で、医者という設定もない。自らが鬼である事にも特に抵抗はなく、むしろ海外鬼から「絶滅寸前」と煽られた際には怒りを見せている。その為、本作では鬼狩りと完全に敵対関係になっており、流からも逃げている(尤も、鬼滅の方の珠世もあくまで炭治郎個人と例外的に手を組んだだけで、当初は鬼殺隊からも逃げている立場である事に変わりはなかったのだが)。

愈史郎の事を大切に想っているのも同じで、時川が愈史郎を侮辱した際には「愈史郎への侮辱は許しません」と嗜めている。一方で、自身に対する時川の態度は慣れているのか流している。

能力も鬼滅の珠世の「惑血」と全く同じであり、自らの血の匂いで相手の視覚と嗅覚を撹乱する事ができるが、風で匂いが散ると効果が消えるのが弱点。ただし、本編では鬼狩りを警戒して力を制限して戦っていたので、本作の彼女の本来の実力は不明。


作中では、時川の縄張りで勝手に人を無秩序に襲う海外鬼を鬼狩りを呼び寄せる前に排除すべく、時川に協力を要請されて自身の縄張りにも近いという理由からこれを承諾する。

愈史郎の術で発見した海外鬼を攻撃するも、力を抑えた状態では敵わず圧倒され、時川の呼び掛けで本気を出そうとした瞬間にその場に流が現れた為、愈史郎の手を借りてすぐさま逃走。

その後は、愈史郎から海外鬼が倒された報告を聞き、彼に「狩り過ぎれば狩られる」という戒めの言葉を口にしていた。


珠世の従者の鬼。

こちらも言うまでもなく鬼滅に登場する愈史郎のプロトタイプであり、外見も言動も鬼滅に登場する愈史郎そのまま。珠世を「珠世様」と呼んで何よりも慕っている事も、口の悪さも健在。

本作では元は物乞いで、そこを珠世に拾われて鬼にされたらしく、鬼滅同様に鬼としてはまだ若い個体である。その為、時川からは見下されており、珠世に対しても無礼な態度をとるのもあって彼とはかなり仲が悪い。

能力も鬼滅の愈史郎の「紙眼」とほぼ同じであり、自身の血で眼の絵を描いた紙を貼る事でその場所を監視する事ができる。ただし、鬼滅の愈史郎のように視覚を撹乱したり共有したり、相手の脳を支配したりといった応用までできるのかは不明。


作中では、珠世の指示で海外鬼の居場所を特定した後は、隠れて紙眼を使って鬼狩りの接近を警戒する見張り役を担当。

そして、流の接近を感知して珠世に警告を出した瞬間には、目の前に既に流が到着していた事に驚愕。彼が海外鬼と戦っている間に珠世を抱えてその場を離脱し、紙眼で海外鬼の死を確認した。

彼自身は、鬼狩りを直接目にしたのは初めてだったらしく、「彼は本当に人間なのですか?」驚きを隠せない様子だった。


  • 時川

本作の鬼の有力者の一人。

外見は全身白いスーツと同色の帽子に黒ジャケット姿の男性で、性格は非常に高慢で他人を見下したような言動を隠さない。

特に愈史郎とは仲が悪く、珠世に対しても高圧的な言動で接しているが、一方で珠世との付き合いはかなり長いらしく、戦闘時には互いに巧みに連携して戦ったり、珠世を気遣うような言動もしており、珠世の方も彼の考えを察して動いている。

戦闘時には、腕を鬼の手のような形状に変形させて戦っていたが、これはあくまで鬼狩りを警戒して力を抑えていたに過ぎず、本来の実力は不明。作中では全身を変形させようとするような素振りを見せていたが、結局その姿が披露される事はなかった。


作中では、自身の縄張りを荒らす海外鬼を鬼狩りを呼び寄せる前に排除すべく、珠世に協力を要請して共に強襲する。

当初は圧倒するが、力を抑えたままでは押し切れずに形勢逆転されてしまい、しびれを切らして珠世と共に本気を出そうとするも、その瞬間に目の前に流が現れた事で驚愕し、彼が海外鬼に気を取られている間に川に飛び込んで何とか逃走する。

その後は、川辺を歩いていた猫を体力回復の為に補食しつつ、流に見つかった事でしばらくは逃亡生活をするしかなくなってしまった事に、悔しそうに歯噛みしながら去っていった。


その服装や言動を見ても分かるが、鬼滅の鬼舞辻無惨のプロトタイプとなったキャラである。容貌は全く違うのだが、癖のある波打った髪は共通している。一方で、彼は敵対者とは積極的に自らが交戦しており、そこが無惨との最大の相違点とも言える。

