注意
この項目はGODZILLA(アニメ映画)のネタバレを含みます。
概要
フツアはアニメーション映画『GODZILLA三部作』に登場する第四の種族。
地球を脱出せずに地上で生き延び続けた地球人類の末裔であり、2万年を経て異なる形質を獲得した新人類でもある。
ゴジラ・フィリウスと戦って敗れた地球降下部隊の前にその姿を現した。
作中では富士山麓に住むフツアが登場したが、富士山麓以外の2万年後の地球にフツアまたは別の新人類が生き延びているかは現状不明である。
身体能力が並外れている上に特殊能力も備えており、生物としてのスペックでは旧人類を完全に上回る。知能水準も旧人類に匹敵、ないし凌駕する。
2万年という(生物の進化の歴史からすると)非常に短い期間で大きな進化を遂げたことから、セルヴァム同様怪獣の因子を取り込んでいると考えられる。
生活様式は概ね原始的であるが、技術が無いというよりは敢えてその原始的様式を維持しているとみられる部分もあり、住居、武器等生活の端々に先進性が見られる。
一方、科学技術の発展こそ種の進化と考えるビルサルドの価値観からすればこの程度の文明水準ではフツアを知的種族とは認め難いらしく、ガルグに至っては彼らのことを「虫」呼ばわりさえしていた。
形質・能力
肌色は褐色。体表面の大部分は分泌される鱗粉に覆われており、鮮やかな模様を成している。髪色は水色で癖が強く、特に前髪は蛾の触角を思わせる形状になっている。
小柄だが肩幅はあり、特に男性は筋肉質。
体表面の鱗粉は生物の治癒を促進し、更に有毒物質の侵入を防ぐ機能がある。フツア以外の生物に塗布しても効き目があり、それなりの期間体表面に留まって効果を持続させる。
昆虫の鱗粉は羽化して以降再生することはないため消耗が死に直結するが、フツアの鱗粉は毛髪のように常時生産されているものらしく、老人でも模様は鮮やか。
テレパシー能力もあり、言葉の壁を無視して意思疎通が可能。
しかしながら距離は声でも届く程度に限られ、送受信可能な情報量は極短文。遠隔通信手段としてはそれほど強力ではない。意思の送信と同時に高周波音を対象に聞かせるため、場合によっては極めて不快でもある。
身体能力については旧人類を凌駕しており、森や崖を文字通り跳び回って移動する。本気で駆ければ旧人類が彼らに追いつくことは不可能で、捕捉することすら難しい。
呼吸器官も地球大気に適応しており、毒性大気の中でも旧人類のような呼吸装備なしで問題なく活動が可能だが、一番快適に過ごせる大気組成は旧人類と大差ない。
知能も旧人類の水準を維持、ないし上回っていると考えられ、1~3日(下手すると実質数時間)の超短期間で、旧人類語(恐らく英語)での端的な会話ができるようになっている者も。
銃や戦車、揚陸艇を目の当たりにしてもパニックにならず、これが人類の道具であることを正確に理解もしている。
新人類ではあるが、人類との遺伝的な差はさほど大きくないようで、人類と交配して子孫をもうけることが可能である。
技術・文化
住居
旧富士山(ゴジラにより崩壊)の麓、金属花粉が降りてこない竪穴の中に暮らしており(降りてこない原理は現状不明)、住居は穴の壁に張り付けるように建てるか、更に穴を掘って地下住居を作っている。
地下には広大な生活空間に集合住宅らしき建築物を用意している他、墓所や巨大な聖堂も存在する。湿度や気温、大気の組成はフツアや旧人類が快適に過ごせるよう維持されている。
内部はヒカリゴケや虫の油を使った照明で照らされており、「昼間のよう」とまではいかないもののかなり明るい。
設定上、彼らが暮らしているのは2000年前にフツアの神がゴジラと戦って敗れ、墜落した跡地である。
地下生活が崩落の危険と隣り合わせであるのは言うまでもなく、衛生環境が悪化しやすい上、大気状態の維持も難しい。排水などは現代ですらまだまだ研究の余地がある。
世界有数の地震大国で2000年に渡り地下空間を維持管理、修繕や改修を続けてきたと考えられ、石器時代の水準では全く足りないため、フツアの土木技術はかなり進んでいると考えられる。
被服
衣服は紐や帯で結んで固定する単純な構造。
鱗粉があるためか厚着する文化は無いようで、肌面積の露出はかなり多い。
男性は上半身裸で、女性も胸を覆う以外は男性に準拠。スパッツ状のボトムが普及している。
その他、戦闘用、作業用と思しき仮面や、聖堂に座する人間が着用する貫頭衣がある。
着心地も非常によいため、地球降下部隊のスーツは最終的に不用品となった。
武器
弓矢、槍など原始的極まる武器を扱うが、ナノメタルを先端に使用するため相当に鋭利である。
フツアが放つ矢は装甲板にも突き刺さり、セルヴァムの外皮を貫通する威力がある。おまけにナノメタルはゴジラの因子に攻撃的になるため、ゴジラ亜種であるセルヴァムに対しては猛毒。
