概要
『フランケンシュタイン対地底怪獣』でデビューした、東宝製作の特撮怪獣映画に登場する怪獣の一種である。
実に「怪獣」らしいフォルムで、ゴジラシリーズでメイン怪獣となったことはないものの人気はそれなりに高く、日本特撮作品において「地底怪獣」という二つ名を最初に賜った怪獣でもある。東宝の怪獣の中では体格は小柄の方に該当する。
なお、『フランケンシュタイン対地底怪獣』へのゴジラ登用が難しかった為に生まれたキャラクターでもある。
特徴
昭和
身長 | 25メートル |
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体重 | 250トン |
中生代の寒冷化を地底に逃れる事で生き永らえた恐竜または大型爬虫類の一種で、前後肢の巨大な爪と背中の重なり合った大きなヒダを使い、自在に地中へ潜る事ができる。
普段は前肢を地に付けた四足歩行形態であるが、戦闘時には後ろ肢で立ち上がることもある。
パグ犬にも似たやや寸詰まりの顔を持ち、額の中心からは大きな1本角が生えている。
側頭部の後方左右には耳のようなヒレがあり、普段は頭部に沿って伏せられているが、
興奮状態になると起きあがる。
優れた地中潜航能力と光る角を持つが、角の発光能力が地中生活への適応なのかは不明である。
口からは赤色熱線を吐く。
この熱線はゴジラとは異なりチャージや発光などの事前現象を要さず、瞬時に発射できるのが利点だが、威力は相手がよっぽど熱や炎に弱くない限りは全く通用しない(少なくともフランケンシュタインには全く効かなかった)ので牽制程度の使用が精一杯である。ただ地中潜航時に削岩の補助として有効な様であり、実際に熱線を放った個所を掘り進む描写もある。あまり威力が高いと落盤させたり巣穴を埋めてしまうなど様々な二次被害を引き起こす事は想像に難くないため、元々攻撃用に発達させた能力ではないと考慮すれば納得が行く。
また鈍重そうな外見に反して高い跳躍力を誇る。
体重は、当時の東宝怪獣のスタンダードから見て非常に軽く、跳躍力と二次災害の少なさも納得が行き、(最低限のラインだが)日本列島の生態系に適応しているとも言えなくもない。大きさも含めて、比較的リアルな部類の数値である。これは、この映画が当時の他の東宝怪獣映画と異なる毛色を持つ様に制作されたので、その影響なのかもしれない。
『怪獣総進撃』では「二代目」が登場した。身長・体重・鳴き声は「初代」の個体と同じだが、若干ではあるが頭部が大きくなっている。
平成
⇒婆羅護吽を参照。
フランケンシュタイン対地底怪獣
出現の直後に地中から秋田油田を破壊し、数日後には白根山付近のロッジを襲撃した。肉食性であるため宿泊していた観光客や家畜を全て捕食し、さらに村々を襲撃しては村民や家畜を捕食し続けていた。そのせいで大量のタンパク質補給を必要とするフランケンシュタインが人間を捕食していたと誤解されていた。
- バラゴンが他の怪獣と勘違いされる、というのは、後に『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』で再現されている。
物語の終盤、フランケンシュタインの保護者と言えるボーエン博士一行を捕食しようとした為、彼らを守ろうと立ちはだかったフランケンシュタインと戦う。しかし知能とスピードで勝るフランケンシュタインに翻弄され終始劣勢であった。跳躍力を活かした体当たりはことごとく回避され、熱線は直撃しても全く通じず、格闘戦でも大木や岩石を巧みに扱うフランケンシュタインに後れを取る羽目になる。一応パワーではフランケンシュタインを上回り、正面からぶつかったときは跳ね飛ばし、尻尾を掴まれても振り切って地面に潜ったりしている。最終的にはフランケンシュタインにチョークスリーパーを決められ、頸骨を折られて倒された。
