【底知れぬ所からのぼって来る獣が、彼らと戦って打ち勝ち、彼らを殺す】
~ヨハネの黙示録の第11章7節より引用~
概要
身長:46.9m
体重:39043t
翼開長:265.4m
メキシコの島「イスラ・デ・マーラ」の火山の中で眠っていた巨大な翼竜のような怪獣。その名は現地の古い伝承で『炎の悪魔』を意味するとされる。
長い間火山の火口の中にいたため体液が溶岩に近い性質を持った生物へと適応進化しており、翼の下部はジェット噴射のごとく常に燃焼している。これは、東宝のラドンの企画段階でも考えられていた要素だった。
同火山の火口に設置されたMONARCHの第56前哨基地にて管理されていた。
性質
凶暴かつ好戦的であり、自身に攻撃してくるものには容赦がなく、例え逃げ出しても執拗に追いかけまわす執念深さを持つ。
雲で視界を切って戦闘機を奇襲したりといった機転の利く抜け目のなさも持っている。
一方で、上下関係がはっきりした場合は強者に従うちゃっかりした所があり、モナークに誘導された先でのギドラとの戦いに敗れ勝てないことがはっきりすると即座に服従の姿勢を表明、ギドラによる地球侵略においてはその片腕として露払いを勤めることとなった。
容姿・能力
巨大な翼を備えた翼竜のような身体に後部に向かって伸びる二本の角を備えた頭部というオリジナルに近い姿をしているが、火山の中で休眠していた影響で全身が冷えた溶岩、または焼け爛れて硬化したような皮膚で覆われているのが特徴。
また、着ぐるみ故に人体の制約に縛られがちだった旧作のラドンに対し、本作のラドンは翼がかなり大きめなバランスで造形されている。
体格こそ歴代のラドンの中では最小だが、体重および翼開長は歴代ラドンの中では最重且つ最大の両翼を持つ。
他にも翼と一体となった尻尾や脚についた棘など細かなところに差異があり、ボツ案には翼を鳥の風切り羽根に置き換える案も存在したという。
冷えた溶岩のような強靭な肉体は戦闘機のミサイル攻撃をものともせず、その上体液が溶岩以上の高熱を帯びていることから肉弾戦に応じた敵はラドンに触れるだけで焦熱で焼かれて火傷を負うことになる。また、モスラの鱗粉を焼き尽くして完全に無効化していたが、その際には胴体から爆炎を発生させていた。
- コンセプトアートでは、火炎を吐いている(参照)他、壁画でブレスの様な攻撃を発射している様に見え、1シーンだがワシントンでフレアーを思わせる火炎弾を連続して吐いている様に見えたため、このラドンは火炎を吐けるのではと推測したファンがいたが、後に公式が否定した。
モスラの毒針に貫かれると傷口から炎が噴き出した。また体内の高熱により生まれる上昇気流でその巨体に似合わない優れた飛翔能力を発揮することができる。
さらに旧作と同じく飛行に伴って強烈な爆風と衝撃波を起こす(ソニックブーム)特性があり、直下のあらゆるものを吹き飛ばしてしまうだけでなく、今作では横回転しながら両翼で周囲の物体を叩き落とすという戦法を披露し、劇中ではモナークの航空部隊の多くを壊滅させている。
小説版では火山の上を飛行するだけでその火山を噴火させていた。
劇中での活躍
エマ・ラッセルが作動させた「オルカ」の音波によって覚醒。現地に駆けつけたMONARCHの司令船アルゴとその護衛部隊の攻撃を受けるとそちらに反応し、イスラ・デ・マーラの町を蹂躙しつつアルゴを執拗に追い回して護衛隊を全滅させるも、アルゴの誘導でメキシコに接近していたギドラにぶつけられ、激しく戦うがギドラの圧倒的な力の前に敗れ去り海へと叩き落とされる。
その後はギドラを自身の主と認め、ギドラと共に米国首都のワシントンDCを襲撃。
ギドラ迎撃の為に出撃してきた米軍を相手に一方的に蹴散らして壊滅させてしまった。
ボストンにおけるゴジラとギドラの最終決戦ではゴジラを援護しようと飛来したモスラの前に立ちはだかり、「ゴジラ&モスラVSギドラ&ラドン」というタッグマッチへと発展、ラドンとモスラによる激しい空中戦が繰り広げられた。燃える体を生かした空中戦の末、翼を焼かれて傷ついたモスラを追い詰めて優位に立つも、モスラの腹の毒針で体を貫かれて悶絶、二度目の惨敗を喫した。
そして戦いが終わった後、ギドラを討ち取ったゴジラの元へ世界中から次々に怪獣達が集結してくる中で、生き残っていたラドンが翼を大きく広げて吠えながら再びゴジラの前へ現れる。
