概要
フルタイトルは『ゴジラ・ミニラ・ガバラ オール怪獣大進撃』
東宝が企画した子供向け映画企画「東宝チャンピオンまつり」のメイン作品。
これまでのシリーズとは違い、子供を主人公にして児童文学的な作風にすることでメイン観客である子供たちに親しみを持てるようになっている。
本作はシリーズの生みの親の1人である本多猪四郎監督が手掛けた異色作だが、自身もやりたい企画だったらしく自選ベストの一本に挙げている。故に、出演者も本多組…東宝特撮路線の常連メンバーが大挙出演している。
完全に子供向けで低予算故に流用映像も多く「70分」というシリーズ最短の上映時間等で評価の低い作品だったが、近年は先の理由や逆境でも卓越した内容でもあるため再評価も高まっていった。また本作の音楽には宮内國郎氏が『ガス人間第一号』以来の復帰となり、氏にとって唯一のシリーズ参加作品になった。
また怪獣が登場するシーンは主人公の夢で、怪獣のいない現実の世界を舞台にしている。これは鍵っ子等の当時の世相を反映したものである。
先に『空想天国』という同類項の映画があったが、毒気のない童話的な展開や痛快でカタルシス感が強く後味の良い顛末は本作の方が上だった。また作風的にも趣旨は異なるが、本多監督の代表作で一般映画の『夜間中学』にも相通じる部分がある。
ちなみにチャンピオンまつり期のゴジラは人間の味方という誤解が広く流布しているが、実際には子供の夢が舞台の本作でさえゴジラは明確に人間と敵対している(怪獣島に人間が攻め込んでくる、主人公の少年をゴジラが敵とみなして襲ってくる等)。
これまでの感謝を込める形で円谷英二を監修としてクレジットしたが、円谷氏は本作の公開後逝去した。
同時上映は『コント55号 宇宙大冒険』、『巨人の星 ゆけゆけ飛雄馬』。
登場怪獣
大コンドル(劇中では大ワシと呼称)
怪獣のほとんどは過去作の映像を流用しての登場であり、新撮があるのはゴジラ、ミニラ、ガバラ、そして僅かにカマキラスにある程度。
ストーリー
内気な小学生、三木一郎は両親が共働きで家におらず、学校に行けばいじめっ子のガバラに絡まれるといった散々な毎日を送っていた。
ある日、アパートの隣人である「発明おじさん」というあだ名の男、南信平の作った玩具を使い夢の世界に旅立った一郎は、怪獣島にやってくる。
そこでゴジラの息子、ミニラと友達になった一郎は、ミニラがいじめっ子怪獣のガバラに苛められていることを知り、彼を激励し返り討ちにする作戦を立てる。
そのころ、一郎のアパートには逃亡中の銀行強盗犯が侵入していた…。
スタッフ
製作:田中友幸
脚本:関沢新一
音楽:宮内國郎
特技監修:円谷英二
監督:本多猪四郎
キャスト
三木健吉:佐原健二
三木タミ子:中真千子
三木一郎:矢崎知紀
南信平:天本英世
千林:堺左千夫
奥田:鈴木和夫
屋台の親父:沢村いき雄
アパート管理人:石田茂樹
連結手・平さん:佐田豊
B刑事(若い刑事):当銀長太郎
ペンキ屋:中山豊
A刑事(中年の刑事):田島義文
ガバラ(ガキ大将・三公):伊東潤一
サチ子:伊東ひでみ
サチ子の母:毛利幸子
旅館のおかみさん:宮田芳子
ミニラの声:内山みどり
主題歌・イメージソング
「怪獣マーチ」
作詞:関沢新一 作曲:叶弦大 編曲:小杉仁三 歌:佐々木梨里、東京ちびっこ合唱団
「怪獣ゲーム」
余談
パンアメリカン航空とタイアップしており、怪獣島への連絡手段としてパンアメリカン航空が実名で登場している。
一郎の父健吉役の佐原健二は実際に機関車を運転している。当初は運転自体は本物の機関士が行う予定だったが、佐原の前に本物の機関士が座る形になり不自然であるため佐原が運転することになった。
本多猪四郎監督は特撮のほとんどを過去作品の流用で済ませることになったのは不満を抱いている一方、作品自体は自身の好きな1本として挙げている。
中野昭慶は子供好きの円谷英二が本当にやりたかったのは本作だったのではないかと語っている。中野によると円谷は大阪万博のために鳴門の渦潮を撮影しに行った際に倒れ、本作制作時には入院していたという。
音楽の宮内國郎は『ウルトラマン』の縁で起用されたのではと語っている。
検討用台本第1稿にはラドンと大ダコが登場していたが、本多監督所蔵の台本にはエビラに変更する旨が記されており、決定稿ではラドンがカマキラス、大ダコがエビラにそれぞれ変更されている。
作中では、怪獣島を狙おうとする戦闘機が登場する。実機が登場しておりF-86セイバーであるが、ゴジラとの場面になるとなぜか赤イ竹戦闘機に変貌。そのまま『南海の大決闘』のシーンになる。撃墜される場面こそ流用だがゴジラが撃破した機体を踏み潰す新撮映像もある。