逃げるチャンスは何回もあったのに、最後まで戦い抜いたという点では、後年の『ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃』での活躍を彷彿とさせなくもない。
このバラゴンは歴代で唯一熱線能力を明確に披露している個体であり、また、人を明確に喰った初めての日本怪獣である(一応これ以前にラドンに襲われたカップルが白骨死体になっていたという描写はある)。
怪獣総進撃
怪獣ランドの飼育怪獣として登場し、キラアク星人に操られ、天城に出現する。開放された後は最終決戦場の富士山麓にも集結したが後述の理由で全体的な活躍はない。
また、本来はフランスの襲撃の役を担う予定であったが、ここはゴロザウルスに出番だけでなく「地底怪獣」の称号をも取られ、バラン共々最もかわいそうな出演怪獣の一体になった。
- 本シーンによりゴロザウルスは、某有名特撮考察書にて史上最強の生物になり得ると判断されており、予定通りバラゴンが登用されていればその称号は彼または彼女に行った筈であった。
ゴジラ・モスラ・キングギドラ大怪獣総攻撃
⇒婆羅護吽を参照。
GODZILLA(アニメ映画)
外伝小説『怪獣黙示録』『プロジェクト・メカゴジラ』に複数の個体が登場。地底怪獣だが、作中の他の一般的な怪獣と同じく光線などの特殊な能力は無く、厄介な病原菌を抱えているわけでもないため倒しやすい怪獣らしい。
2体目(バラゴンII)は2030年にバラン・アンギラスと共にゴジラに襲撃されて傷を負ったまま必死に逃亡しながらロサンゼルスに上陸するも、背中にゴジラの荷電粒子砲が直撃し撃破された。上記二体の怪獣は『大怪獣総攻撃』の没キャラであり、作中でも「まるで怪獣たちの総攻撃だ」という台詞が小ネタとして仕込まれている。
ヒマラヤ山脈を崩壊させてゴジラの生き埋めにする「オペレーション・グレートウォール」工事の際には、中国内陸部の地底に眠っていた個体が出現。ゴロザウルスなどの他の地底怪獣とともに目覚め、背中に吸着式地雷を仕掛けられ殲滅されたという(撃破した当事者は、作戦が無意味なものに終わったことから「地底怪獣たちは住処を守りたかっただけではないか」という考えに至っており、「正しかったのは怪獣たちの方じゃないかなって。バラゴンには悪いことをした」と語っている)。
怪獣人形劇 ゴジばん
第7話から登場。
本作ではアンギラスとセットで登場することが多く、またセカンドシーズン以降はゴロザウルスとも行動を共にしている。
その他の登場作品
河本ひろしの漫画『怪獣王ゴジラ』では悪の科学者マッド鬼山により遺伝子改造・巨大化が施された亜種「シーバラゴン」が、本作最初の敵怪獣として登場している。本来のバラゴンとは異なり海棲であるほか、セイウチのように長い牙を持ち、角がイッカクのように長くなっているのが特徴。その角をゴジラの胸に突き刺したものの、角を折られて投げ飛ばされた末に放射火炎でトドメを刺された。
なお、海から現れた上に顔も全く異なるが、胴体はそのままであるためか、登場人物のGチーム所属・神子(かねこ)一佐は一目でバラゴンだと言い当てている。
ドラゴンボールには、ガメラや子ガメラ同様に本人が登場している(これもガメラとの縁の一つかもしれない)。火炎を吹いている場面もある(参照)。
ゴジラVSデストロイアがゴジラvsゴーストゴジラとして企画が進んでいた時期にはアンギラスとバラゴンの合体形態である「バラギラス」の登場も検討されていた(『ゴジラVSデストロイア・パーフェクション』より)。
ゴジラS.PのPVにてバラゴンやガバラに酷似した怪獣の姿が確認されていたが、後に別のオリジナル怪獣と判明した。なお、バラゴン自体は第3話のポニーテールの女子高生のスマホのキャラ系スマホカバーのキャラとして登場している。
他の怪獣への影響
以下の経緯があるため、バラゴンは特撮ファンからは着ぐるみの改造の好例として取り上げられることもある。
フランケンシュタイン対地底怪獣の公開後、バラゴンの着ぐるみは円谷プロに貸し出され、ウルトラQとウルトラマンにてパゴス・ネロンガ・マグラー・ガボラに改造・使用された。