また、鬼滅での珠世と無惨の関係性を考えると、珠世と無惨のプロトタイプが共闘するという展開は皮肉としか言いようがない。


  • 海外鬼

異国からやってきた鬼。

ビジュアルは完全に西洋の吸血鬼のそれであり、時川の縄張りで所構わず人を襲っていた事から、時川達や流に狙われる。漫画としては珍しく横文字の台詞で話すのが特徴。

性格は高慢かつ残忍であり、日本人の場合は味は薄いが香りが良いとして女性の血を好んでいる。人間はおろか日本の同族の事も完全に見下しているが、彼等が何かを気にしている事を察してあえて挑発して様子を見たりと、同族に対する用心深さはある。

戦闘時には手を変形させて戦える他、背中から触手を伸ばして不意打ちする事もできる。戦闘力は力を抑えていたとはいえ珠世と時川の2人がかりでも押し切れない程に高く、惑血で視覚と嗅覚を封じられても時川の攻撃を避けたりと、感覚もかなり鋭い。


作中では、日本に侵入して時川の縄張りに勝手に居着いた上、日本の鬼狩りの事を何も知らなかったので、お構い無しで好き勝手に人間を襲って殺して回った為、時川達の強襲を受ける。

最初は圧倒されていたが、珠世の惑血が風で散ったのもあって形勢逆転し、彼等を負傷させた上で何かを気にしている彼等をあえて挑発しながら攻撃しようとするが、そこに流が現れる。

何も事情を知らない故に、隻腕の流に完全に慢心して襲いかかるが、次の瞬間には両腕を斬り落とされ、背中の触手で攻撃しようとするがそちらも斬り落とされ、目の前の現実が到底信じられず逃走しようとするも両足を切断されてしまい、最期まで何が起きているのかも理解できないまま頚を落とされて死亡した。

文字通りの瞬殺だったのだが、その時間で時川や珠世らは全員逃走に成功し、流も「一体に時を使い過ぎた」と述懐している。


  • 伊勢尾

日本の西部に縄張りを置く有力者の鬼。

愈史郎の発言に出てくるのみで詳細は不明だが、時川も協力を受けるとすれば頭を下げなければならない相手らしい。


一般人編集

  • 警官

物語の冒頭で登場した警官の一人。

流の帯刀を見咎めるも、彼の腕の数字を見て彼が鬼狩りである事を察して、同僚を制止して流を見逃した。

事件収束後は、蕎麦屋にいた流に気さくに声をかけて隻腕の彼を気遣うも、流からは「問題ない」と返された。


『鬼殺の流』編集

概要編集

上記した「過狩り狩り」から2年後(2015年)に、「過狩り狩り」をベースに新規作成されたネーム原稿であり、漫画賞に落選したので本誌では公開されていない(ちなみに短編集に収録されている漫画は、上記の過狩り狩り以外は落選している)。

構成は第1話から3話までの全3話で、鬼滅の刃のファンブック「鬼殺隊見聞録」の1弾で初公開された。ただし、あくまでその3話しか実際に書き下ろされた話は無いので、物語としては3話からのエピソードの途中で未完という形で終わっている。


作品としては、まさに『鬼滅の刃』のプロトタイプであり、本作から設定面等の様々なブラッシュアップや修正を経た上で、現在の『鬼滅の刃』を完成させ、無事に連載にこぎ着けたという経緯である。

本作から鬼滅への特に大きな変更点は、やはり主人公を交代した事であり、当時の担当によると流は少年漫画の主人公を務めるには寡黙過ぎたので、連載にこぎ着ける為に前向きで読者が親しみやすいキャラは本作にはいないのかと作者に確認したところ、本来サブキャラとして登場予定だった炭焼きの少年を作者が挙げ、そこで担当の一存で流から彼に主人公を変更したとの事。

そして、主人公を降りた流はその後、冨岡義勇という第1話から登場する重要なキャラクターの一人に生まれ変わり、鬼滅に登場する事となる。


加えて、タイトルについてもこの主人公交代によって「流」という字を外す事となり、「殺」という字は少年漫画のタイトルには向かないという判断から、より汎用性も高い「滅」という字に変更された。

一方で、作者と編集の間で作品を代表する「鬼」と「刀(刃)」という字は入れようという共通見解があった為、いくつかの変遷を経て最終的に『鬼滅の刃』というタイトルに最終決定した。


余談だが、当時の作者はまだ地元で活動しており、2015年以内に芽が出なかったら漫画家を辞める予定だった為、鬼殺の流や鬼滅の刃は作者にとっては最後の挑戦だったという。


