巨大な絶望を前に、人類はいかに立ち向かい、いかに敗北したか
作品解説
作者:大樹蓮司
監修:虚淵玄
設定協力:白土晴一
アニメ映画シリーズのプレストーリーに当たる1999年からの怪獣出現期、人類と異星人エクシフとビルサルドのファーストコンタクト、そして人類の大反撃「オペレーション・エターナルライト」の間に起きた出来事を描いた作品。
いわゆる“オーラル・ヒストリー”として描かれているのが特徴で、文章は怪獣惑星と化した地球から脱出する直前、アキラ・サカキ(映画主人公ハルオ・サカキの父)が過去に地球連合情報軍の任務でかき集めた多くの証言をテキストとして抽出したものであり、殆どの部分はアキラと証言者の1対1のインタビュー形式で進められる。必要に応じて話の間で注釈が入る。
一部の人には「怪獣版ワールドウォーZ」と言い表せばより的確に伝わるかもしれない。
証言者は対怪獣作戦に関与した政府の役人から実際に戦闘を行った軍人、そして逃げ回っただけの民間人までと実に多様で、様々な視点から怪獣の姿を見ることができる。
ただしあくまでインタビューをそのまま文章にしたという体裁であり、記憶違いや事実誤認等が含まれている可能性もあると注意書きがされている。
怪獣との戦争、異星人との遭遇によって変容した文化・価値観についての描写も多く、映画の世界観を深く知ることができる一冊となっている。
一部のセリフや展開には過去のゴジラシリーズ作品のオマージュ、あるいはパロディが数多く盛り込まれ、他にもマーカライトファープやガンヘッドといったゴジラ作品以外の東宝系列の様々のシリーズで用いられてきた人名や用語が作中で使用されるなど東宝特撮ファンがニヤリとする小ネタが満載されている。
作中には主に「Anime Japan 2017」で配布された歴史年表資料に書かれた怪獣が登場するが、記述では生物兵器扱いだったヘドラの正体やゴジラと同時期に現れ葬られた3体の怪獣の詳細など資料では解らなかった新事実が判明する。
加えてこれまでのシリーズでは出番が比較的少なかった過去の東宝怪獣も名前だけのものも含めて数多く登場しており、その様相はいわば東宝怪獣映画オールスター作品とも言っても過言ではなく、例えるならば『ゴジラ×メカゴジラ』(およびGMMG)と『ファイナルウォーズ』の世界観に『パシフィック・リム』のコンセプトも付け加えたような良く言えば豪華、悪く言えばかなりカオスな内容となっている。
なお、作中に登場する怪獣はその巨体を除けば基本的には常識的な生物の延長線上にある存在であり、強さも一部を除いて現代人類の通常兵器でも撃破可能な程度となっている。
50m超の大型種は先進国でしか駆逐できないが、20m程度の中型種ならアフリカの後進国でも対処可能。その他メガヌロンやグリホンなど、小型種は人が持てる範囲の銃などでも倒すことができるが、群れ成すことがある。
ただし怪獣たちはレーダーで察知されにくく、知性や攻撃性も高く、積極的に人類や他の生物を攻撃してくるため、出現すれば討伐までに出る被害は大きく、人類種の存続を揺るがす驚異的な害獣となっている。
それでも人類は多大な被害を出しつつも、何とか怪獣たちに対応し、倒して来た。
奴が現れるまでは…
登場怪獣(文章内初記載順)
この他にも第一章の3話には南米に生息しているのかも知れない“糸や鱗粉を使う人類に比較的友好であると考えられる怪獣”の存在が示唆されており、さらに同話に登場したミラという少女はその後の展開からあの怪獣がモデルと思われる。
登場する超兵器
- メーサー殺獣光線車
- 多脚戦車G-HED
- 轟天型潜水戦艦(作中では三号艦まで建造)
- 特殊潜航艇薩摩
- スーパーXシリーズ
- 地底戦闘車両MOGERA
- マーカライトファープ
- 38式機動戦闘服ジャガー日本仕様「J」
- 抗核エネルギーバクテリア
- 熱核爆弾
なおいずれもゴジラには全く通用しませんでした
余談
- 登場する怪獣の数こそ多いものの上記の記述形式のためか怪獣に関する描写はゴジラを含めて割と限定的になっており、それなりに詳細な活躍や設定が語られる怪獣もいるが、それ以外はあくまで断片的かつ曖昧な説明で済まされる怪獣やせいぜい名前だけ出てくるだけの怪獣で占められ、その中にはゴジラの噛ませか人類にとっても雑魚扱いの怪獣も少なくはなかったりする。
- 2017年9月には「KAIJU黙示録」という本作と似たようなタイトルが付けられた海外小説が発売されており、地球に多くの怪獣が現れて人類が存亡の危機に晒され、そこに宇宙から帰還した移民の助けが入るといった内容も同じだが、本シリーズとは何の関係性も無いので注意(ついでに言っておくと“KAIJU”という文字から『パシフィック・リム』の外伝作品にも見えるがそれとも無関係である)。
- このシリーズのオリジナル自体は2014年に発売されたものであるため、盗作だと勘違いしないように留意。もっとも「モンスター・アポカリプス」という題名自体はこれまでもBrian・Roweの作品などで使われている。
続編
2018年4月には続編『プロジェクト・メカゴジラ』が発売された。
本作の続稿という形で、「オペレーション・エターナルライト」以降に再び追い詰められた人類がメカゴジラの起動を企み、失敗して地球脱出を果たすまでの凄惨な歴史を描いている。