一度モスラと対決していた為にゴジラから睨まれたが、その際にギドラを倒したゴジラの強さを本能で悟ったのか、ラドンは反抗する態度を見せる事無くゴジラの前に平伏したのだった...。
エピローグではラドンはその後フィジー諸島の火山へ移住し、再び休眠を始めたようである。
余談
2017年に公開された同じモンスターバースシリーズの作品である『髑髏島の巨神』ではこれに先駆ける形でエンドクレジット後のラストシーンにてゴジラ、モスラ、キングギドラと共に意外な形で先行登場を果たしている。
“溶岩の高熱に耐えられる体”という設定は『空の大怪獣ラドン』と『vsメカゴジラ』と『ファイナルウォーズ』のファイヤーラドンのオマージュ。「火山の爆発と共に復活を遂げる」というシチュエーションは「火山の爆発に呑まれて死亡する」という『空の大怪獣ラドン』の結末と対になっている。
同作の監督マイケル・ドハティはラドンが大のお気に入りだという。そのせいなのかは不明だがサントラのテーマソングも他の怪獣より長い。なのにエンドクレジットのメドレーではなぜか使用されていない…(ギドラのテーマ→モスラのテーマ→芹沢博士の最期のシーンの曲「Goodbye Old Friend」→ゴジラのテーマ)。ラドン涙目。
登場怪獣の組み合わせから「ゴジラ・モスラ・ラドンの三怪獣が協力してキングギドラを打ち倒す」という『三大怪獣地球最大の決戦』のような展開を予想していたファンの予想を覆す本編でのギャップが話題となり、ゴマすりクソバード(二代目)やスネ夫、スタースクリームなどと呼ばれる羽目になった。
一応フォローしておくと「強大な怪獣に服従する」という行動パターン自体はBehemothを始めとする他の集結した怪獣達も同様で、ラドンだけが特別にゴマすりなわけではなく、KOMの世界における怪獣達の価値観ではむしろ敗者であるゴジラに義理立てするモスラの方が珍しい。
またギドラの一声で従った他の怪獣と異なり、ラドンはきちんと一対一でやりあったうえでギドラに服従している。そのほか、他の怪獣が各地での破壊活動に従事しているだけ(加えて音響装置「オルカ」の影響でアッサリやめ、その場に留まっている)なのに対して、ラドンはゴジラに加勢したモスラに戦いを挑むなど、比較的身体を張った見せ場が多いのも特徴である。
さらに劇中描写を見る限り、自分の溶岩の様な身体という特性もあるかもしれないが、臨界点を越え赤熱化状態となったゴジラによる、ギドラすら消し飛んだ二度にわたる体内放射に耐えきっている可能性も指摘されており、実力が低いわけでもなければ、単に虎の威を借りているわけでもない。むしろそうした点からするとギドラとは対峙どころか碌に顔すら見ていないような他の怪獣の方が日和っている。
ラドンの在り方は「決して王にはなれない自分の分を弁えている」ともとれ、逆に言えば「ゴジラとラドンという実力者二名が敗れたからこそ他の怪獣もギドラに服従した」という見方も出来る。
ちなみにマイケル・ドハティ監督は映画公開前「ラドンの忠誠心がどこにあるのか、完全には分かりませんよね。今回はその部分をきっちりと扱うことにしました。彼はどちらかといえば悪いヤツですから。[中略]人間の倫理観を動物にあてはめようとしてもうまくいきません。動物たちは我々と同じルールで生きてはいない。もう少し複雑なルールのもとで生きているんですよ」と語っていたそうである。
関連イラスト
関連項目
婆羅護吽・・・本作とGMKの類似点は金子修介自身も認めている。バラゴンに関しては「世界中で怪獣の目撃が増加している世界において、ゴジラ以外の主要な登場メンバーは自身の他にモスラとキングギドラである」「山に眠っていたが人間によって起こされた」「覚醒直後に人間を襲っている」「熔岩や地熱に対応しているが先代とは異なり熱線は吐かない」「最大の脅威となる怪獣と真っ先に戦闘を行った」という点が今回のラドンと類似点がある。また、今回のラドンは熱を利用した上昇気流に関する能力を持つが、企画段階ではバラゴンも熱を発生させて冷気を出すアンギラスと協力して上昇気流を発生させてバランを飛行させる予定があった。
ケツァルコアトル…同名のタイタンの存在が確認されているが、ゴジラ・ザ・シリーズではケツァルコアトルこそが初代ラドンやファイヤーラドンのオマージュとしてメキシコの火山に登場した。