設定編集

本作は、設定面では短編だった過狩り狩りの頃からより練り込まれており、鬼滅のプロトタイプとして世界観等もより深掘りされて描かれている。

作中でも「日輪刀」「鬼殺隊」「」「育手」「藤襲山」「最終選別」「稀血」「藤の花の家紋の家」等々、後に鬼滅に引き継がれた様々なワードや設定が登場している。


一方で、「呼吸」というワードや技術は登場するものの、具体的な設定までは未完成だったのか、呼吸のエフェクトや型までは登場していない。そもそも作中登場した過去に鬼殺隊士と戦った経験のある鬼も呼吸の事を知らなかったので、本作の呼吸はあくまで流や一部の隊士が使う技術に過ぎない可能性もある。

このように、ワードは登場するもののやはり鬼滅程はまだ全体的に設定が固まっていないらしく、鬼殺隊関連も政府非公認という設定こそ登場するものの、具体的な組織体制等は殆どが明かされていない。

ただ本作の鬼殺隊については、この政府非公認という設定が鬼滅以上に強調されているのが特徴で、過狩り狩りの頃の腕の数字の設定は消え、更に鬼滅とも違って警察から鬼共々禁句の存在として扱われており、完全に追われる立場になっている。


また、鬼滅と違って本作は時代設定が明治になっており、過狩り狩りとの共通項として登場する隊士もまだ隊服ではなく着物姿で、惡鬼滅殺の文字も日輪刀の共通意匠となっている。

隊服については、鬼滅連載前に時代設定が大正になった事で、担当から「もっと大正時代感が欲しい」という要望を受けて、作者が詰襟の隊服を新たに考案したとの事。

ちなみに鬼滅の方でも、およそ20年以上前まではまだ隊服は存在せず、隊士は着物姿だった事が確認されている。


対して鬼の方は、デザインや設定面でより鬼滅の鬼に近くなっており、「日輪刀で頚を斬らない限りは死なない」「日光が弱点」「死ぬと身体が灰になって消滅する」といった設定や描写も登場している。

しかし、鬼の血を傷口等に浴びた人間が転化して生まれる存在という、吸血鬼ゾンビのような設定は過狩り狩りの頃のままで、無惨しか同族を増やせない鬼滅の鬼とはそこが最大の相違点である。過狩り狩りのように海外にも同族がいる可能性もある。

加えて、パワーバランスも過狩り狩り程に鬼狩りが上位という訳ではないが、100人近い人間を喰らった鬼ですら呼吸も使ってなかったらしい鬼狩り一人を殺した事を功績として誇っていた辺り、やはり基本的には鍛え抜かれた鬼殺隊士の方が強いという世界観な模様。


あらすじ編集

時は明治。文明の火が煌々と灯り出した時代。

火の隅に潜むは「鬼」の影。静かに人を喰らい息づいていた。

火の傍に宿るはそれを滅す者。知る者僅かに、呼吸をしていた。

その滅する者たちの中に一人の少年の姿があった。名は流。

独特の風貌で「惡鬼滅殺」と彫られた刀を手に、目にも止まらぬ速さで夜を行く。

火が消えぬよう、彼自身の想いが消えぬよう。

(「鬼殺の流」紹介文より抜粋)


登場人物編集

鬼殺隊の関係者

  • 伴田流(ばんだながれ)

本作の主人公。1話が初任務の新人隊士。

外見や設定は過狩り狩りの頃とほぼ同じだが、顔立ちが少し幼くなっている。しかし、過狩り狩りの頃からの最大の相違点は両足も義足になっている事で、四肢で無事なのは左腕のみ。加えて、新人隊士という設定になっている点も異なる。

生まれつき身体の小柄さと弱さから、親に口減らしの為に捨てられたところを伴田に拾われ、誰よりも強くなるべく彼の下で厳しい修行を乗り越え、鬼殺隊への入隊と柱になる事を志す。

しかし、最終選別で稀血の同期を庇って戦った結果、鬼の集中攻撃を受けて片腕と両目と両足を失った。ただし、本人曰くそうなった直接の理由は、多数の鬼を前に緊張と恐怖で身体が強張り、呼吸を上手く使えなかった為で、冷静に対応できれば問題はなかったらしく、伴田が他の参加者に影口を叩かれた際にはそれを否定し、瀕死の身で自分がいずれ柱になる事を宣言した。


性格は、基本は寡黙だが礼節を弁えた人物であり、同期を自分が瀕死になっても最後まで助けようとしたり、自分が助けた子供達に親を救えなかった事を詫びたり、藤の花の家紋の家の子供達が戯れる姿を見て優しく微笑んだりと、言動の端々から人の良さと人情深さが溢れており、全体的に過狩り狩りの頃より人間味のある言動や表情を見せる描写が増えている。