その後、怪獣総進撃に登場する予定だったが、バラゴンへの再改造が遅れた為、本来はバラゴンがパリを襲撃する筈だったのがゴロザウルスがパリを襲撃するという展開に変更され、肝心の着ぐるみによる撮影は怪獣ランドの生息描写のみになった。
- フランスを襲撃するというシーンは、上記にもあるように、およそ半世紀後に間接的にではあるが実現している。
これらのバラゴン系列は、全員後発の作品で再登場を果たしている(ウルトラマンタイガでのパゴスの再登場をもってコンプリートしている)。
スーツが2体ある説もあるが、これは撮影時に中に詰め物をしたり傷んだ部分を修復したりするなどといった関係で多少はスーツも変形するために生まれた説であり、実際は予算の都合もありすべてのシーンで同一のスーツが使用されている。
また、この度重なる改造をパロディし、「バラゴン系列の着ぐるみを改造した」という想定で新たにデザインされた怪獣もいる。具体例としてはウルトラ作戦 科特隊出撃せよ!に登場するゴロモスや、地球防衛少女イコちゃんに登場するトライドンなど。また、ネロンガをモチーフにしたウルトラマンマックスのゲロンガもこの並びにあると言えるかもしれない。
シン・ウルトラマンでは、劇中で実際にパゴス、ネロンガ、ガボラの外見が酷似していることが指摘されているが、それに関してちゃんとした理由付けもなされている。
2015年に放送されたウルトラマンXでは、マグラーがフランスの凱旋門を破壊して地中から出現するシーンがあった。マグラーは元々バラゴンの着ぐるみを改造して作り上げられた怪獣という経緯があるため(詳細は後述)、「バラゴンがフランスの凱旋門を破壊して出現する」というシーンが(間接的にではあるが)半世紀の時を経てようやく実現したといえる。
そして2024年のウルトラマンアークにてパゴスとネロンガというバラゴンのスーツから改造された怪獣同士が戦う事になった。また、同作中にてこの2体と更にガボラとマグラーの祖先が共通であると考えられるとも言及されている。
余談
- 顔は唐獅子をイメージしてデザインされている。また水木しげるが描いた「ドイツの洞窟に潜み、聖乙女の祈りにより退治される竜」に似る部分がある。本画は氏特有の、圧倒的な点画の量により西洋画にも劣らない非常に重厚的な迫力が素晴らしいものとなっている。
- 製作スタッフの村瀬継蔵氏によれば、バラゴンのデザインモチーフとしてまずゴジラがあり、その額に一本角をつけることから始まり、背中へ流れる棘とヒダが追加されていったと語っており、さらに『フランケンシュタイン対地底怪獣』が日米合作である為、円谷英二氏が東洋的な要素を盛り込む指示を出し、頭部の造形に東洋の狛犬の意匠が加えられており、そのオマージュとして『大怪獣総攻撃』では「狛犬の由来は婆羅護吽」という設定になっている。
- 正式名称は「バラナスドラゴン」とする設定が一部文献で紹介されているが、映画公開当時の脚本等にそのような設定は記載されておらず、件の文献が1992年に発行された比較的新しい書籍である為、本当に公式設定なのかは疑わしい。一応綴りは「varanus dragon」と思われ、これはオオトカゲ(ヴァラヌス属)とドラゴンの合成語となる。ラテン風表記だと「dragon」ではなく「draco」になる筈だが、突っ込んではいけない。
- 別会社のとある怪獣とは名前が非常に似ており紛らわしい。四足歩行ながら高い跳躍力を持ち、目的こそ違えど人を食べる描写も類似している。平成ガメラの関係者が携わっていたり、関連シリーズにも登場している。ただし、登場したのはバラゴンの方が先である。
関連イラスト
関連タグ
バルゴン:名前が似ているだけで赤の他人である。大映のガメラシリーズに登場。たまに、誤記あるいはネタとして『大怪獣決闘ガメラ対バルゴン』のことが、『ガメラ対バラゴン』と書かれる場合がある。