これだけの貫通力があるということは弓も相当に強力であるはずだが、フツアは少女であっても涼しい顔で弓を引く。
精度や射程もアサルトライフルに匹敵する。
これらの武器で十分高性能であるため、地球降下部隊の持ち込んでいた銃器は最終的に不用品となった。
言語
石に刻む他、紐の組み方によって意味を表現する文字言語が存在する。フツア同士が声によって会話する場面がないため、独自の音声言語が存在するかは不明。
会話においては比喩、婉曲表現を多用する。特に長文会話では顕著で、彼らのセリフは古典文学のように難解極まりなく、片言の短文会話の方がまだわかりやすい。
「翼」「ワタリガラス」「雛鳥」など鳥に由来する表現を多用する。
フツアのテレパシーは対象の脳内で母語に自動翻訳されるので、彼らの思念が「翼」「カラス」などと翻訳されるのは、彼らがこれらの語彙を正しく理解し使用しているからだと考えられる。
2万年後の地球にワタリガラスが生存している描写はなく、2万年前から伝承として残っているものだろう。
食事
パンフレットによれば、苔をペーストにした加工食と野菜が主。緑色の団子らしきものが劇中にわずかながら登場している。
動物性たんぱく質については第3章でセルヴァム化していない昆虫達が生存しており、その昆虫達を食べていた事が判明する。(旧人類は困惑していたが)
原案ではフツアを蔑視するビルサルドとユウコが喫食を拒絶する場面もあったらしい(マーティンあたりは大喜びで口に運んでいたであろう)。
医療
アラトラム号乗員には鱗粉の塗布による治療を行っていた。
普段から鱗粉が不足している者に分け与える習慣があるのか、旧人類との形質の違いを理解してイレギュラーな治療を行ったのかは不明。
この治療を受けた者は、ナノメタルによる侵食から逃れ、生き延びている。
宗教・思想
フツアの神は卵を残してゴジラに敗北、息絶えたと伝わっており、2万年後では卵を神体として信仰している。事実上一神教。
神を殺したゴジラを「神の敵」と称し、ゴジラに対抗するアラトラム号の乗員たちを同輩と認める一方、ゴジラは倒せないものと諦めてもいる。事情を把握して以降は旧人類に対して友好的な態度を取るが、ゴジラ討伐に積極協力することはない。
ゴジラは畏怖の対象ではあるが、近くにゴジラがいても逃げようともせず、ある種の自然災害の一種として受け入れている。
また、フツアには「憎しみ」と言う概念がないため、ゴジラを憎むこともない。
「雛鳥」と呼ばれる双子が卵の巫女を務めている。双子はフツアの中でも念話能力に秀でているようで、彼女らが二人がかりで念話をすると通常よりも伝達距離を大きく延ばすことが可能。
更に卵の力を借用することにより、多人数で同時に情報量の多い念話が可能になる。
また、ゴジラが支配する2万年後の地球で生きているためか、「勝利」と「敗北」の概念が生死に直結しているのも彼らの思想の特徴。
フツアにとって勝ちは命を繋いで生き残る事。逆に負けは死んで消えてしまう事をさす。たとえゴジラが地球の支配者であっても、自分たちの命が種として生き残り続けるなら勝利という考え方である。
その後
僅かな地球降下部隊の生存者(小説版によれば十数名)は、フツアの村に受け入れられた。
文明の利器に頼らない原始的な生活への順応は時間を要したものの、最終的には溶け込んでいる。
おそらく、その後はフツアと交配を重ねたことで、地球の先住民たちはフツアに同化・吸収されていったのであろう。
余談
- 第2章のパンフレットだと設定段階での名称はまんま「インファント」で、実際モスラに縁深い原始的種族、塗ることで有害物質から身を守れる万能薬など、昭和のモスラ関連作に登場したインファント島の住民の要素と重なる部分が多い。しかしながら遥かに過酷な怪獣惑星で暮らすためか、非暴力を貫くインファント島民と違って戦闘の備えをしており、敵意には敵意を向けて報いる強かさがある。
- モスラの卵と交信する「巫女」の力を得る条件は双子以上の、同時に生まれた兄弟であることとされ、人数が多いほどテレパシー能力が強くなるという。裏設定として劇中で長老を務めていたムナクは六つ子であり、フツア史上最強の能力をもつ巫女であったという。
- フツア(Houtua)という名称は、ポリネシア系の言葉で「新しい」を意味するホウ(Hou)と「神」を意味するアツア(Atua)を合わせた、「新しい神」を意味する造語。なお、公式による言及がある前は『モスラ3』のエンディングテーマ「Future」に由来するのではないかと言う説もあった。
関連項目
イーウィス族:モンスターバースに登場する民族。怪獣の跋扈する危険な地に居住する、原始的ながらも地上の文明とは趣の異なる独自の技術や文化を持つ・発生を伴った会話を行わず、テレパシーで相手とコミュニケーションを取る・モスラと密接な繋がりを持つ等、類似した要素が多い。