戦闘力は、過狩り狩り頃から更に強化されており、義足でありながら呼吸を使う事で、人間を100人喰らった鬼でも反応すらできないような速度で攻撃する。その実力は新人隊士の域を遥かに越えており、ベテランの隊士ですら驚きを隠せない程。


総じて、容姿も内面もより鬼滅の冨岡義勇に近いキャラクターになっていると言え、コミュニケーションに問題が無い義勇だと考えると分かりやすい。ただ前述通り、入隊を志した経緯や動機は義勇とはかなり異なっており、義勇を初めとした鬼滅の鬼殺隊士のような鬼への個人的な憎しみや嫌悪は希薄である。

また、実力面では最初は雑魚鬼にすら遅れを取っていた義勇とは真逆で、盲目だが最初から最強の剣士という点ではやはり悲鳴嶼行冥の方に近い。一方で、生まれつき体格には恵まれていないという点はこの両者のいずれとも異なる。


  • 伴田左近次(ばんださこんじ)

鬼殺隊に所属する育手の一人。

過狩り狩りと同様に流を拾って剣士として厳しくも優しく育てた人物で、流にとっては師匠であると同時に養父でもある。過狩り狩りからの変更点としては本作で初めて素顔が描かれた他、肺を患っているという設定は消されている。

親に捨てられて己の弱さを悔いるた流に、自分の下でこの国で誰よりも強くなるという道を示し、彼を厳しい修練の果てに最終選別へと送り出し、鬼狩りとして生きる道へと導いた。


最終選別で重傷を負った流を介抱し、彼が両目と手足を失ってなお誰よりも才能と実力がある事を訴えたのは過狩り狩りと同様なのだが、流を自身の実績作りの為に利用していると見なしている者も多く、過狩り狩りの頃や鬼滅の鱗滝と違って彼の事をよく知らない鬼殺隊関係者からは鼻つまみ者扱いされている。

一方で、鬼殺隊では実力のある育手として重宝されているらしく、下記するベテラン隊士のようにその実力を知る者からは一目置かれている。その為、鱗滝同様に元柱である可能性が高い。


  • 同期の少女

流と共に最終選別を受けた少女剣士。

性格は、助けたら選別の意味がないとして襲われている同期を見捨てたりとドライな人物で、男のような口調で話す。

一方で、鬼の変化からその同期が稀血である事を見抜いたりと、観察力と洞察力は高く、常に冷静に立ち回っている。加えて実力も相当高いらしく、最終選別をほぼ無傷で乗りきっている。

選別時には、同期を助けようとする流にその人物が稀血で鬼を呼び寄せる事を警告しており、選別後は他の参加者と共に瀕死の流の様子を見ていたが、流を助けようとする伴田や彼の流の才能を訴える言葉を、他の参加者のように非難はしなかった。

その容姿や服装からも、鬼滅の栗落花カナヲのプロトタイプとなったキャラだと思われるが、カナヲよりやや中性的な容姿になっている他、前述通り性格や言動はカナヲとは全く異なる。


  • 同期の参加者

流と共に最終選別に参加した参加者の一人。

稀血だった為に、6日目にしてその血に反応した鬼から集中的に攻撃されて重傷を負わされ、死んでも家族を殺した鬼の血肉にはなりたくないという思いから、自分を助けた流に例え自分が死んで死体になっても山から連れ出すよう懇願する。

しかし、自身を庇ったせいで多数の鬼に襲われた流が、片腕と両目と両足を失った事で自分を見捨てて山を降りるように言うが、流は地を這いながら山を降りて最後まで彼を手放さなかった。

そして、7日目の昼に山から約束通り自分を連れ出してくれた流に感謝を伝え、最期は安堵した顔で静かに息絶えた。


  • ベテラン隊士

流の初任務を影から観察していた隊士と思しき人物。

外見は無精髭を生やした短髪の壮年の男性であり、飄々とした気怠げな言動が特徴。鴉を連れている。

流の初任務では彼が失敗する事に賭けていたらしく、彼が鬼をあっさりと倒した際には「あの子は目も見えてないんだろう」と驚きを隠せずにいた。しかし、伴田の事を信頼しているらしく、流の実力も「伴田さんに違いはない」として姿を消した。

鬼滅の方の鬼殺隊では全く見ないようなタイプのキャラなのだが、隠密行動を得意としているらしい事から、しいて言えば宇髄天元に比較的近いキャラクターなのかもしれない。


鬼殺隊で運用されている言葉を喋る鴉。

まだ鎹鴉という名称は存在せず、作中では単に「鴉」と呼ばれている。そして、過狩り狩りの鴉程ではないが、鎹鴉に比べるとやはり喋る言葉もカナカナ交じりでやや辿々しい。


  • 短髪の鬼

流が初任務で対峙した鬼。

とある屋敷で親を喰い殺し、残された子供達と文字通り命懸けの「鬼ごっこ」を遊び感覚でやったりと、残忍な性格。

捕まえた子供の足を喰い千切ろうとしたところで、現れた流に腕を斬られ、動揺して子供を盾にして流を脅そうとしたが、次の瞬間には懐に飛び込んだ彼に頚を斬られて瞬殺された。

鬼殺隊や日輪刀の事もろくに知らなかったらしく、鬼になってまだ間もない個体だったと思われる。


  • 髪鬼

着物を着て帯を頭に被った女の鬼。

100人近い人間を喰っている強力な鬼で、長い髪を自在に操って敵を攻撃できる他、相手に突き刺して血を吸ったり、頚に巻き付けて防御したりと、能力の汎用性はかなり高い。過去には鬼殺隊士も一人殺して喰らったらしいが、彼女は呼吸の事を知らなかったので、この隊士は呼吸を使っていなかった模様。

竹林で遭遇した幼い兄弟に襲いかかり血を吸おうとするが、駆け付けた流によって阻止される。最初は髪を使った遠距離からの攻撃で圧倒しているように見えたが、呼吸を発動した流の動きには反応すらできず、一瞬で頚を斬られて敗北した。

その容貌や戦闘スタイルは鬼滅の堕姫に似ており、呼吸音に動揺する描写といい、堕姫のプロトタイプの可能性がある。


  • スキンヘッドの鬼

名前の通りスキンヘッドの鬼。

とある街で16歳になったばかりの少女を、自分の作った沼の中に次々と引きずり込んで拐って喰らっていた。

上記を見ても分かる通り、鬼滅の沼鬼のプロトタイプとなった鬼なのだが外見は全く異なり、ネーム本編では全身は登場しておらず、全身像はファンブック1弾の書き下ろしで確認できる。加えて、沼鬼のように分身能力まで持っていたのかは不明。

また、鬼滅の沼鬼の場合は炭治郎が嗅覚で追跡して追い詰めたのだが、流にはそんな特殊な能力は無いので、藤の花の家に少女を集めて誘い出すという作戦を実行しようとしていた。ただし、ネームは3話のこの鬼の話の途中で終わっているので、結局この鬼の事件が最終的にどうなったのかは不明。


一般人

  • 屋敷の子供達

流が初任務で派遣された屋敷にいた子供達。

親を鬼に殺され命懸けの鬼ごっこに参加させられた挙げ句、一人が足を喰い千切られそうになるが、流によって全員が無事助けられる。事件後は、彼から親を救えなかった事を謝罪された。


  • 幼い兄弟

2話で竹林を越えようとした兄弟。

親が危篤状態だった為に、山を越えようと急いでいたところを髪鬼に襲われ、血を吸われるが流に助けられる。

流が髪鬼を倒した後は、事情を知った彼に2人共抱えられて、そのまま最速で家まで運ばれた。


  • 藤の花の家紋の家の人々

3話で登場した鬼殺隊を支援する人々。

流に状況を説明した上で、彼の指示で街にまだ残っていた16歳になる娘全員を家に集めて待ち伏せた。

鬼殺隊士を直接見るのは初めてだったらしく、妻は流の小柄な体格や四肢欠損や盲目といった状態から心配していたが、主人は「話に聞いていた通りの人物だった」として、特に流のそういった身体的ハンデを気にせず冷静にその実力を図っていた。

屋敷の子供達は、初めて見た隊士の流にお守りとして競って石を渡そうとしたりと、彼の身体を気にせず好意的に接していた。


  • 炭焼きの少年

3話以降に登場予定だったというキャラクター。

妹を鬼にされたところを流に助けられ、その妹を人間に戻す為に彼自身も鬼殺隊に入るというストーリーだったらしい。

言うまでもなく鬼滅の主人公・竈門炭治郎のプロトタイプとなったキャラであり、上記した彼のエピソードを流を義勇に置き換えた上で、彼の目線で再構成したのが鬼滅の刃の第1話である。


関連タグ編集

鬼滅の刃 吾峠呼世晴

読み切り パイロット版 プロトタイプ 初期設定

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吾峠呼世晴短編集 ごとうげこよはるたんぺんしゅう

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